黒柴スポーツ新聞

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ポジションを守ることはなぜ大切なのか~西武多和田が痛恨の逆転被弾

6月9日の対巨人戦で、西武の多和田真三郎が坂本勇人に逆転3ランを喫し、まさに1球に泣いた。たった1球で結果が変わる。これぞ野球の醍醐味であり怖さでもある。

多和田は直前、代打田中俊太に四球を出した。その瞬間、膝に手を付いた。いったん切れた集中力、気力はすぐには戻らない。ましてや次打者は坂本勇人。ギアを上げねば大事故につながる可能性が高い。ド素人でも交代を思い付くが、辻発彦監督は動かず多和田続投。シュート回転のストレートを坂本勇人が見事にとらえると、打球はオレンジ色のスタンドに吸い込まれていった。ブルペン陣に不安があるだけに、代えきれなかったと思う」。この日のNHK解説、伊東勤はそう分析した。前日西武は巨人に競り勝ったが、終盤に4失点。ワグナーも、増田達至にも不安があったということだろう。そう、ポジションをまっとうできないということは同僚に影響する。多和田はこの試合までに7勝。菊池雄星と共にチームを引っ張っている。この日8勝目を挙げていれば今シーズンの2ケタ勝利はぐんと近づいていた。苦しい試合終盤を乗り越えてこそ投手は一人前になるとの論はあるが、菊池雄星がメジャーに行きそうなことを考えれば、多和田を柱に据えていかねばならない。そのためには結果を残させて、自信を付けることも必要だ。それができなかった。前日に救援陣がもたついたことで多和田を引っ張り、逆転負けという最悪の結果を招いた。記録上は多和田が負け投手なのだが、責めを負うべきは救援陣なのだ。多和田ら先発陣はリリーフ陣に助けてもらうことはあるのだからいちいち責めたりはしないだろうけれど。信頼感を失うと起用されなくなる。そのしわ寄せは同僚にいく。同僚が踏ん張れなかったら組織はダメージを受ける。野球がチームスポーツであることを再認識したと同時に、与えられたポジションを守ることがなぜ大切なのかがはっきり分かった。そんな後ろ向きの言い方はよそう。ポジションを守りきれたら同僚を守ることになるし、組織への貢献になるのだ。守護神がいるから逆算して中継ぎを投入でき、中継ぎがしっかりしているからこそ計算して先発を降板させることができる。計算ができる組織は強い。その一員であることはそこそこのスキルがあると思っていい。まあ、そんな台本通りの試合ばかりではプロ野球ファンは面白がれないのだが。多和田は多和田で、エースになるにはあのような局面を乗り越えていかねばならない。エースとは負けない人なのだから。オールスターまでに7勝しているだけでも立派。2ケタで満足せず、15勝以上を目指してほしい。