黒柴スポーツ新聞

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近鉄の鈴木啓示はなぜわざわざ阪急沿線に家を買ったのか?~とんがるならトコトンとんがれ

普段ものを言わず、指示されたことは大概従うタイプ。だが筋を通したい時は割と平気で反抗する。それで損したこともたびたび。おとなしくやり過ごすのと、意思を押し通すのと、果たしてどちらが賢明なのか。

 

一つ、答えをもらった。鈴木啓示著「投げたらアカン! わが友・わが人生訓」に書かれていた。きっかけは今読んでいる鎮勝也氏の著書「二人のエース 広島カープ弱小時代を支えた男たち」。安仁屋宗八外木場義郎を描いた本で、今、しこたま頭にカープの歴史を蓄積している。そこに外木場義郎が割と我が道をゆくタイプ的なことが書かれてあり、寮を出るエピソードに目が止まった。そこに鈴木啓示の例が書かれていた。

 

投げたらアカン!―わが友・わが人生訓

投げたらアカン!―わが友・わが人生訓

 

 

鈴木啓示近鉄の大エースになる前に早々と寮を出た。しかも家を近鉄沿線ではなく阪急沿線にだ。憧れの阪神村山実の家に近いなどの理由からだったが深層心理としては万年Bクラスの近鉄色に染まりたくなかったことがあった。

 

まず、これが素晴らしい。郷に入れば郷に従えとは言うものの、そこが常に正しいかは分からない。近鉄の場合は弱かった上に尊敬できない先輩がいた。寮も整っていたとは言い難く、夏場は建物を冷やすため若手の鈴木啓示が屋根にホースで水をかけていたという。それが嫌だったというわけではなく、強烈な違和感があったのだ。鈴木啓示は契約金をつぎ込み一軒家を買って寮を出た。

 

 

出る杭は打たれる。もし鈴木啓示が結果を残せなかったら「勝手なことをしたからだ」と言われるのがオチだ。しかし鈴木啓示は奮起した。5年連続の20勝。周りを黙らせるには十分な成績だ。

 

そう、とんがるならとことん自分を押し通さねばならない。「投げたらアカン!」にも、中途半端にやるならやらない方がまし、と書いている。寮を出たけどやっぱり勝てませんでしたでは負けなのだ。

 

結局実績。鈴木啓示いわく、それが男のウイニングショットだという。ムム、さすが通算317勝の男。説得力がありすぎる。

 

 

まあ日本で5人しかいない300勝クラスの実績はなかなか修められない。しかしアイツは普段からしっかりやってるな、とは意識次第で思わせられる。多少我を通しても結果や常識さえ伴っていればそこまでとやかく言われない。

 

言いたい人はそのタイミングを手ぐすねひいて待っている。出雲駅伝では青山学院大が2位になり東海大が優勝したが、「原晋監督はテレビ出すぎ」とかそういう話になる。勝っている間はそれを封じられるが負けたら批判が待っている。駅伝好きにはそういう場外乱闘も含めて面白いのだが(性格悪いなあ)。いや、それもドラマの一部ということ。とにかく原晋監督はとんがりきらないといけないのだ。

 

 

結局筆者は個人プレーならとんがるがいちいち組織内で衝突するのも大人げなく思って実はあんまりとがらない人。ここまで書いておいて何だ結局反抗しないじゃんとか突っ込まれそうだが、勝負する時は勝負する。その方が負けたとしても悔いが残らない。自分にとってのウイニングショットが何になるのか分からないがいつかはビシッと投げ込んでみたいものだ。

 

「投げたらアカン!」は1985年発行という時代も感じさせる内容だが今に通じる示唆もある。興味がある方はぜひご一読を。