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黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るワンシーンやプレーヤーについて綴ります。

エラーしようという人もいないし三振しようという人もいない~1973年阪神・池田祥浩など球界3大落球事件を振り返る

 

鳥谷敬が5月17日の中日戦・9回に落球。敗戦の要因を作ってしまった。いまどきすぐネットに動画が上がる。黒柴スポーツ新聞編集局長は最初に新聞記事で知り、この記事を書くにあたって動画を見た。

www.nikkansports.com

 

鳥谷をかばうようだが、ほかの記事でも書いているように足元が不自然な動き。芝に足を取られたようだ。が、鳥谷も意地があるのだろう。そんなことは関係ないという態度を取った。鳥谷が守備力あるのは周知の事実なのでもう少しかばってもらってもよさそうだが、やはり敗戦につながってしまったため擁護論は少ないのだろう。

 

 

球史に残るエラーがある。有名なのは1981年8月26日の宇野勝ヘディング事件。もう何回見たことか。あんなプレーは二度とないだろうが、状況も実はすごかった。巨人が連続試合得点記録が158試合続いており、星野仙一がそれを止められるかもしれなかったのだ。が、ご存じのとおり山本功児がフライを打ち上げたが宇野が頭に当てて落球。ランナーが帰って巨人が得点してしまった。ボールが転々とする間に映るフェンスの広告で「サロメチール」が出てくるのは何度見ても秀逸。

 

 

 1961年10月29日の南海ー巨人の日本シリーズ第4戦(この時点で南海1勝2敗)では南海が3-2と1点リードした9回2死、藤尾茂のフライを1塁手・寺田陽介が落球。続く長嶋茂雄のサードゴロをショートの小池兼司がエラー。それでもスタンカは宮本敏雄を追いこみ最後の1球も決まったに見えたが球審の円城寺満はボールの判定。南海の猛抗議も実らず試合再開後に打たれて巨人がサヨナラ勝ちした。 

 

 

このボール判定の一球を野村克也は著書「この一球」で「プロ野球の潮流を変えた一球」と表現した。その後巨人の時代になる布石の一球だったというわけだ。なお収まりのつかないスタンカがバックホームのバックアップに見せかけて円城寺に体当たりしたのも有名な話。こりゃ、コリジョンルールどころの話じゃないな。

この一球―野村克也の人生論

この一球―野村克也の人生論

 

 

 動画で見た記憶があるようなないような、あってももう一度見てみたいのが1973年8月5日の阪神ー巨人戦の池田祥浩の転倒。巨人の9連覇が阻止できたかもしれないシーズンだっただけに「世紀の落球」とよく言われるが実のところは転倒らしい。本紙編集局長の大好きな近藤唯之氏もきっちり書いている。以下、著書の「運命の一球」を教科書とする。池田の章のタイトルは「勝つと思うな、思えば負けよ」。

運命の一球 (新潮文庫)

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2-1で阪神リードの9回表、江夏豊がマウンドにいたが2死1、3塁でバッター黒江透修。打球はセンターに飛んだが池田が後ろ向きに転倒(ウィキペディアによれば整備不良の芝に足を取られた)。ボールはバックスクリーン前まで転がっていき、ランナーの生還を許して逆転されてしまった。結果的にシーズンは巨人が66勝60敗4分け勝率5割2分4厘で優勝。阪神は64勝59敗7分の 勝率5割2分。池田がずっとこの転倒を言われたのは気の毒で仕方ないのだが、転んだ1試合の意味はものすごく大きかった。

 

 

「運命の一球」では試合後の金田正泰監督の前にぬぼーっと現れ「池田です」というシーンが描かれている。暗闇だが池田は泣いているようだったという。金田監督は何と言ったか。「現役をつとめている間は、さっきのプレーを忘れるな。頭のど真ん中に叩きこんでおくことだよ」。それが今後の人生の指針となるのだ、というココロだ。深いなあ。金本知憲監督は鳥谷への直接的ないらだちの表現ではなかったかもしれないがその後の犠牲フライを許した場面でイスを蹴っ飛ばしたという。部下のミス、しかも優勝争い真っただ中での失策にはらわたが煮えくりかえってもおかしくない状況だっただろうが、金田監督は諭すように言っただけだった。

 

 

実は金田監督は人格者だという流れで書きたかったが、同じ1973年には権藤正利にも鈴木皖武(きよたけ)にも殴られていた。いったいいい人なんだかダメな人なんだか。

 

 

最近全然参加できていないが草野球をやっているだけでも分かる。エラーしようという人なんていない。三振しようという人もいないのだ。「何考えてるんだ!」と言われてもプロ野球選手なのだから活躍しようと励んでいるのだ。それは社会人も一緒。つい失敗してしまうことだってあるが、お客さんのために、自分のために、職場のために日々頑張っております、はい。だからエラーをした選手にも「明日があるさ」と何とか取り返してほしいなと思う。「運命の一球」では池田の代打満塁サヨナラホームランについても触れている。ぜひ一度手に取っていただきたい。この本にも書いてあるが、忘れてほしい失敗は忘れられず、本人が覚えておいてほしいことは忘れられてしまうものなんだな。でも、失敗をどう受け止めるかでその後は変わってくると信じたい。

 

 

きょうの1枚は名誉回復の機会の意味もあって宇野。通算338本塁打、1620安打。本塁打王1回、ベストナイン3回。ホームラン王は掛布雅之と分け合った。何より遊撃手としてのシーズン41本塁打は最多。中日時代の334本塁打も球団記録だそうだ。記憶だけでなく記録にも残る選手ということを今一度書いておきたい。

 

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