黒柴スポーツ新聞

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江藤慎一が20分も雨に打たれながらグラウンドに立ち続けた理由とは

梅雨だから仕方ないが雨にやられる毎日。先日は朝、黒柴社長の朝の散歩中に土砂降りにあった。小雨を甘く見て傘を持たずに出発してしまった。びしょ濡れになって思った。江藤慎一は偉いなあ、と。

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雨天の江藤のエピソードは黒柴スポーツ新聞編集局長の心の師匠、近藤唯之氏著「新版 比較野球選手論」の冒頭に出てくる。
1963年8月25日の対巨人戦で2本ホームランを打ったが王貞治がホームランを打って同点となったところで雨天中断が宣告された。


中日ナインはダグアウトに引き揚げたが江藤だけ帰ってこない。もう6回になっているから江藤のホームランが取り消されたりもしない。江藤は巨人に勝ちたい一心だったのだ。もし自分が引き揚げたらきっと中止になるだろう…。20分雨に打たれた後、西沢道夫コーチに諭されてようやく引き揚げ、その10分後に中止が決まった。

先日のヤンキース対レンジャーズ戦は3時間35分の中断の後、午前2時44分に試合が終わったと新聞で読んだ。江藤が同じことをしていたらぶっ倒れていたことだろう。


江藤の野球カード裏の解説にはモットーが常に全力疾走だと書いてあった。江藤は18年間で2057安打も打っている。首位打者は3回。セ・リーグパ・リーグ両方で取っている。これは史上初だった。リーグの違いがどれほどのものかプレーヤーではないので分からないが、全力プレーだからこそできたとしか思えない。

時代は変わり、ドーム球場が当たり前になった。江藤が雨に打たれたナゴヤ球場も役目を終え、ナゴヤドームに引き継がれた。だから中日の選手が名古屋で雨天中止阻止のために雨に打たれることもない。しかし今思うのはそこまで闘志むき出しの選手がいないということだ。プロ野球選手はどんどんスマートになっている。


かつてサラリーマンもモーレツなことが美徳とされていた。今はプロ野球選手をどうこう言えないくらい冷めている。それは全般的に伸び悩む賃金と連動しているようにも思える。やってもやんなくてもいっしょじゃん、と。人間正直なものである。


そういう時代には江藤の泥臭さがどう映るのだろう。黒柴スポーツ新聞編集局長的には嫌いじゃない。この相手にだけは負けたくない。この仕事だけは成功させたい。そういう執念は見ていて熱くなるし応援したくなる。

年齢を重ねると守りに入りがち。江藤みたいに雨に打たれてまで何かを勝ち取りたいとは思わなくなる。実際に雨に打たれたから言うがずぶ濡れになるのは何ともみじめな気持ちになる。だから江藤は心の底から巨人に勝ちたかったんだなと思えた。それくらい一生懸命になれることって素晴らしい。江藤が2057安打も打ったのは当然とすら今は思える。現代においても、江藤のような闘志むき出しの選手が出てきて、もっともっと観客をわかせてほしい。