黒柴スポーツ新聞

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広島東洋カープ3連覇に合わせて読みたい「スカウト」

いよいよ広島が優勝目前である。球団史上初の3連覇。山本浩二衣笠祥雄をもってしてもなし得なかった3連覇。今年亡くなった衣笠が見届けられなかったのはいかにも残念だ。


そんなカープ優勝に合わせて読みたくなったのが後藤正治氏の名作「スカウト」。カープ黄金時代を陰で支えた木庭教氏を通してスカウト稼業を描いた名作である。

スカウト

スカウト



特に読みたくなったのが悲願の初優勝における胴上げ投手、金城基泰を軸に書かれた第四章「二人だけのパレード」。この章だけでもスカウトという仕事の苦労や醍醐味がひしひしと伝わってくる。
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それは木庭が思い出す地方球場の椅子の座り心地だったり、木庭に金城基泰を橋渡しした在日の元プロ野球選手だったりと、さまざまな要素による。エピソードの一つ一つが砂金のようで、積み重なるとより一層まばゆい光を放つかのごとく。
 

作中でも触れているがスカウトの成果はすぐに表れるばかりではない。特に古葉竹織監督時代の広島の場合は長いスパンでチーム力を上げていたから結果を出すまでに年月を要した。プロ野球は人気商売だから毎年毎年が勝負。目先の利益を重要視するのも間違いではないのだが広島はそうしない。発掘して、鍛えて、の伝統がある。



広島は1991年から25年も優勝から遠ざかったが主力に定着した田中広輔菊池涼介丸佳浩は皆、生え抜き。今年は野間峻祥、西川龍馬、安部友裕らも加わりさらに厚みを増した。これなら新井貴浩も安心して引退できよう。
撓まず 屈せず 挫折を力に変える方程式

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「木庭は、この日、胴上げに加わった選手たちの顔を思い浮かべた。衣笠、山本浩二、三村、水谷、水沼、外木場、佐伯、池谷……。そして、地獄の淵から甦った金城……。どういうわけか、浮かぶのは、彼らが入団してきた当時の、学生服姿だったり、初々しい童顔の若者時代なのだった」(単行本152ページより)。第四章の締めくくりはタイトルにもなっている「二人だけのパレード」。ぜひ実際に「スカウト」を読み、じっくり味わってください。
優勝はスカウトにとっても特別な日。広島のスカウトたちも格別な思いで胴上げシーンを見届けるに違いない。


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