黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

14対12の接戦~甲子園で高知商業が山梨学院に打ち勝つ

14対12というスコアを見て、聞いて、どんな試合展開を思い浮かべるだろう。断っておくが高校野球のスコアである。

ピッチャーが四死球連発とか。守りがエラーばかりとか。いえいえ‼️実は2桁得点を取り合っても「接戦」だったのだ、この日の山梨学院対高知商業の試合は。

筆者は高知商業を応援していたのだが、業務のため「ガン見」は無理。ただし小さめの音声で職場のテレビはついていたので、かろうじて試合展開は追えた。

が、ビミョーに棚類が視界を遮り、リアルタイムに得点シーンは見られなかった。実況が叫んだり、見ている人が「おっ!」と反応する度に立ち上がらねばならない。さながらミーアキャットの警戒ポーズである。

しかし2時間にわたりミーアキャットになるのは無理がある。しかも14対12。何回立ち上がったことか。もちろん業務があるから立ち上がる回数も徐々に減少。で、夜帰宅してから22時までかかってネットの「バーチャル高校野球」で試合を見直した。便利な時代である。

どんだけ乱打戦やねん!と思っていたが、野球の神様は山梨学院についたり高知商業についたり。一時高知商業が7対1と突き放して安全圏に入ったかと思えば山梨学院が怒涛の攻撃で5回に一挙8得点。満塁ホームラン込みの波状攻撃だった。

勝敗のポイントは山ほどあるが、面白かったのは6回、山梨学院が継投した場面。スコアは山梨学院が10対9と1点リードするも高知商業が1死一、三塁と攻め立てた。ここで一塁を守っていた相澤が三番手投手としてマウンドへ。二番手の鈴木はわずか4球しか投げず。ここは左対左のワンポイントか。この相澤が1球投げた後、事件が起きた。

高知商業の一塁走者が牽制に誘い出されたのだ。タイミング的には二塁に転送されタッチアウト…と思いきや、一塁からの送球がわずかに遅れセーフ。これが運命の別れ道だった(まあ、この後まだまだ打撃戦が展開されるのだが)。

走者が二、三塁となりダブルプレーはなくなった。そしてやや前進守備になった内野を、4番・藤高の打球が抜けていった。二人の走者が帰り逆転。もしも牽制で走者が刺されていたらランナーは三塁のみ。タイムリーが出たとしても10-10と同点止まりだった。たった一つのプレーが勝敗に大きく影響する。野球の怖さでもあり醍醐味でもある。

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この後、山梨学院は「山梨学院のデスパイネ」こと野村健太の特大ホームランで追い付き、さらに鈴木が名誉挽回の勝ち越しタイムリーを放つ。さすがに高知県大会で明徳義塾を打ち破った高知商業とてもう無理かとなりそうなところだが、なんと3点取って14-12にしてしまった。

この回、2点タイムリーを放ったのは1年生にして高知商業のホットコーナーを守る西村貫輔。西村はこの日の5打席すべて出塁。黒柴スポーツ新聞が選ぶ、この試合のMVPである。

何せ名門高知商業のホットコーナを1年生が守っているのである。初回、先制打を与える形となってしまったが三塁線を襲う強烈な打球に反応しグラブには当てていた。また、強烈な三塁ゴロも基本に忠実に、身を呈して前に落としてアウトにした(外から強い力が伝わり具合が悪くなってしまう心臓震盪の恐れがあるため、この捕球に是非はあろうが)。守りが良さそうだ。

なお、この日は三塁打あり、試合を決めるタイムリ二塁打あり、得点のきっかけとなる四球ありと、西村貫輔は5打席すべてで出塁した。エース北代真二郎も、打たれながらも150球の力投を見せたが打撃戦という試合内容を加味してやはり西村貫輔をこのゲームのMVPとしたいがいかがだろうか。

近年は守り勝つより打ち勝つ野球がトレンドのようにも見える。その意味では、高知県大会決勝で高知商業明徳義塾に打ち勝ったのは非常にオーソドックスな試合運びだったのかもしれない。とにかく出てくる高知商業のバッターは振りが鋭い。打倒明徳義塾イコール打倒市川悠太を目標に160キロの打撃マシンと対峙した効果がもろに現れている。さらに速い球だけでなく、緩い球も我慢して体の近くまで引き付け鋭く打ち返している点も見逃せない。明徳義塾は堅守と巧みな試合運びが身上だが高知商業は北代の完投とここ一番の集中打が勝利の方程式。壮絶な打ち合いを制したのを目の当たりにすると、次戦以降も期待してしまう。次は激戦地の北神奈川を制した慶応が相手(12日=日曜日の第4試合)。バントを絡める上田修身監督の采配込みで楽しむことにしよう。

※掲載当初、「第3試合」と紹介しておりました。正しくは「第4試合」です。失礼致しました。観戦予定の方はご注意願います!


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