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黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るワンシーンやプレーヤーについて綴ります。

39勝の真田重蔵と3割5分5厘、51本塁打、161打点の小鶴誠はどちらがMVPか

投手と打者、どちらの成績が重いのか。ぜひ聞いてみたい勝負がある。1950年のセ・リーグMVP争い。共に松竹にいた小鶴誠と真田重蔵(重男)だ。


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黒柴スポーツ新聞編集局長の心の師匠の一人である近藤唯之先生の「新版 比較野球選手論」が元ネタ。両選手のシーズン成績を引用する。




【小鶴】
130試合、183安打、打率3割5分5厘、51本塁打=日本新、161打点
【真田】
61試合、39勝12敗、防御率3.05


どうだろう。もしあなたに最優秀選手選考の投票権があれば、どちらに1票入れるだろうか。編集局長なら真田。理由は打者の成績は必ずしもチームの成績に直結しないから。野球は何点取ろうが9回を終わって1点でも多い方が勝つ。だからたくさんヒットやホームランを打つのは素晴らしいがイコール勝利、ではない。一方、投手の勝利はチームの勝利と意味合いは同じ。松竹は98勝したから真田の貢献度合いは高いとすぐ分かる。



だが実際は小鶴がゲット。確かにすごい数字だ。トリプルスリーもすごいが小鶴はもっとすごい。各部門の数字が軒並みすごいのだからMVPなのかもしれない。真田は防御率が2点台だったらMVPだったのかどうか。



近藤氏の本によると日本シリーズ前の11月20日に記者投票の結果が発表された。42票中27票が小鶴、15票が真田だった。小鶴は賞金3万円をゲットした。



この件に関しては、あってはならないことが起きた。松竹の田村駒治郎オーナーが真田に同情し30万円のポケットマネーを渡した。本では「(シリーズで)真田がくさったら、えらいことになる」という「危機管理」もあったようだ。



この件は露呈し松竹の小西得郎監督はオーナーに「小鶴にも金を出してやってくれ」とかけあった。しかしオーナーは聞かなかった。エピソードは阿部牧郎著「素晴らしきプロ野球」の小西得郎の章「何と申しましょうか」にも書かれている。



ゴタゴタの結果がどれほど影響したかは分からないが、11月22日からの毎日とのシリーズでは真田が1勝1敗、小鶴は1割7分4厘。松竹の2勝4敗で幕を閉じた。
真田よりも小鶴の不振に目が行ってしまう。



ちなみにウィキペディアではMVP選考はシリーズ後にあったとされている。それが本当ならこのエピソードはオチが成立しなくなる。どこかで1950年11月20日ごろの新聞を見るしか確認のしようがない。プロ野球を面白おかしく記録するのは結構だが、できるだけ筋は曲げないでほしい。シリーズ前だったのか、後だったのか。エピソードでMVP選考の日付を変えるなど言語道断である。



小鶴は風貌やプレースタイルから和製ディマジオなんて呼ばれたりもする。野球カードでもいろいろ見る。しかし真田はあまり見ない。編集局長は辛うじて1枚持っている
が、小鶴よりも知名度はないように思う。それだけに真田がMVPもらってもよかったなあと思う次第。39勝の代償は大きく、このあとここまで勝てることはなかった。あ、でも30万円はゲットしたんだっけ。得をしたのは真田かもしれない。



企業内でも表彰には十分ご注意を。いずれか一人だけの特別待遇は松竹のような結果をもたらしかねない。田村駒治郎オーナーはこれ以外でも真田をかわいがっていたようだ。言葉一つ、態度一つで結果は変わる。人の心は想像以上に難しい。だからこそちょっと先を想像することを心がけたいものだ。