黒柴スポーツ新聞

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衣笠祥雄のファインプレー~江夏の21球に見る立場の違い

鉄人・衣笠祥雄が亡くなってから、そのストイックな面や相手を追い詰めない態度、フルスイングの精神が称えられている。

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ニッポンハムのカードより。発行年不詳。
そこは一定支持しつつ、どこか違和感もあった。そんなに完璧な人はいないんじゃないかと。しかし、4月30日のNHK特集再放送を見てホッとした。スランプもあったし、審判にもの申したりもしていたからだ。

そして、どこかに談話が出ていたら読みたかったのだが、連続出場記録が途絶えかねなかった死球を与えた西本聖は訃報をどう受け止めたのだろうか。あの夜、衣笠祥雄は痛みで眠れなかったそうだが、西本聖こそ眠れなかったに違いない。

そして、偉いなと思ったのは翌日登板した江川卓。あの状況で三球三振にできるレベルの高さ。さまざまなプレッシャーから腕が縮こまりそうなものだが、VTRを見る限り美しいストレートだった。状況からして変化球はありえない。あの辺りの呼吸こそプロの芸当である。

さらに何かとクローズアップされるのが江夏の21球で、ブルペンを気にする江夏をなだめるシーン。古葉監督としては万一に備えてピッチャーを用意するのは管理職として当然なのだが、江夏は受け入れられなかった。

これについては生前、衣笠祥雄が語ってくれていた。どちらも正しいのだと。個人的にはこれこそが衣笠祥雄のファインプレーと思っている。あそこで怒らない人には守護神は務まらないし、情に流されてただ続投させるのは指揮官としては二流、三流。むしろあの局面でピッチャーに肩を作らせられる古葉監督は一流と思う。だってマウンドには江夏がいて、今なお大ピンチなのだ。入り込むなという方が無理。やはりプレーヤータイプは管理職に向かない。

そういう意味では衣笠祥雄は監督としてはいかがだったかな、とは思う。きっと選手目線が強かったのでは。奇しくも同じく鉄人と称される金本知憲監督と同じような展開になっていたのでは、というのが個人的な想像だ。やはり総合的に見たら山本浩二監督だったんだろうなと思う。もちろん一度くらいは衣笠監督を見てみたかったのだが。

とにかく、鉄人なのに早すぎる死、というよりはあれだけ体を酷使したのだから長寿でなくても全く驚きはない。また一人、骨太の野球人がこの世を去った。特に親しかった二人を相次いで失った山本浩二が少し心配である。傷心の彼を癒すのはカープ初の3連覇しかない。