負けた時より勝った時に反省していた黄金の左腕・江夏豊
少しずつ読み進めている本がある。江夏豊の自伝「左腕の誇り」。まだ4割くらいしか読めていないが、示唆に富むくだりがあった。
- 作者: 江夏豊,波多野勝
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2001/03
- メディア: 単行本
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すごく大事な部分なのでそのまま紹介させていただく。
「僕らはとかく打たれたときのことを口にしてしまうんですが、僕は勝った試合のあと、なぜ打たれなかったのか、なぜ抑えることができたのかを考えるようにした。勝ったときは気持ちがいいから、素直に、謙虚にその理由を考えることができる。どういう努力をした結果なのかがわかる」
黒柴スポーツ新聞編集局長もそうだが、とかく反省は失敗したときにやりがち。もちろん次に生かすためにやるわけで、反省すること自体は間違いではない。ただし単なる後悔や愚痴になってはいけない。分かってはいるがつい舌打ちやため息を繰り返してしまう。
江夏が言うには、負けたときになぜ打たれるか考えると、気分が良くないからまともな反省材料が出てこない。なるほどな、と思った。同じ反省でも前向きか後ろ向きかで成果はずいぶん違いそうだ。
ちなみにこのくだりの直後、感性だけで力任せにやるとだめだという話があり、二人の実例が挙がっている。まず木田勇。新人で22勝し最多勝、最多奪三振、新人王、MVP。ところが年々勝ち星は減っていった。江夏は木田の純粋さは認めつつも理にかなったものは見つけられなかった。ピッチングのシミュレーションをしたらと助言するも木田は受け入れなかった。
もう一人は先日亡くなってしまった工藤幹夫。こちらも20勝経験者だが江夏には無神経な男に見えた。キャッチャーの要求どおり投げ、自分のピッチングを知らないように思えた。だから同じ失敗を繰り返すと書いていた。
江夏は「野球という世界で、天性だけで飯が食えると言ったら一年か二年」とも言っている。これはどの業界でも同じだろう。長年トップを走る人は才能がもちろんあるが、きっとずっと考えているのだ。
うまくいったときこそ反省。勝因を考える。慢心も産まず、いいかもしれない。ぜひ一緒にやってみましょう。
きょうの一枚はもちろん江夏。せっかくなので阪神時代を探した。通算206勝もしてセーブも193。奪三振は2987。1年目から6年連続でリーグトップだった。最優秀選手2回、最多勝2回、最優秀防御率1回。リアルタイムで見られなくて、本当に残念です。「左腕の誇り」、味わいながら読み進めていこう。