黒柴スポーツ新聞

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全力プレーこそ勝者の条件~怠慢走塁で懲罰交代の横浜DeNA伊藤裕季也、汚名返上を!

若くてキラキラした新人にはフレッシュさ、はつらつプレーを期待してしまうから気の毒な面があるのだが、横浜DeNAの伊藤裕季也は怠慢走塁で名前を売ってしまった。打球をファウルと決めつけ、すぐに走り出さなかったという。



確かに野球選手は小さい頃から膨大な数、打席に立つ。ゆえにどんな当たりならセーフかアウトか、すぐに分かってしまうのだろう。アウトになると分かっているのに全力疾走するのは合理的とは言えない。
しかし野球は人がやることであり、気象条件や球場の設備が作用する可能性もゼロではない。経験からしてアウトと思ってもセーフになることはあり得るのだ。万に一つの可能性を追う。それもプロの大事な素養と思う。

ちょうど読み終わった、元ヤンキース守護神で野球殿堂入りしたマリアノ・リベラの自伝「クローザー」に対照的な走塁が紹介されていた。
クローザー マリアノ・リベラ自伝

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メッツ戦でヤンキースは1点のビハインドのまま9回ツーアウトまで追い込まれた。ただし二塁にはジーター、一塁にはテシェイラがいた。一打出ればまだ分からない。
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打席にはアレックス・ロドリゲス。しかし待っていた速球を打ち損じてセカンド後方に打ち上げてしまった。万事休す、と思われたが二塁手が落球。ジーターに引き続き、テシェイラまでがホームインした。そう、一塁からだ。

ツーアウトだと確かに、ランナーはダメ元でやたらめったら走ることはできる。しかし、一塁からの本塁生還である。本気の全力疾走だったのではないか? マリアノ・リベラはこう記している。
「……私たちは初戦に勝った。五年に一度くらいの珍しいエラーがあったからだけじゃない。一人のスター選手が最後まであきらめず……試合が終わるまで、懸命な走塁を見せてくれたからだ。これこそ、勝者の条件だ」
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メジャーリーグは規格外のパワーやスピードで人気なのかもしれないが、このような全力プレーも愛される要因だろう。
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ドラフト2位で将来を期待されるからこそ、横浜DeNAのラミレス監督は伊藤裕季也を「懲罰交代」させたのかもしれない。確かに今からこの調子では本人のためにならないし、チームの士気にも関わる。伊藤にはぜひ成長のきっかけにしてもらいたい。というか実力で評価を覆すしかない。そう、よくないレッテルをべったり貼られないうちに。

残念ながらまだまだ凝り固まった日本社会は若手への目線が厳しい。ベテランだから許されて、新人だから許されないというのは理屈に合わないのだが、それに反論したいのであれば「こいつはひと味違うな」と印象付けることだ。少なくとも全力プレーを続けていれば、悪い印象は持たれない。失敗は若手の特権くらいに割り切って、力を出し惜しみせずやってもらいたい。
横浜DeNAベイスターズGame Diary 2019

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かくいう私もテシェイラばりに激走しているかと言えば、できていない。経験から相場を読むことに長けてしまうのも考えものだ。劣勢でも何とか打開策はないものか。ゲームセットの声を聞くまでは、あきらめない気持ちを持ち続けよう。

※執筆時、伊藤選手のお名前を間違う致命的ミスをしておりました。申し訳ありませんでした。


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