黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

1987年秋からの法政4連覇を熱くつづった神宮観戦記~きょうは法大まつり

 

書き手の体温を感じる文章は心に届く。本紙がお手本にしている、ニッポン手仕事図鑑編集長さんのブログに書いてあった。本紙も心がけたい。心がほかほか、もしくは熱くなる文章を押しつけでない程度にお届けしたいものだ。

 

神宮卒業論文 主役になれないウルトラマンたち

それを地で行く本に昨夜出会った。厳密に言えば少し前にその存在を知ったのだが著者の方がこちらのリクエストに応え送ってくださったのだ。小杉法子さん著「神宮卒業論文 主役になれないウルトラマンたち」。もちろん特撮ものではなく、六大学野球をこよなく愛する方による法政への肩入れ全開の観戦記である。著者も黒柴スポーツ新聞編集局長も法政出身と六大学野球ファンという共通点からお付き合いをさせていただいている。今回はいかにこの本が面白いかを披露しつつ、本紙との夢のコラボとして主要登場人物を所蔵の野球カードを使ってご紹介する。法政OBOGは必見です。

 

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3番中根、ピッチャー秋村

本の舞台は法政3度目の4連覇(1987年秋から)時代。本を資料に30回目の優勝当時のメンバーを並べてみよう。所属は本の出版当時。

1番センター横山(高鍋・主将、拓銀

2番セカンド平田(興南・4年、日本石油

3番ライト中根(東北・3年、近鉄

4番ファースト松井(学法石川・4年、日産自動車~中日)

5番キャッチャー鈴木(中京・4年、日立製作所~ロッテ)

6番レフト宮間(岩倉・3年、プリンスホテル

7番サード増本(高知・4年、日本生命

8番ショート畠山(桐蔭学園・4年、東芝

9番ピッチャー秋村(宇部商・4年、日本石油~広島)

 

本ではこれ以後の選手も随時紹介されている。

 

 

 

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※1993年版ベースボールマガジンのカードを使わせていただきました。本では中根仁が学生に大人気だったと紹介されています。

 

 

歯ぎしりさえ聞こえそうな臨場感ある文章

本紙編集局長が大学野球観戦デビューする前なので顔が浮かんだのは中根のみ。ただ、中根と秋村は野球カードが見つかった。ほかの選手も企業チームに進んでおり、実力者ぞろいだったことが分かる。しかし著者は超大物がいないこのチームのころから再び六大学野球観戦にのめり込んだ。チームへのまなざしは温かいがゆえに厳しさもあり、行間からは観戦中の歯ぎしりさえ聞こえてきそうだ。ここまで思い入れがあるって、すごい。

 

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※1993年版ベースボールマガジンのカードを使わせていただきました。本にはエース秋村謙宏が胴上げ投手になったくだりも出てきます。

歌あり、掛け声あり

本の面白さが増幅されるのが、六大学野球の応援の解説。学生席に一度行った方なら分かると思うがここでの応援は楽しすぎる。他人を応援する喜びを心から感じられる。六大学野球は音楽や歌と密接な関係がある。早稲田のコンバットマーチ、慶応のダッシュKEIO、法政のチャンス法政といった応援曲、スタンド一体で掛け声をする「ブロック」などが登場する。

 

ブラバン!六大学野球

ブラバン!六大学野球

 

 

 

 

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※1993年版ベースボールマガジンのカードを使わせていただきました。本では葛西稔の力投についても触れています。

もはやエンターテインメント

つまり六大学野球観戦は一つのエンターテインメントであり、単純にプレーだけを見に行くのではないのだ。こんなに楽しい世界があると知らずに法政に入ったが、志望校を決める段階ではうっすら六大学野球観戦は視野に入れていた。受験時代のファインプレーだった。ちなみに神宮で観戦していなければ法政の校歌も覚えていなかっただろうし愛校心もそこまで芽生えていなかっただろう。本を読んでいるとさっそく神宮の観客席に陣取りたくなってウズウズする。「頼む、抑えてくれ」「ここで決めてくれ」。祈るように、声を枯らして、手のひらがはれるまで手拍子を送った学生時代を思い出してしまった。

 

 

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※1993年版ベースボールマガジンのカードを使わせていただきました。本には1988年は7番大橋と8番瀬戸輝信の「瀬戸大橋打線」が記載されています。

法政ファン以外にもおすすめ

本には法政メンバーはもちろん、ライバルである他校の選手、例えば慶応の大森剛、早稲田の小宮山悟、明治の武田一浩、立教の長嶋一茂らも登場する。六大学ファン、プロ野球ファンにも資料として楽しめる。こう見たら六大学から相当の人材がプロ入りしている。実力の東都とも言われるが、六大学のプレーヤーも腕を磨いてリーグ全体を盛り上げてこれからもファンを獲得してほしい。プロ入り組にも注目。2016年は阪神の高山俊(明治)、巨人の重信慎之介(早稲田)が早速1軍で見られるかもしれない。

 

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※2001年版カルビーのカードを使わせていただきました。本では他校の選手にも「いやだな」と思われる存在として大島公一が紹介されています。

熱中するって素晴らしい

本は4連覇を成し遂げつつもそこまで世間に偉業が知らしめられていないと感じた筆者が記録を丹念にまとめ、思い出をぎっしり詰めて自費出版した労作だ。素晴らしい本に出合えてよかった。法政卒業生はもちろん、同時代に六大学に在籍した方々にはぜひ読んでいただきたい。本には野球愛のほかに、一つのことに熱中する楽しさがこもっている。それは若さゆえの特権ではない。年を重ねても純粋な気持ちは忘れたくないものだ。著者の熱い文章に感化されつい本紙も応援したくなりました。もし入手したい、読みたいという方がいらっしゃったら編集局長にご一報をお願いします。 

 

 

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