黒柴スポーツ新聞

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何度でも、何度でも。今聞きたい本多雄一応援歌~引退試合でCS突破モードへ

鷹のスピードスター、本多雄一が13年の選手生活にピリオドを打った。文字通り颯爽と。悲しかったけれど、ホークスファンの心は台風が過ぎ去った翌日のように、からっとしているに違いない。



そう、これこそが本多雄一からの置き土産なのではないか。西武との首位争いに敗れ、沈んだ心をリセットする。まさに本多雄一の登場曲、ドリカムの「何度でも」の歌詞を実行したい時。もがくホークスに今、最もぴったりな曲に思える。13日からはクライマックスシリーズ。西武を倒す可能性がある限り、何度でも立ち上がろうじゃないか。
何度でも

何度でも



引退試合をシーズン中に行うことの是非はある。試合はあくまでも真剣勝負の場だからセレモニー的な要素を排したいという気持ちはすごく分かる。一方で取って付けたような場だと功績と不釣り合いになる。やはり許されるかどうかは選手の実績による。
本多本 素顔の本多雄一 (SOFTBANK MOOK)

本多本 素顔の本多雄一 (SOFTBANK MOOK)



では本多雄一はどうか。33歳という年齢もあり、まだまだやれそうと思った人が大半だったのではなかろうか。実際は首痛がひどく日常生活に支障もあったと聞く。さらにホークスのセカンドはタレントぞろい。とくに2018年シーズンは牧原大成が台頭し、ますます本多の出番は閉ざされた。ずっとプレーしてほしいが本多は出られない。ホークスファンは分かっていた。だから、本多の引退試合となればフルイニング出場は違和感なし。打席も守備も走塁も満喫する前提でファンはスタジアムに駆け付けた。

2010、2011年と2年連続の盗塁王。しかも59個、60個だからレベルが高かった(2018シーズン最多は西川遥輝の42個=10月6日現在)。引退試合で盗塁を期待するのは当然の流れだったが通算343個目の盗塁は幻に。完璧なスタートだったが投球が上林誠知への死球になったのだ。これには本多も苦笑いだった。

だが走塁は魅せた。内野ゴロ、三振、四球と見せ場はなかったが最後の打席になると思われた第4打席で打球はライト線へ。その瞬間、ホークスファンは思った。「行ける!」。本多は快足を飛ばして二塁へ。そして歯を食い縛りセカンドベースを蹴った。「行け!!!」。台所で皿洗いしていた筆者もスマホDAZNを見ながら思わず叫んでいた。蛇口から水道水が出っぱなしの間に本多雄一三塁到達。ヤフオクドームはさぞかし盛り上がったことだろう。

ホークスリードの試合展開からして第5打席はビミョーだったがグラシアルがホームランを打って本多に打席が回ることに。ホークスファンは思った。「グラシアス!」。そして今度こそ最後の打席。次代の西武エース候補の今井達也から二塁打を放った。もう、ホークスファンには十分だった。

試合中から泣いているファンはいたが、筆者は本多の同期、松田宣浩が泣きながら花束を渡しに行った時にグッときた。熱男が泣いている。いや、熱男だからこそ泣いていたのだ。脳裏にはまだスタメンを勝ち取る前の若き日が脳裏をよぎったに違いない。同期とはいいものである。

本多の心のこもったスピーチは西日本スポーツ記事を読んでいただくことにして、筆者の涙の第2波は引退セレモニー終了前、本多がダグアウトに向かって歩き出した時のことだ。

「闘志 たぎらせ~ 戦~う戦士~、ホ、ン、ダ!!」


聞きなれた前奏が流れ、観客席から最後の応援が始まった。

本多雄一選手のテーマ

本多雄一選手のテーマ

「今光るその足で グランド走れ その光る一振りで 時代に輝け」


グラウンドに背を向け歩を進める本多を最後の応援が後押しする。そう、まさに本多はその光る足でグラウンドを駆け抜け、一時代を作った。王監督、秋山監督、工藤監督とまさにホークスが磐石になってきた時代の選手だった。文字通り本多は時代に輝いたのだった。



だが星はいつか寿命がくる。ある意味、走れない本多を見ずに終われたのはホークスファンにとっては幸せだったのかもしれない。本多には指導者としての今後が期待されている。引退セレモニーで花束をくれたお子さんとの時間も大切にしながら、次の時代を作る選手をぜひ育ててほしい。ひとまず13年間、お疲れさまでした!