黒柴スポーツ新聞

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村田諒太WBAミドル級王座奪取失敗に学ぶ~「うーんエンダム」は流行語大賞になるのか

日本中が吉本新喜劇ばりにズッコケたボクシング村田諒太WBA世界ミドル級王座決定戦判定。筆者もその一人だった。「歴史に残る敗戦」を見た思いだが、この敗戦の教訓を二つ考えてみた。 

101%のプライド

101%のプライド

 

 

 勝負は勝ち切らねばいけない

疑惑の判定は勝敗を分けた理由が添えられていないため、「手数の差が出たか」などと推測するほかない。ボクシング通を自任するビートたけしは「プロの視点から見るとプロらしくない試合なんだろうな」と言っていた。確かに村田諒太のパンチは一発の破壊力は抜群だがワンツーといったコンビネーションにはなっていなかった印象だ。

 

ヤフコメにもあったが、挑戦者の、しかも日本人挑戦者がチャンピオンベルトをまくためには、誰もが分かるKO勝ちしかない。特に今回の対戦相手、アッサン・エンダムは粘りが持ち味。ダウンしても数秒で回復する自信があるという。アッサン・エンダムを見ていてムカデのようだと思った。ムカデは多少火であぶっても胴体を切っても死なない。いずれ死ぬのだがしばらくはのたうちまわっている。

 

だからこそ、だ。別に手抜きをしたなどという意味ではないが、もっと畳みかけるべきだった。アッサン・エンダムはのたうちまわっている間に12ラウンドをしのいでしまった。日本人唯一のミドル級王者経験者、竹原慎二も試合は村田諒太の勝ちだったとしながらも、「やっぱりゴングが鳴るまで倒しにいかなきゃならんのですよ」(デイリースポーツ記事より)と言っていた。村田諒太のボクシングは、ギラギラしたプロボクシングの世界ではまだまだ美しくスマートすぎるのかもしれない。やはりタイトル戦など結果がすべての戦いでは、何が何でも勝つという姿勢が求められる。それはきっと、あなたも変わらない。

 

あきらめなければ何かが起こる、かもしれない

一方で、立ち位置を正反対にしてみたら何が見えるのか。日本中を敵に回しかねないがあえてアッサン・エンダム肯定論も展開してみる。アッサン・エンダムは4回に右ストレートでダウンを喫した。序盤、手数こそ上回っていたがそれは村田諒太が「攻めない」という作戦を実行していただけ。徐々に村田諒太の圧を受けじり貧になっていった。

 

現在TBS系列で放映中のドラマ「小さな巨人」の主人公・香坂真一郎(長谷川博己)が再々言っていたセリフを思い出す。「我々(所轄)には、足がある」。強敵である捜査一課長・小野田義信(香川照之)に追いつめられるなど難局のたびに口にするセリフだ。「オレには足がある」とばかりにアッサン・エンダムもあきらめずフットワークを徐々に復活させ、ジャブを繰り出し続けた。

 

お構いなしに村田諒太は右の大砲をアッサン・エンダムにぶち込んだ。そのたびにアッサン・エンダムはよろけるもロープを背負い、またはロープをつかみながら、あるいは白目をむきながら必死に耐えてなかなかダウンをしない。ぶちかまされながらも「効いてない、効いてない」と首を振る。アッサン・エンダムの判定勝ちは、ピンチ、劣勢の中でもやれることをやった結果、と言える。そう、あきらめなければ何かが起こる、かもしれないのだ。これも「小さな巨人」をほうふつさせる。

 

アッサン・エンダムはこの日の試合までに37戦35勝2敗(21KO)。泥臭さと経験という意味では確かに村田諒太を上回っていた。世の中にはアッサン・エンダムのようにしぶとい人がいっぱいいる。いい意味でのしぶとさは見習いたいのだが、村田諒太のような善人が馬鹿を見ることが多い世の中であることもまた事実なので、狡猾(ずるがしこい)という意味でのしぶとい人間にはならないよう気を付けたいものだ。

 

そのジャッジに覚悟はあるか

さて…。買収だ八百長だとジャッジについてはさんざんな言われようだ。確かに、アッサン・エンダムを優勢としたパナマのパディージャ氏は116-111、カナダのアール氏も115-112と、よくも差をつけてくれたものだ。

 

この日のフジテレビ中継には、「小さな巨人」の小野田義信・捜査一課長役の香川照之がゲスト出演していた。WBAヒルベルト・メンドサJr会長は「公正な採点が下すことができないスポーツに怒りと不満を覚える」(スポニチアネックス記事より)と異例の再戦要求をする始末。香川照之には小野田一課長の決めぜりふばりに「そのジャッジに覚悟はあるか!!!」とヒルベルト・メンドサJr会長になりかわって詰め寄ってもらいたかった。まさか、香坂役の長谷川博己のように「私の勘です!」なんて答え、だったりして。

「小さな巨人」公式BOOK ―PHOTOS&INTERVIEWS― (角川SSCムック)

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 気になる今後

敗戦後、村田諒太は「気持ちの整理が必要」と語る。今後は?と試合後すぐ聞かれるアスリートには気の毒なのだが、それはファンの関心や期待の裏返しでもある。多くのファンは村田諒太の再起を願っている。アッサン・エンダムと再戦してやり返してほしいと期待している。ただしミドル級はそうそうマッチメイクできない階級らしい。であるならなおさら村田諒太にはじっくり今後を考えてほしい。試合後一切言い訳をしない村田諒太人間性だけが救いだ、というヤフコメもあったが本当にその通り。今回の敗戦でまた多くのファンを得たのだから、そのファンを熱くさせる試合を楽しみにしたい。とにもかくにもすっきりしない負け方に、筆者の頭の中では「うーん、エンダム」というフレーズがぐるぐる回っている。