黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

書評

出会いをいかに生かすか~取手二高の名将木内監督とエース石田そしてリリーフ柏葉

人生に一度だけ、ワンポイントリリーフを頼めたら……そんなことを考えた。本棚で「永遠の一球: 甲子園優勝投手のその後」 (河出文庫)を見つけた。石田文樹。取手二高で全国制覇したピッチャーの物語を読んだ。名将・木内幸男監督が亡くなった後であるだけに、…

名コラムニストに必要な才能~黒田創さん「加藤博一」コラムを読んで

最近、セレンディピティーを大切にする気持ちでいられるのだが、またうれしい出合いがあった。文春野球コラム ペナントレース2020にこんな素敵な作品を見つけた。改めて「親父、すげえな」って思った…“56歳で他界”元大洋・加藤博一さんと最愛の息子の物語。…

甲子園のない夏に山際淳司「八月のカクテル光線」を読んで

甲子園のない夏である。それもずいぶん前に決まっていて、予定通りであるため騒ぎにもなっていない。ただぽっかりと、高校野球のファンの日常に穴をあけている。私はとりあえず、山際淳司氏の文庫本「スローカーブを、もう一球」から「八月のカクテル光線」…

85%は苦しみの日々~張本勲はなぜ3085安打できたのか

5月28日は張本勲が3000安打を達成した日だ。ことあるごとに川崎球場での豪快なその1打の映像が流れる。対戦投手は阪急の山口高志。山口対張本ならそりゃあのくらい飛ぶわなというくらい、高々と打球は飛んでいった。そして張本勲はヘルメットも高々と放り投…

トータルでまとめればいい~桑田真澄の理想の投球数とは

一つミスをしたら引きずる方だ。大事なのはその次、なのに。一つ一つ丁寧に作業をするのは長所だとは思うが……。そんな自覚があっただけに、偶然見かけた桑田真澄のインタビュー記事(「逆風を楽しむ野球人生だった。-桑田真澄」文・石田雄太さん、Number PLU…

人を引き付ける野茂英雄のひたむきさ~小松成美「遠すぎた甲子園」を読んで

2020年5月2日で、野茂英雄がメジャーデビューしてから25年だという。新聞記事で見た。野茂英雄のメジャー初勝利やノーヒットノーランのニュース、苦労の末たどり着いた日米200勝などなど、その都度胸踊らせたなと思う一方、こうも思う。やはり一番似合ってい…

心の隙間は誰にもある~北原遼三郎「完全試合」黒い霧事件・田中勉の章を読んで

ここのところ黒い霧事件に関わった元プロ野球選手について書いてきた。前回は池永正明が出てくる高山文彦「怪物の終わらない夜」(単行本「運命」に収録)を取り上げた。その中で混乱してしまった。池永に八百長依頼の現金を渡した元西鉄投手の田中勉の処分に…

黒い霧事件で消された西鉄ライオンズの名投手・池永正明~高山文彦「怪物の終わらない夜」を読んで

前回、後藤正治さんの「不屈者」に収録されている「幻の史上最速投手」を取り上げた。黒い霧事件に巻き込まれた東映フライヤーズの元投手、森安敏明の物語だ。今回はそこから派生して、同じく黒い霧事件により大好きな野球を奪われた西鉄ライオンズの元投手…

幻の史上最速投手・森安敏明の人生は幸せだったのか~後藤正治「不屈者」を読んで

先月、この黒柴スポーツ新聞がご縁となり、2冊の本が売れた。澤宮優さんの「あぶさん」になった男 酒豪の強打者・永渕洋三伝 (角川書店単行本)と、沢木耕太郎ノンフィクションI 激しく倒れよ(文藝春秋)。いずれも黒柴スポーツ新聞で取り上げさせていただい…

有森裕子が求めた走る意味、生きる根拠~後藤正治「ロード」を読んで

昨日、沢木耕太郎の「儀式」を取り上げた。儀式の中では次のくだりが心に残った。栄光を手にすることは非常に難しい。しかし、失った栄光を忘れ去ることはもっと難しいものなのだ。そして、さらにいえば、失った栄光を再び手にすることの難しさは、それらの…

ジャンボ尾崎がつかんだ、勝利より大切なものとは~沢木耕太郎「儀式」を読んで

沢木耕太郎のノンフィクション「儀式」を読んだ。「激しく倒れよ」に収録されている。主人公は尾崎将司。プロゴルフの世界で活躍した「ジャンボ尾崎」だが、彼は元々プロ野球選手だった。黒柴スポーツ新聞編集局長はゴルフ知識に乏しいのだが、元プロ野球選…

最年少2000安打の榎本喜八は引退後なぜ走り続けたのか~沢木耕太郎「さらば 宝石」を読んで

昨日、西本幸雄元監督生誕100年を勝手にお祝いしてブログを書いた。1960年に大毎オリオンズを率いて出た日本シリーズでスクイズを失敗。それがオーナーとの決別につながったことなどを書いた。 tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com このエピソードが出…

悲運の名将は信念の人~勝手に西本幸雄元監督生誕100年読書企画

4月25日は故・西本幸雄監督生誕100年の節目だった。西本監督を慕う山田久志やオリックス球団の企画で、京セラドームでメモリアルゲームが行われる案があったが新型コロナウイルスの影響で開催できなかった。メモリアルゲームどころかプロ野球自体が行われて…

努力で運命を変える~野村克也「この一球」を読んで

プロ野球のレジェンド野村克也が亡くなった。まだまだメディアが一報しか書いていない。2月11日、亡くなったことが分かったという書き方からはまだ取材が不足している印象も受ける。今後詳しく報じられるだろうがわが黒柴スポーツ新聞ではそれとは一線を画し…

野球殿堂入り田淵幸一を支えた順応力~ホームランアーティストの美学と力学を読んで

2020年に野球殿堂入りする方々が発表された。元慶大監督の故前田祐吉氏、元早大監督の故石井連蔵氏、そしてホームランアーティストの田淵幸一氏(以下敬称略)だ。慶応、早稲田、そして法政。六大学野球ファンにとっては伝統と実力を誇りたくなる表彰となった…

回数に縛られない~ライオンズの生き証人、東尾修「ケンカ投法」を読んで

練習でも何でも、何回やろうと目標を作るタイプだ。しかし回数じゃないんだ、とバッサリやられた。東尾修著「ケンカ投法」(ベースボール・マガジン新書)に書いてあった。何球投げるかということが大事ではない。肝心なのは中身だ、という。 ケンカ投法 (ベー…

続かない苦しい努力はしない~中日・山本昌「133キロ怪速球」を読んで

2020年は読書に力を入れよう、そう考えている。年末にいくつか読み、元日も続きを読んだ。読み終えたのはこれ、山本昌著「133キロ怪速球」(ベースボール・マガジン新書)。私はソフトバンクファンだから元日から山本昌じゃなくても、とも思ったが、なかなかた…

共感されるうれしさ~「あぶさんになった男 」など紹介料6円で得たもの

ざっくり言えば自己満足のために始めたブログではあるが、少しは人の楽しみになっているかと実感できる出来事があった。 具体的には本が売れた。城山三郎「少しだけ、無理をして生きる」 少しだけ、無理をして生きる (新潮文庫) 作者: 城山三郎 出版社/メー…

若林忠志「七色の変化球」の背景~野球好きの直木賞作家、阿部牧郎氏をしのんで

直木賞作家の阿部牧郎氏が2019年5月11日に亡くなった。野球好きの私は訃報記事を見た時、阿部牧郎という名前から「以前この人が書いた野球の本があったな」とは思ったものの、恥ずかしながら直木賞作家とは知らなかった。それでも阿部牧郎氏は大の野球ファン…

プロ野球平成最高の試合は?~「10.8  巨人VS中日  史上最高の決戦」を読んで

平成最後に買ったノンフィクション、鷲田康著「10.8 巨人VS中日 史上最高の決戦」を堪能した。史上最高の試合は野球ファンそれぞれにあろうが、この10.8は確かに特筆すべき試合であることは間違いない。個人的には平成最高のゲームだと思っている。 10・8 巨…

やさしい目つきを大切に~平成の終わりに山際淳司を読む

ゴールデンウィークに時間があったら、と本を買っておいた。久々の野球古書漁りだ。平成最後の的なフレーズは食傷気味で、自分は使うまいと意固地になっていたが、素直に平成を振り返りたい気持ちになり、そんな本はないかと探してみた。そして山際淳司を選…

箱から出なくてはいけない~城山三郎「少しだけ、無理をして生きる」が突き刺さった件

久しぶりに古本屋に出掛けた。目的は野球本を探すこと。安く、かつ、面白い本を買えるか。ちょっとしたゲーム感覚でもある。まず文庫本で野村克也の「エースの品格」を見つけた。以前から興味はあった。108円だし、この際買おうかと手に取った。 その本の近…

野球ファンなら読んでおきたい「勇者たちへの伝言」~人生は選択の連続、だからこそ勇気を

鈴木啓示の「投げたらアカン!」を買うにあたり、Amazonを利用。その際ほかのおすすめ商品で「勇者たちへの伝言 いつの日か来た道」(増山実氏著、ハルキ文庫)にビビビと来た。勇者たちへの伝言 いつの日か来た道 (ハルキ文庫)作者: 増山実出版社/メーカー:…


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