黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

マスコミはいつまでキャッチャーを女房役と表現するのか~言葉の力でよりよい社会に

まずはこのスポーツ報知記事の見出しを見てほしい。
【巨人】小林誠司、正妻はオレ!今季初実戦形式でアピール2安打
要は小林誠司が正捕手はオレなんだぞと打撃面でもアピールした(まんま、ですが)ということ。だが、私は思った。

「キャッチャーのことをいつまで正妻とか女房役というのかネ」

もう平成も終わろうとしているのに。



正妻やら女房役という表現はいつからなのか。もちろん正確には分からない。キャッチャーが妻や女房という表現なら、ピッチャーは夫ということになろう。今や同性カップルも応援されつつあるので、夫とは決めつけられない。パートナー、といったところか。

そもそもなぜ妻なのか。それは生物学的に雄は「出す」側であり、雌が「受け止める」側という考えだからだろう。ピッチャーは投球を行い、キャッチャーはそれを捕球する。だから女房役となる。

しかし、数はまだまだ少なくとも「主夫」もいる。妻が外で働き、夫が家事を主にやるパターンだ。それが今後増えていけば、妻イコール支える側という概念は薄れていくに違いない。
捕手論 (光文社新書)

捕手論 (光文社新書)



いや、むしろ日常的に、そうじゃないよという雰囲気作りのためにも、もうキャッチャーを正妻とかいうのはやめてもいいんじゃないかなと思うわけだ。

だいたい、野球を知らない人からしたら正妻争いとか意味が分からないだろう。正妻は本妻なのか? 二番手キャッチャーは側室? まさか浮気……まあ、小林誠司からしたらコンビを組んできた菅野智之がほかのキャッチャーを指名したら浮気と言えなくもないか。

さて、私が小中学生の頃はクラスの名前順はまだ男子→女子の順。今はミックスが主力だろうか。まだまだ性別に分かれているだろうか。これも深層心理で、男子からというのが男性優先が染み付く要因とみている。

また、民放のニュースはだいぶ女性がメインキャスターを務めているが、NHKはテレビ、ラジオとも男性アナ→女性アナという順で「おはようございます」「こんばんは」と番組内であいさつしている印象だ。NHKの影響は大きいから、この辺りから男女をあまり意識せず進行していけばもっと男女平等が進むと思う。
NHK アナウンサーとともに  ことば力アップ 2018年10月~2019年3月 (NHKシリーズ)

NHK アナウンサーとともに ことば力アップ 2018年10月~2019年3月 (NHKシリーズ)



というわけで、スポーツメディアも正妻とか女房役などの表現をやめれば男女平等が劇的に進む……とは言わないが、無意識に女性は支える側だ、サポートする側だ、引き出す側だ的なイメージを作らずに済むのではないかと思う。
捕手異論 一流と二流をわける、プロの野球『眼』

捕手異論 一流と二流をわける、プロの野球『眼』



高校野球でも大学野球でもマネージャーは女子とも限らない。男子でも女子でも、支えるのが得意だとか、サポートすることに喜びややりがいを見出だす人がやればいい。男だからとか女だからではなく適材適所でいいのだ。

去年の夏には女性教諭が部長を務める三重の白山高校が甲子園に出場した。女子生徒が練習を積極的にサポートする学校もあったと記憶する。硬球を使うから危ないという理由は分かるが、それなら安全第一の環境を作って女子もいっしょにやったらいいと思う。最近は打力が向上しているから相当気を付けねばならないだろうけれど。
江夏の21球をリードした男。

江夏の21球をリードした男。

正妻だ女房役だと書くのはある種言葉遊びだと承知している。コーチとして入団するのを「入閣」なんて書くのと同じ類いだ。だから目くじら立てる意味もあまりないのだが、正妻とか女房役と書いている限り、世の中の意識は変わらない。言葉を大事にする職業だからこそ、記者も編集者も言葉がもたらす影響に思いをめぐらせ、社会を少しでも住みよいものにしていければと思う。


あわせて読みたいキャッチャー関連記事はこちら。
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com


福岡ソフトバンクホークスランキング