黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

パラスポーツにあえてメダル至上主義になってほしい理由

リオデジャネイロパラリンピックの競技日程が続いている。予想はしていたが静かに日程が消化されている。


そのこと自体は今さら深刻にも受け止めていない。五輪ほど騒がれないことも仕方ないと思う。考えてみれば、卓球男子でさえフォーカスされたのがリオ五輪から。卓球が競技種目になったのは1988年のソウル五輪からだから28年もかかっている。卓球女子は4年前から。いずれもメダルを取ってから注目が集まった。



今回はNHKに一大転換があった。これまではEテレだったが総合テレビで放送されている。キャスターも杉浦友紀アナウンサーだ。五輪との境目がまた一つ消えた。


このあたりは新聞も見習わねばならない。以前はパラスポーツ記事は社会面掲載が定番だった。競技性よりもドラマ性、人間性が注目されがちだった。もちろんスポーツ全般で言えることだが結果がすべてではないし、選手の個性そのものに魅力があるから、社会面に載ることが悪いことではない。


だが一部の、特にパラスポーツにリハビリ的要素を求めない人たちにはスポーツ面掲載が喜ばれていたように思う。黒柴スポーツ新聞編集局長がいる新聞社はその点、割と早くからスポーツ面で取り上げてきた。これは全国障害者スポーツ大会が地元で開催されたことが大きい。


ようこそ、障害者スポーツへ-パラリンピックを目指すアスリートたち-

ようこそ、障害者スポーツへ-パラリンピックを目指すアスリートたち-


障害者スポーツという言い方も異論があるのは承知しているし、確か車いすバスケ大会の会場だったと思うがそれってどうなのと体育館で質問されたこともある。編集局長はあえて障害者スポーツと見ている部分はある。


理由はプレーヤーのバックグラウンド込みで見たいからだ。これはどのスポーツでも同じで、どこ出身とか、どういうプレースタイルかという情報を入手したいのと同列だ。ただし、やはり障害者にはそれなりのハンディがあると思う(かわいそうだなんていう目線では全くなく)。


例えば精神障害者バレー。プレーヤーの状態はまちまちなのだ。ある大会で取材チームが優勝したのだが、実は主力選手の出場が危ぶまれるコンディションだったと試合後に明かされて驚いた。


「精神バレーはコートに立つまでが大変なんです」


監督のこの一言を聞いて、精神バレーを見る目が少し変わった。一緒にレシーブ練習に混ぜてもらって(一応、高校でバレー部でした)、編集局長のミスもカバーしてくれて、なあんだ、普通のバレーと同じで楽しくやれるじゃないかと思っていた。それも事実ではあるが、コートに立つまでには見えないハードルがいくつもあるというのも事実なのだ。


編集局長はそういう部分もひっくるめて競技が見たいのである。24時間テレビで障害者が何かに挑戦する姿を追うことに賛否両論あったという。同じ一昼夜生放送する番組では明るくはっちゃけてばかりのフジテレビ派なのだが、過剰な演出さえなければ挑戦すること自体はありと思う。ちなみに今まで出会ったパラスポーツ選手にはお涙ちょうだいムードを一切感じたことがありません。


Go Forward! KEITA (重度障害者も大学生になれるんだ! )

Go Forward! KEITA (重度障害者も大学生になれるんだ! )

※このボッチャに取り組む加藤啓太選手に会ったことがありますが、めちゃくちゃ前向きな人ですぐにファンになってしまいました。


2020年に向けてパラスポーツが注目される機会の一つがリオ大会だ。競技を完全に理解していない人でもおおおーっと思ってもらえるには、前述の卓球もそうだったようにメダル獲得が最も分かりやすい。だから、この際メダル至上主義で一つでも多くのメダルを持ち帰ってほしい。そのメダルをオセロのように並べることで、偏見を一つ一つ興味に、そして声援へとひっくり返せるはずだから。


きょうなぜこれを書こうかと思ったかと言えば、編集局長も読者になっているtomoさん(id:tomoecru)のブログ「ともに きなりに」で黒柴スポーツ新聞をご紹介いただいたからだ。


自分の免疫が間違って自分の神経を攻撃してしまう「ギラン・バレー症候群」という難病で命が危ぶまれるところからカムバックして、社労士の卵としてブログで社会保障の有益な情報をご自身の経験も交えながら発信されているtomoさん。リオのパラ直前からは大会の意義や各競技の解説まで、スポーツジャーナリスト顔負けの発信力を発揮中だ。
※tomoさんのブログ「ともに きなりに」自己紹介とブログ名の由来 http://tomoecru.hatenablog.com/entry/2016/07/26/115828
※同上 ウィルチェアーラグビー紹介記事 http://tomoecru.hatenablog.com/entry/2016/09/11/021431


tomoさんとつながったのはウィルチェアーラグビー日本代表主将の池透暢(いけ・ゆきのぶ)選手の記事がきっかけ。ブログのいいところはまだ見ぬ味方と巡り会う点だ。やり方は全く違うが、これからもコラボしてパラスポーツファンを一人でも獲得したいと希望している。tomoさん、コツコツやっていきましょう!
※池選手リオパラ壮行会記事はこちらhttp://tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com/entry/2016/08/05/160344


tomoさんのブログもぜひチェックよろしくお願いいたします。黒柴スポーツ新聞のチェックもお忘れなく…。


きょうの1枚は広島県出身の張本勲。幼少時、バックしてきた三輪自動車のせいで右手が焚き火の中へ。やけどで親指、人差し指以外の3本が手のひらに癒着した。その後、指は手のひらの肉ごと切り離して、足りなくなった手のひらには太ももの肉が移植された。張本はこれプラス原爆にも遭っている。室内におり爆風で飛ばされたという。張本は過去を多くは語らないが、こういう背景を考えると打率3割以上16回もひと味違って見える。トレードマークの黒い手袋はテレビ中継で右手をさらしたくない(見る側の立場も踏まえて)という考えからだったという。
※参考図書「誇り 人間 張本勲」山本徹美著

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