黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

日本一早いビールかけ論~1982年セ制覇の中日を例に

開幕もしていないのにビールかけの話をする。2015年にセ・リーグを制したヤクルトが神宮球場でビールかけをした。これへの違和感である。

 


グラウンドは野球をするところ。大切に扱うべきだ。もちろんヤクルトだってそれは承知の上。しっかりシートを敷いていた。でもビールかけの時は下も上下関係も気にせずやったらいい。

 


グラウンドでやればそれを見たファンと喜びを分かち合えるという側面もある。しかしビールかけはその瞬間を目指した選手だけで濃密にやったらよい。訳の分からない変装の類いは好きではないけれど。

 


ただ一つ入ってもいいと思う人たちがいる。アナウンサーだ。そりゃビールかけの時に質問したりお約束のようにビールをかけられたりする人がいなきゃ、という単純な話ではない。リポーターとして選手とシーズンを通じて付き合っている、つまり選手の喜びを家族と同じくらい分かる人たちなのだ。

 

 


黒柴スポーツ新聞編集局長が好きな松倉悦郎アナウンサーは1982年中日優勝のビールかけで矢沢健一と肩を組んでいた。きのうきょう取材に行ったリポーターが中日の主軸と肩が組めるわけがない。よいリポーターはその場の質問がうまいかどうかではなくて、取材対象と抜群の距離感を保てる人だろう。だからこそビールかけで「やりましたね!」が「おめでとう」に聞こえるのだ。

 

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もう一人、本紙イチオシが吉村功アナウンサーだ。地元、東海テレビだから中日への食い込み方が尋常ではない。1982年のビールかけではちょくちょく「前半戦苦しんだじゃない?」と思わず苦労をこぼしたくなる呼び水をまきまくっていた。いったい何人が前半戦苦しんだのか。まさにベテランの味。遠慮無用の横から目線とタメ語である。

 

 


もちろん肩を組むのもタメ語もこの二人だからオッケーなだけ。そういう人だからこそ中日ナインも相手するのだ。何が言いたいかというと近年ビジュアル重視なのか女子アナが投入されることが好きではない。別に女性差別でもなんでもない。かわいい、爽やかというのとビールかけは相容れないのだ。そこは吉村劇場、オッサンの聖地なのである。その座を女子アナに譲ってほしくはない。

 

 

論より証拠。史上初のビールかけテープ起こしに挑戦した。1982年中日セ・リーグ制覇のビールかけ会場で松倉アナ、吉村アナ夢の競演である。ちなみに吉村アナはインタビュー相手の選手の肩という肩に腕を回して逃げられないようにロックしている。このくらいの大胆さは見習いたい。82年Vメンバーにこんな人いたなと顔を思い浮かべながら読んでください。

 

(吉村)今の気持ちは?

牛島和彦)いやーもう、最高にうれしいですね。

(吉村)ことしはよくやったね。

牛島)はい、どうも、ありがとうございますッ。

 

 

(吉村)おめでとう。

小松辰雄)ありがとうございます。

(吉村)きょうは素晴らしいピッチングだったね。※胴上げ投手。

(小松)はい、どうもありがとございます。最高ですね。

(吉村)最高だね。だけど前半ちょっと苦しんだじゃない

(小松)1回だけですね。1回だけ。

(吉村)1回だけね。後半よく頑張ったね。日本シリーズの抱負。

(小松)はい、もう、頑張ります。

 

 

(松倉)態度で表して。優勝の喜び。

堂上照)やったぞー!※ガッツポーズ付き。

 

 

平野謙)レギュラーなってこんななってもううれしくてしゃあないです。

(吉村)途中でもってあんたガンで死ぬんじゃないかって自分で言ってたけど。

(平野)ハッハー! 言っておりません、言っておりません。

(吉村)頑張って、日本シリーズ頑張って。

(平野)頑張ります。ありがとございまーす。

 

 

(吉村)今の気持ちは?

田尾安志)最高ですね。

(吉村)最高。だけどさ、敬遠ばっかりで首位打者とれなかったじゃない。※長崎慶一とのアレ。

(田尾)いやいや、もう、優勝できれば十分です。ちょっと(ビールが)冷たいです。ヘヘ。

 

 

(松倉)おめでとう。

(谷沢)どうもありがとうございます。

(松倉)前半はさ、打てなくて打てなくて、さんざん苦しんで。それだけに喜びは大きいでしょう。

(谷沢)大きいですね、ほんとにうれしい。

(松倉)最初の優勝の時と比べてどう?

(谷沢)もう比べ物になんない。あーっ、あーっ!!※松倉アナと肩を組んだままビールの集中砲火を顔面で浴びる。

 

 

(吉村)上川君、おめでとう。

上川誠二)どうもありがとうございます。ビール!※と言ってびんをゲットして吉村アナに攻撃開始。

 

 

中尾孝義)あしたゆっくり休んでね。あさってから考えます。あー気持ち悪い※びしょぬれになったのが気になる様子。

(松倉)きょうは思いっきり飲む?

(中尾)飲みます。

 

 

星野仙一)アーッ、アーッ! おめでとう※頭上から吉村アナにビール攻撃開始。

(吉村)優勝おめでとうございます。

(星野)どうもありがとう。

(吉村)今どんな気持ち?

(星野)もうね、若手がよく頑張ってくれましたからね。僕は満足しています。

 

(吉村)前半苦しんだじゃない

大島康徳)ヒャーッ、アーッ、ヴァーチョー! ホワー。ちょっと待てって※ビールをかけられまくる。

(吉村)ちょっと、インタビュー中なんです※かけた人にまさかのダメ出し。

(大島)ちょっと、いい男台無しじゃない。

(吉村)しかし前半戦苦しんだじゃない

(大島)でも、もういいッスよ。ちょっといいすか? アーッ※再度ビール攻撃を食らう。

 

 

鈴木孝政)泣かないようにしようと思ってたんですけどね。

(吉村)ダグアウトで、すみっこで泣いてたじゃない。

(鈴木)やっぱり泣いちゃった。

(吉村)きょうは思い切って飲んで、泣いて。また日本シリーズに備えてちょうだい。

(鈴木)はい、やりましょう。

 

 

郭源治)うれしい。チームの優勝うれしい※号泣。

(吉村)後半ちょっとね、なんかばてちゃったみたいなかんじもあるんだけど、この優勝で報われたね。

(郭)そうですね。

(吉村)新人王はちょっと残念だったけど。

(郭)もう大丈夫。けどうち優勝。大丈夫です。

(吉村)まだ日本シリーズあるよ。

(郭)頑張ります。

(吉村)お国のために頑張ってよ。ありがとう。

 

 

(吉村)日本シリーズ、ジャパンシリーズ。

(モッカ)シンパイナーイ!

(吉村)シンパイナーイ。 

(モッカ)ダイジョーブ。

(吉村)こんぐらちゅれいしょん。※英語が堪能な吉村アナ。

 

 

(吉村)それにしても長かったペナントレースでしたねえ。

近藤貞雄監督)130試合で最後にね、優勝が決まるってのは私の経験でありませんのでね。それにしてもね、この2年間でね、このようなね、未完成なね、まだ未熟なチームがねほんとにあの優勝したってのはもう私ありがたいと思いますね。選手が私のね、よく考え方を理解してくれましてね。そして何よりもですね。どこのチームより後押しがあったと思います。これが優勝さしたと思います。

(吉村)まだ日本シリーズがありますよ。

(近藤)きょうはそんなこと考えません。きょうを勝ち取るために全力でやってきましたから。これからまた考えます。うわ、はっは。わーこりゃ大変だ。はっはっは。※背中にビールを入れられまんざらでもない様子。

(吉村)おいしい酒でしょう。

(近藤)もうおいしいです。

 

どうだろう(何が?)。同じやりとりが女子アナにできるだろうか。もしできるとしたらそれは足しげく通って選手と心が通じ合った人だけだ。2016年はどのチームがどこでどうビールかけをして誰がリポートするのだろうか。早くも楽しみである。