黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

堂上直倫に漁夫の利はあるのか~中日ショートは根尾でも京田でもなく

忘れられないシーンがある。生まれて初めて甲子園で阪神戦を見た帰り。「アイツすげえな」。先輩が言った方向には、タイガースのレプリカユニホームだらけの阪神電鉄プラットホームに、1人ドラゴンズのユニホームの男がたたずんでいた。背番号1。背中にはローマ字で「DONUE」。



恐らく坂本勇人のユニホームなら抹殺されかねない雰囲気の中、背番号1、DONUE。ドラゴンズファンだからこそ許された行為だったに違いない。基本巨人びいきで、甲子園観戦体験のためビビってタイガースのユニホームを着ていた私とは大違い。その男は今も堂上直倫を応援しているだろうか。堂上の背番号が1から63になった今でも……

久々に堂上の見出しを見つけた。キャンプの模様を伝える中日スポーツの記事。「堂上直倫、ついに神主打法開眼 京田&根尾と三つどもえ遊撃争い」。そう、堂上はただでさえ激しいショートの定位置争いに身を投じていた。

話題や期待感では根尾昂が一歩リードか。甲子園を沸かせてドラフト1位での入団は、あの立浪和義を思わせるスーパールーキーだ。立浪和義をショートで使うため、星野仙一監督は主力の宇野勝をセカンドにコンバートまでした。
ショートにはすでに京田陽太がいる。宇野勝までの盤石さはまだないのかもしれないが、京田は2年連続で140試合以上出ていた。だから、いくら根尾が超高校級とはいえ、簡単に譲るつもりはなかろう。そもそも、簡単に譲るプロ野球選手なんているはずがない。 

ドラフトで根尾を獲るということは、当然ショートのポジション争いは想定内。それが京田のコンバート含みなのかは分からないが、中日には中日の論理があったのだろう。逆に、岐阜出身のゴールデンルーキーを指名しない選択肢など存在しなかった。

 
 
でも、こんなことを言っている人がいた。
「京田、根尾のどちらかが二塁を守っている可能性だって多いにあるし、特に根尾はどのポジションを守ってもおかしくない。ただ、こういう時は気が付いたら堂上がショートを守っているということも起きる」
発言の主は森脇浩司。2018年まで中日のコーチだった人物だ。 
 
当該記事はfull-countの【森脇浩司氏の目】根尾、京田の遊撃サバイバル「こんな興味深いポジション争いはない」。そう、ものすごいポテンシャルの新人と、結果を出しつつある期待の若手がポジション争いをするのだから、面白いに決まっている。人間模様としても興味深い。やっている本人たちは大変だろうけれど。 
ここに堂上直倫を入れるあたりがニクい。というか根っからのドラゴンズファンも思っていたはずだ。堂上を忘れてはいけない、と。根尾ほどではなかったかもしれないが、地元の強豪校・愛工大名電から中日入りした堂上だって、ものすごい期待を背負っていた。父は堂上照、兄は堂上剛裕。一家3人ドラゴンズ入団歴がある。 
 
そんな堂上直倫もはやプロ13年目。3けた出場のシーズンもあったが、荒木や井端のような一時代を築くまでには至らずここまできた。そこへ将来有望な京田陽太という若手が台頭してきて、今度はゴールデンルーキーの根尾昂ときた。これでもかこれでもかとハードルが上がっていく。 
 
そんな状況は、アラサーの堂上とは年齢こそ違えどアラフォーにはぐっとくるものがある。下が育ってきたらちょっとずつ活躍の場はなくなっていく。気づいたらずっと同じポジション…なんてこともあろう。そんな時こそあえて下と張り合いたいものだ。まだまだ負けんぞ、と。 
 
堂上とて、だてにプロで10年以上飯を食っていないはずだ。それにあの落合博満監督時代にプレーした経験は、京田にも根尾にももちろんない。荒木、井端は越えがたい高い壁だったに違いないが、その一挙手一投足を間近で見ていたわけだ。元々、落合監督にも守備のセンスは認められていたようだ。
土壇場力

土壇場力



であればあとはバッティングか。試行錯誤の結果、奇しくも落合監督をほうふつさせる神主打法(ではないと本人談)にたどり着いたらしい。写真を見たが、リラックス感が出ていていい感じだ。何度も書くがプロ13年目なので、このくらいの余裕はあっても全くおかしくない。

成果は少しずつ出ているようで、森脇浩司が言っていた「気がついたら堂上が」という状況があるかもしれない。というか、そうならねばそろそろ堂上も厳しい状況に追い込まれかねない。根尾や京田との争いである一方、自分がドラゴンズの中で置かれている状況との戦いでもあろう。

と考えると、根尾や京田も頑張ってほしいが堂上にも活躍してほしいなと思う。誰か1人選ぶなんて難しいなあ、なんて、与田監督でもないのに悩んでいる。ドラゴンズファンでもないのに、どうするのかなあとヤキモキしている。

かつて堂上の背中で輝いていた背番号1は2019年から京田が付ける。高木守道福留孝介も付けた栄えある番号だ。堂上は1を剥奪されたと書いてある記事も見たが、とにかく兄も付けた63を背負っている。その63が躍動する姿を見たい。この際、ショートでなくてもいい。どこかで堂上が必要とされなければ居場所がなくなりかねないのだ。
崖っぷちに置かれた男の底力が見たい。それはドラゴンズファンでなくても胸を熱くする瞬間だろう。ゴールデンルーキーと新人王経験者と崖っぷちの男森脇浩司ならずともこんなに興味深いポジション争いは久々だ。世間的には根尾、根尾だろうが、黒柴スポーツ新聞は密かに堂上推しでいきたいと思う。もはや気持ちはあのプラットホームの背番号1の男と同じなのである。

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正装でスイッチを入れる~日本ハム移籍の金子弌大が試合用ユニホームに込めた思い

日本ハムに移籍した金子弌大(ちひろ)が、初めての投球練習にビジターの試合用ユニホームを着用したという記事を読んだ。さすが日刊スポーツ。目の付け所が秀逸だ。私は金子弌大のように、自分で「スイッチを入れる」人が好きだ(本日のカット用広告は、金子が移籍間もないためオリックス系で誠にすみません!)。

金子千尋の変化球バイブル ハンディ版

金子千尋の変化球バイブル ハンディ版



日刊スポーツの見出しは「日本ハム金子おしゃれだから?“正装”初熱投45球」となっていた。金子はおしゃれらしい。だが、金子弌大が練習用ユニホームではなく試合用を選んだのは、この一年やってやろうじゃないか、という気持ちの表れに違いない。

曲がりなりにも元オリックスのエース。野球協約を超える大幅な減俸をのむかどうかよりも、必要とされる所で輝きを取り戻すことが金子には重要だったのではないか。エースが必要としたのはお金ではなくプライドだったように思う。だからこそ、気持ちを引き締める意味合いがあった。

私は金子弌大みたいに素晴らしい実績はないし、野球選手でもないのだが、きょうは頑張りたいなとか、きょうは気持ちを込めたいなという日はわざわざスーツを着た時期がある。

別に「正装」とはスーツに限らない。気持ちを引き締めるアイテムなら何でもいいのだ。お気に入りのネクタイ、おろしたての革靴。女性ならネックレスでもスカーフでも、「よし!」とちょっと背筋が伸びちゃうアイテムはあるのではないか。

それをとっておきの日に身に付ける。重要なアポがある、プレゼンがある、締め切りの日、大切な人に思いを伝える日、入社や異動初日などなど……。そのための正装にはすごく意味があると思う。

というわけで、やる気満々の金子弌大には要注意だ。ここまで書いてきてなんだが、私はソフトバンクファン。金子には西武戦あたりで活躍してもらい、ソフトバンクを側面支援していただきたいと思う。
さて、あなたにとっての正装は何だろうか? 私は普段からスーツを着ているので、きょうは!という時はお気に入りのシャツやネクタイでスイッチを入れようと思う。それでは、一緒に頑張りましょう。

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いい時の形を覚えておく~DeNA三浦大輔コーチが説くセルフメンテナンスの重要性

ある仕事がうまくいったとする。それが本当に実力からであれば、もう一度できるはずだ。いや、何度でもできるはずだ。自分の「形」を持っている、というのはそういうことではなかろうか……そんなことを、横浜DeNA三浦大輔コーチの記事を見て思った。その日刊スポーツ記事の見出しは「DeNA三浦コーチ始動『いい時の歩幅覚えろ』」。

踏み出せば何かが変わる

踏み出せば何かが変わる


三浦大輔コーチがキャンプでアドバイスしたのは投球時の歩幅。いい感じで投げられた時の歩幅はどのくらいなのかを、しっかり把握しておこうというものだ。

近年、投手交代時にピッチャーがマウンド上でやるアレのことだろう。プレートから一歩、二歩……と足の大きさで距離を測って、ある程度の所でガッガッ!と蹴って掘るアレ。踏み込むポイントを軟らかく耕しているのだろう。ちなみに横浜DeNAのルーキー上茶谷は「6歩半」と記事に書いてあった。

それが好調時のバロメーターになる、裏返せばそれができていない時は修正の必要があるということだ。そのためには普段から、自分がどのようなフォームで投げられているか、客観的に見られる力も必要だ。セルフメンテナンスはできるようになっておきたい。

ただただ力任せに投げて抑えていても、それでは出たとこ勝負。たまたま打ち取れただけだ。そうではなく、なぜ打ち取れたかを理解していないと、次もうまくいかない。自分はきちんと理想のフォームに則って投げている。そうやって自信を持ってボールを投げたいものだ。
BBM 2009 2nd Version SOP12 横浜ベイスターズ 三浦大輔

BBM 2009 2nd Version SOP12 横浜ベイスターズ 三浦大輔


ある人が興味深いことを言っていた。いい時の分析は案外されていない、と。確かにうまくいかない時の反省はよくやる。でも、うまくいった時こそ、その理由を確かなものにしないと成果があやふやなものになってしまう。高度成長期に業績を伸ばした企業あるあるかもしれないが。

自分自身も、うまくいった時の分析は足りていない。ただ満足して終わっていた。これではいけない。小さな成果でも、それがなぜできたのかを確かめる。そうやって実績を積み重ねて、小さな自信を増やしていく。実はそれが成功への近道なのかもしれない。

うまくいった時の形や感覚を大切にせよという三浦大輔のアドバイスは何と的確だろうか。こんなコーチがいて横浜DeNAの選手はラッキーだ。三浦大輔はきっといいコーチになるんだろうな、そのうちDeNA投手陣が充実するのではないかなと想像している。

黒柴スポーツ新聞も、アクセスが伸びた時はただやったねと喜ぶのではなく、どのあたりが読者のためになったのかなぁと分析しよう。ただの自己満足にならないように。まずはうまくいった時の自分の「歩幅」を測ることにしよう。

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2019年注目の背番号18と言えば?~ルーキー吉田輝星とエース菅野智之とベテラン松坂大輔

やはり背番号18は特別感がある。特に2019年はこの3人に注目したい。まずは今をときめく吉田輝星。日本ハムのドラフト1位である。



実力もさることながら、人気がある。先日、吉田と比較しながら同じくドラフトを経て入団した柿木蓮の記事を書いたのだが、短時間でまあまあの人数に読んでいただいた。我ながら書き方がよかったのかと悦にいってしまったが、何のことはない。その日は日本ハム恒例のシャウエッセン系のイベントがあり、栗山英樹監督がフォークに刺したウインナーを食べるていで、吉田輝星が大きく口を開ける模様がニュースで流れたのだった。たまたまそのタイミングでこの黒柴スポーツ新聞に吉田輝星と柿木蓮のことを書いたために、アクセスが好調だったらしい。まぁ、ある意味勝負強いのだが。
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まだ黒系のファイターズユニフォーム姿しか見ていないのだが、率直に似合っていると感じた。18という数字がビジュアル的にまだやや大きく見えるのは、プロで実績がないからだろうか。それを除けば決まっている。端正な顔立ちがユニフォームに負けていない。 
先日の記事では、柿木蓮と吉田輝星を相乗効果で伸ばそうという日本ハムの巧みさを紹介したのだが、早速その手の記事を発見。2軍の加藤コーチが柿木の状態を「吉田よりいい」と評したのだ。吉田や柿木にしてみればいちいち反応していたら疲れてしまうだろうが、プロ野球ファンとしてはいちいち反応してしまう。2人には無理せず、まずはプロの水に慣れてほしいと思う。 
注目したい2人目の背番号18は菅野智之。自他ともに認める巨人のエースだ。2年連続の沢村賞は安定感の証し。2018年に記録した、史上初のCSノーヒットノーランは圧巻だった。ただ、その後のファイナルステージ、広島戦に登板しなかったのだけは残念でならなかった。戦力的には広島が充実していたから巨人が日本シリーズに進む可能性は低かっただろうが、エースと呼ばれる男が大一番に出てこなかったのは寂しい限りだった。 
巨人は杉内俊哉が入団後に背番号18を付けたのだが、けがに苦しんでしまった。やはりエースナンバーがくすぶっているチームは優勝なんてできない。杉内俊哉が2018年を最後に引退し、同時に菅野智之が引き継ぐことになって、背番号18は今最もふさわしい人の元にやってきた。 
菅野智之がすごいことはもう誰もが知っている。ゆえに2019年は優勝争いの中でエースの力投が見たい。チームを上昇気流に乗せる。あるいは負けてはいけない試合は絶対に取る。それこそがエースの仕事。単に15勝とか20勝するだけでエースは名乗れない。圧倒的な存在感。負けない人。頼れる人。そういう意味では背番号18ではなかったが、ソフトバンクの攝津正はいまや少なくなったエースの一人だった。
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そして最後は中日の松坂大輔。やはりこの男は背番号18がよく似合う。full-countの記事によると、幼いころ、松坂大輔桑田真澄に憧れたそうだ。このキャンプイン前夜、松坂大輔は背番号18のユニフォームをベッドの上で広げたという。この描写は松坂大輔の「ワクワク感」ならびに野球少年の心がビシバシ伝わってくる。背番号18への思い入れは相当なものだろう。 
個人的にはテスト入団を経て入った中日で背水の陣の状況を表す背番号99も、松坂の生きざまを象徴していて好きだった。9+9で18というのも遊び心がある。でも、やっぱり。松坂大輔は背番号18を付けて燃え尽きてもらいたい。 
松坂大輔は日米通算で170勝だが、中日のレジェンドの一人、杉下茂氏が松坂の名球会入りに太鼓判を押したと東スポ記事で読んだ。10勝ペースで最短3シーズン。松坂は38歳だからいけるのかは怪しい。2018年は6勝だったからさらに上積みしないといけない。2けた勝つということは1年間、ローテーション入りしていることが前提だ。若き日の押しまくる投球スタイルが鳴りを潜めた今、2けた勝つのは難しいのではと思ってしまう。それでも松坂が勝つ姿を一つでも多く見たい。そう思わせてくれる投手だ。 
期待のルーキー、吉田輝星。脂が乗りきった菅野智之。そして再び輝きを放ちつつある松坂大輔。背番号18を身に付ける状況は三者三様である。しかしこの3人の中で、結果を残した人がいるチームが2019年シーズンの上位にいると想像している。やはり背番号18は輝いていないといけない。紹介できなかった他チームも含め、エースナンバーを付けた選手たちを注目しよう。

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2度目の引退試合はアリなのか~岩瀬仁紀と荒木雅博が3月に再登場

水を差すのは承知している。だが言いたいことを書かねば、ブログをやる意味がない。それをご理解いただいた上でお読みいただきたい。中日が誇るレジェンド、岩瀬仁紀荒木雅博引退試合が3月にある(2日=岩瀬仁紀、3日=荒木雅博)が、「2度目」の引退試合は必要なのだろうか?

 
というのも、2018年10月13日に岩瀬仁紀荒木雅博は公式戦に出た上で、引退セレモニーを行ったからだ。冠を付けたかどうかは別として、これは引退試合である。 
公式戦での引退試合はさまざまな成約がある。いわゆる暗黙の了解。少なくともピッチャーは奪三振で花道を飾らせる。これを試合に支障のない場面でやらねばならないから、起用する監督も大変だ。
 
岩瀬仁紀の場合は盟友の福留孝介が打席に立った。そしてきちんとスイングして三振に倒れた。福留は役者だった。きちんと切られた。岩瀬仁紀の引き立て役に徹したのはさすがである。
 
荒木雅博の場合は何度か打席は保障されており、荒木らしいヒットを放ってファンを喜ばせた。盗塁を試みて刺されたのはご愛敬である。引退試合だからといってすべて花を持たせてもらえるわけではない。公式戦ならなおさらだ。
 
その点、オープン戦での引退試合は気が楽だ。調整期間だから影響は限定的。球団としても客足が見込めるから興業的にもメリットがありそうだ。
 
理想で言えば功労者には真剣勝負で終わってほしい。その意味では中日の二人のレジェンドは美しく終わったはずだ。
 
それがまた3月に引退試合ときた。公式戦で一役買った阪神ナインって一体……ちびまる子ちゃん風に言えば「顔にタテ線」ではなかろうか。
 
やはりオープン戦での引退試合というのは、諸事情により真剣勝負の公式戦で引退を飾れなかった功労者へのはなむけでやるのがよいと思う。
 
例えばソフトバンク。一時代を築いた攝津正と、スーパーサブ城所龍磨のセレモニアルピッチが3月にある(2日が攝津、3日が城所)。ソフトバンクの主な戦力外通告日本シリーズ制覇翌日というまさかのタイミングだったため、攝津も城所も引退試合どころではなかった。二人とも現役続行を模索したが願いはかなわなかった。
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ゆえにファンはもう一度、攝津と城所のユニフォーム姿を見たいのだ。その思いは、岩瀬仁紀荒木雅博を愛するドラゴンズファンとて同じなのだろうが、岩瀬と荒木は引退試合を飾れた。今回はその違いを言いたいだけだ。
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まあ、これが中日の流儀なのかもしれない。あの山本昌も引退シーズン翌年3月に引退登板。その日のための1日契約だった。ということは岩瀬仁紀荒木雅博も……
山本昌という生き方

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私は特に荒木雅博は好きだからまた姿を見られることはうれしい。何が言いたいかと言えば、引退試合がうまくいった場合はそれで終わった方が価値があるし、引き立て役を引き受けてくれた人もやったかいがあるのではないかと思うということだけだ。
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ソフトバンクのセレモニアルピッチと言えば元エースの斉藤和巳。現役晩年は故障でマウンドに立てなかった。もはや引退試合どころではなかった。そして、メモリアルピッチ。キャッチャーは城島健司だった。
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見慣れたダイナミックなフォームは健在だった……はずだったが、力んだか、投球は大きくワンバウンド。これでは終われない。2球目、またもバウンド。3球目もバウンド。届かない。これが現実であり、だれもが斉藤和巳のリハビリとの激闘に思いを馳せた。そして、ようやく4球目が城島健司のミットに収まった。
 
引退試合ができる選手は幸せだ。引退を自分で決断できる選手はそうそういない。最後をグラウンドで迎えられる人は幸せだ。それに立ち会えた人も感無量だろう。引退を生で見られるのは格別だ。私は2018年、中継を通じても何度も涙した。後藤武敏小谷野栄一。どちらもいい雰囲気だった。それだけに、もし松坂大輔が涙ながらに花束を渡した後藤武敏がまた引退試合をやったらどう思うかな……と言いたいのだ。ちょっとケチ臭いかもしれないが。
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なお、引退企画はその選手の記念グッズをゲットできる貴重な機会である。岩瀬仁紀荒木雅博のは分からないが、攝津と城所はTシャツがある。攝津は投球フォーム、城所は笑顔のイラスト。ちゃんと作り分けしているのが素晴らしい。
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何やかんやと書いてしまったが、日程も決まってファンも楽しみにしてやるからには、岩瀬仁紀荒木雅博には有終の美を飾ってもらいたい。心からそう願っている。

ナゴヤ球場23年ぶり1軍戦開催で名場面列挙~ドラゴンズファンに歓喜のファンファーレを

2019年、ナゴヤ球場で23年ぶりに1軍戦が組まれるという。3000席しかなく、プラチナ化は必至という日刊スポーツの記述を見て「?」と思ったら3月7日=オープン戦だった。

 
せっかくなのできょうはナゴヤ球場の試合について書いた記事を紹介する。まずはノーヒットノーランを逃した斎藤雅樹から落合博満が放ったサヨナラホームランの記事。大好きな吉村功アナウンサーの名実況を書き起こしてみた。
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ナゴヤ球場は歴史的な試合がすごく似合う。近藤真一がプロ初登板初先発でノーヒットノーランを成し遂げたのもナゴヤ球場だった。先日この記事に急にアクセスが集まったのは何かあったのだろうか?
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その前は吉村禎章と激突した栄村忠広の記事が急に注目された。平成が終わろうとしている今、もろもろ振り返りモードなのか? ちなみに栄村の件はナゴヤ球場ではなく札幌・円山球場
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記事にはしていないがナゴヤ球場と言えばあの10.8の舞台。私は当時修学旅行の真っ最中だったのだが、クラスメイトと、バスの中や宿の部屋のテレビに釘付けになっていた。あ、思い出した。その試合で立浪和義がヘッドスライディングした件については先日書いたのだった。
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ドラゴンズファンからしたら「10.8じゃねえだろ、ナゴヤ球場ではドラゴンズも優勝してるだろ」となるだろう。ご安心あれ。黒柴スポーツ新聞は1988年の中日優勝試合も書いている。胴上げ投手は郭源治吉村功アナウンサーがまたもや登場する。あの名実況をもう一度。
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ナゴヤ球場といえばパロマの文字が印象的だった。通いなれた方にはぜひナゴヤ球場トリビアを聞きたいものだ。一度行きたいなと思っているうちに立派なナゴヤドームができてしまった。
ナゴヤドームで待ちあわせ

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ちなみにうろ覚えだったが調べてみたらナゴヤ球場は中日スタジアム時代の1951年、火事で全焼したという。野球場が全焼とは相当な火事だったのだろう。動画をあさっていたら1990年にも火事が……。燃やすのは闘志だけにしてほしい。
ドラゴンズ裏方人生57年

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そしてナゴヤ球場といえばホームランが出た時のファンファーレ。限定企画かもしれないが、ナゴヤドームでも流れることがあるみたいだ。素晴らしい。何とも言えない哀愁がある。
2019年はスーパールーキーの根尾がいる。根尾が順調なら3月7日のナゴヤ球場での試合にショートを守るかもしれない。これは貴重だ。興味がある方はぜひナゴヤ球場を堪能されたい。東海地区の方がうらやましい限りである。

一人一人が当事者意識を持ったチームは強い~ソフトバンクがキャプテン廃止

チームの精神的支柱、キャプテン。いざという時に頼りになる存在だ。が、キャプテンが有能であればあるほどチームをが依存体質になる恐れがある……。そんな懸念をものともせず、チームの改革の一貫でソフトバンクがキャプテン制度を廃止した。なかなかの意識の高さで、注目している。



工藤公康監督就任以来、キャプテンは内川聖一が務めてきた。確実性も勝負強さもある好打者。大黒柱としてチームを牽引するのにはうってつけだった。

だがこの2年は内川聖一が万全でなかったためキャプテン不在の時期があった。それでもソフトバンクは2年連続で日本一になれた。まさにチームは成熟期を迎えている。

一方で、2019年は松田が36歳、中村晃は30歳、柳田悠岐も31歳と、主力はじわじわ「高齢化」している。まぁ、このあたりはまだまだ元気なのだが。であればなおのこと、次の世代を着々と育てたいところだ。

キャプテン制度廃止はそのあたりの、底上げを狙ったものと解釈できる。コーチ・監督会議後に工藤公康監督はこんなことを言っていた。
「選手一人一人がしっかりと自覚を持って、自分がキャプテンだ、ぐらいの強い気持ちで一年間、戦ってもらいたい」(西日本スポーツ記事より)

まだまだ内川の代わりになる存在には誰もなり得ない。でも、一人一人が「おれが」と思うことは大事だし、モチベーションにつながると思う。職場でも仕事がデキる人がいたらついつい甘えてしまう。あの人がいるから大丈夫、何とかなる。何とかしてくれるはず……。そう思っていてはいつまでもたっても依存体質のままだ。

内川聖一が不在でも柳田悠岐という柱はあった(柳田が離脱すると本当に痛いのだが)。だから内川の次は柳田がキャプテンになってもいいのかもしれない。だが、柳田はいろんな意味で規格外だから、ひとまず4番を務めることでチームを引っ張るのがベターではなかろうか。

そして、攝津正引退後は千賀あたりにエースになってもらいたい。13勝とかではなく、15勝が最低ライン。17勝はほしい。そして、自分から名乗るのではなく、周りから「エースは千賀」と言われるようになってもらいたい。アメリカに行くのはそれからでもよくないか。千賀自身は「旬」で渡米したいだろうけれど。

好不調の波さえなければ松田宣浩のキャプテンもいいかなと思うのだが、今年はキャリアハイの成績を目指すらしいので、それをもってチームを引っ張ってもらいたいと思う。

キャプテンは現場の中心だから、いることには意味がある。ソフトバンクがキャプテン制度をなくしたのは、一人一人がさらに高い意識を持つようにするためだ。これができるのはチームが安定しているからだ。下位から上位を目指すチームには無理だろう。
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おまかせではなく、一人一人が率先してチームを引っ張る。それができた時はおのずと、ソフトバンクの3年連続日本一が見えてくる。キャプテンをあえてなくした、新しい形のホークス像が楽しみだ。

商業捕鯨もマルハも復活、横浜DeNAベイスターズが70周年~記念ユニフォームは輝くのか

日本がIWC脱退を決め、商業捕鯨の再開に舵を切ったのは昨年末。それに合わせたわけでもなかろうが、マルハ(マルハニチロ)がプロ野球のスポンサーに返り咲いた。かつてマルハは大洋漁業として「大洋ホエールズ」を運営していたのだが、その流れをくむ横浜DeNAベイスターズが創立70周年ということで、マルハニチロもスポンサーになったそうだ。これは面白い。


記念ユニフォームも発表された。胸の「B」は大洋ホエールズで使っていたWの文字をアレンジしたもの。1950年の創設時のWのようだが、個人的にはワシントン・ナショナルズのようなWも好きだ。
1950年の復刻ユニフォームは3月10日、当時本拠地があった下関で開催される対広島戦で披露される。なかなか渋いユニフォームだが、モデルになった筒香嘉智はあまり違和感ない。似合っている。
大洋ホエールズ誕生前!林兼商店野球部から大洋漁業野球部まで

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DeNAなんて時代の最先端を行く企業だから新しいことにしか目がいかないかと思うのだが、ちゃんと伝統を意識している。歴史を大事にする姿勢は好感が持てる。歴代ベストナイン選出の企画もあるらしい。誰が選ばれるかすごく楽しみだ。
日本のプロ野球チームを眺めたら、まさに日本の産業史そのものだ。新聞社、映画会社、鉄道、食品・飲料、流通、そしてIT。見事である。この中に捕鯨もあったわけだ。元オーナーの中部謙吉が「鯨の一頭も余分に獲れば選手の給料は払える」と言ったらしいが、捕鯨が栄えていたことをよく表している。
じゃあマルハニチロDeNAの間に球団の株を持っていたTBSは今回の企画に入らないのかとは思うが、TBSはメディアだから、歴史のあるマルハニチロDeNAと一緒にやるというのが話題があってよいのだ。
今や横浜スタジアムは人気スポットの様相。DeNAの球団経営が上手なのだろう。弱い時代にはあか抜けないなと思った青いユニフォームが今ではちょっとオシャレに見えるから不思議なものだ。人間の脳は都合がいい。
復刻ユニフォームがカッコよく見えるかどうかはDeNAナインの頑張りにかかっている。2018年は所沢移転40周年の西武ライオンズが優勝した。創立70周年のDeNAがどんな成績になるのか注目だ。

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勝つことで自分の殻を破る~小原怜、大阪国際女子マラソンで惜しくも2位

大阪国際女子マラソンで小原怜(天満屋)が2位になった。レースを見て、勝つことを知っているのはアドバンテージだということ、そして勝負勘を鍛えるのは場数を踏むしかないということを再認識した。

天満屋女子陸上競技部の寮ごはん

天満屋女子陸上競技部の寮ごはん

小原は五輪代表選考のMGCに出場する権利を持っている有力選手。名古屋ウィメンズマラソンで1秒差で3位となり、オリンピック代表を逃したことはあまりにも有名だが、都道府県対抗駅伝では岡山県代表で快走したことがある。力があるのはだれもが認めるところであり、あとは「勝つ経験」をするだけだ。

そんな小原怜にとって大阪国際女子マラソンは願ってもない展開ではなかったか。ペースメーカーが外れて30キロ、アフリカ勢との計3人で先頭を形成していた小原が先に仕掛けた。

ゼロから始めるフルマラソンの本 (趣味の教科書)

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レース前に「自分の殻を破る走りをしたい」と語っていただけに、この積極的な姿勢は解説の増田明美高橋尚子も評価した。

だが、30キロでのスパートは爆発力はなく、バイクリポートの千葉真子の懸念が的中。アフリカ勢のペースメーカーのようになってしまい、35キロまで膠着状態が続いてしまった。

ケニア! 彼らはなぜ速いのか

ケニア! 彼らはなぜ速いのか

恐らく小原自身も「このままではこれまでと一緒だ」と思っただろう。35キロで再び仕掛けるも、優勝したサドを振りきれなかった。逆にジリジリとサドに差を付けられ、7秒及ばず2位でゴールした。

今までは周りにレースをコントロールされる中で走っていた印象だから、自ら2度も、しかもきつい30キロ、35キロと2回も仕掛けたのだから、そこは評価されるだろう。しかし、仕掛けて離せなかったのは心のどこかに、逃げ切れないのでは?という自信のなさがあったのではないか。

RUN女子入門 自分を変えるランニング

RUN女子入門 自分を変えるランニング

私はマラソン未経験だが小原怜の気持ちがすごく分かる。一番になる、というのはやはり特別な経験だから、それを経験してこそ自信が芽生える。その積み重ねが風格になっていく。私は一番になるという経験が少ないから、そこはもっと貪欲に狙っておけばよかったかなと思っている。

だからこそ、ついつい小原怜に感情移入してしまった。頑張れ、小原。このまま逃げ切ってくれ。あるいは、何とか追い付いてくれ。そう何度も願ったがかなわなかった。小原にほんの少し、もう少し自信があったなら勝てた。願望も込めてそう見ている。

小原怜自身が「不完全燃焼」と言っているので、仕掛けたら逃げ切れるだけの脚力を付けるなど課題は見えたと思う。あとはそこを補うのみだ。

では、マラソン選手みたいに大きな勝負がない人が自己肯定感を高めるにはどうしたらよいのだろうか。考えてみたが、できることを一つ一つ積み重ねていく。それに尽きると思う。積み重ねていくことで小さな自信を付けていくのだ。

この際、自己満足でもいいかもしれない。まずは自己肯定感を高める。自己顕示欲を高めるわけではないから周りにも害がないだろう。

勝者のゴールデンメンタル ―あらゆる仕事に効く「心を強くする」技法

勝者のゴールデンメンタル ―あらゆる仕事に効く「心を強くする」技法

小原怜の所属は天満屋。過去4大会連続でオリンピック選手を出した実績のあるチームだ。スーパースターというよりは地力のある選手を鍛え、結果を出す印象。コツコツ頑張る人に目がいく黒柴スポーツ新聞向きである。ピンクのユニフォームも黒っぽいラインがあるのがいい。浮わついた感じがない。地に足が付いた感じだ。

「天満屋」強さの秘密 オリンピックへの道

「天満屋」強さの秘密 オリンピックへの道

小原怜はMGCという舞台が残っている。東京オリンピックの時は29あるいは30歳くらいだろうか。年齢的にも落ち着いてバッチリではなかろうか。過去惜しいレースを何度も見ているだけに、どうしても気になる。ぜひMGCでまた殻を破って代表の座を射止めてもらいたい。

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環境を変えることは成長に欠かせない~レスター岡崎慎司が移籍先を模索中

移籍。プロスポーツ選手にとってはキャリアアップの手段である一方、失敗したら最悪即引退、ハイリスクハイリターンの転機だ。一般人でも転職経験のある方なら分かる心境ではなかろうか。そのハイリスクを知りつつもハイリターンを求めているな、と岡崎慎司の言葉から感じた。本日のテキストは日経新聞岡崎慎司「満身創意」1月23日の「まだ終わりじゃない 移籍の意思表示は覚悟の上」。

岡崎慎司 悩む男。

岡崎慎司 悩む男。

プロ野球を好む私は欧州サッカーまでは追いかけないのだが、代表戦を通じて岡崎慎司の泥臭いプレーは知っている。この日経の文章からも岡崎慎司の愚直さがひしひしと伝わってくる。まさに文は人なり、だ。

プロ野球にも移籍はあるのだが、FAを除けばトレードやら、戦力外通告から他球団が獲得するなどのネガティブなイメージだ。一方、サッカーは選手自らがキャリアを獲得する印象を受ける。岡崎慎司も自分の商品価値を信じて移籍を模索している。



プロスポーツ選手であるなら試合に出て初めて輝ける。その意味で、出場機会が得られないのはかなりの消化不良を感じるのだろう。岡崎は「試合に出られない毎日に『選手として成長できなくなる』という不安や焦りはある」と書いている。

結果を残していないまま移籍を口にすることは負けを意味することなのかも、と自覚しつつも、行動を起こすことがモチベーションの維持に繋がる、という岡崎の考えは本当によく分かる。たとえ不利な状況に陥ったとしても、それが自分の意思ならばまだ納得できるからだ。



もちろん、明らかに回りの影響で想定外の遠回りをすることもあるだろう。自分は貧乏くじを引いてしまった、と感じたことは私自身もある。だが、このままでは言い訳のスペシャリストになってしまう。その前に、自分のキャリアは自分自身で切り開かねばと思うようになった。

だからこそ、今回の岡崎慎司の記事は胸に突き刺さる言葉のオンパレードだった。
「自分次第で現状は変えられるという気持ちでプレーしたい」
「移籍が成立しないのは自分への評価、岡崎慎司という選手の価値が低いということ。自分の力不足が招いた結果だと受け入れ」る。
「不安はポジティブな力に変えられるし、焦燥感は僕を追い込んでくれる」
どうだろう。何と前向きで謙虚なとらえ方だろうか。成長するにはこのように、自分自身の現状を冷静に、正確に受け止める力も問われる。

プロスポーツ選手のキャリアはついつい年齢で判断してしまいがち。2018年のワールドカップ・ロシア大会が終わって、長谷部誠本田圭佑らは最後のワールドカップだったんだなと思い、その中に岡崎慎司も勝手に含めていた。が、今回の記事の最後にはこう書いてある。
「3年後のワールドカップカタール大会へ向け、今は助走期間だと思っている」

あきらめたらそこでおしまい、とも思う。特に岡崎慎司のように気持ちを全面に出す人はその傾向が顕著だ。岡崎慎司のポジションFWは得点に絡むわけで、野球で言えば四番。結果を常に求められる。だからこそ、岡崎は常に自分の商品価値を示したいし、それを試す手段が移籍なのだろう。

キャリアを積み重ねた人でも移籍先は環境が変わるから、実力を発揮できずに終わる人はたくさんいる。プロ野球では特に巨人入りした選手でそういうケースが多かった印象だ。プロ野球選手である以上、一番高く評価してくれる球団に行くことは間違いではない。ただし、自分が輝ける環境であるかどうかも忘れてはいけないと思う。

その意味ではFA宣言して広島から巨人入りした丸佳浩には注目したい。広島にいたなら人気があり、球団からの評価も高く、年俸も十分だったはず。そこをあえて巨人に移ったのは、環境を変えたかったのかと推測する。もう一段上に行くには、今までと違う環境に身を置く必要がある。そう考えたのであれば、丸佳浩はそこそこ活躍できるのでは、と想像している。
広島アスリートマガジン 2018年9月号[丸佳浩が最強である理由。]

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プロ野球の移籍は一段落したが、岡崎慎司の移籍はどうなるだろうか。どのチームに所属していても、岡崎のキャリアや自分を高めていく姿勢には注目していこう。

孤高のサムライの原点を見た~熊本日日新聞「火の国の球児たち」前田智徳編を堪能

熊本日日新聞が、過去の紙面と熊本出身のプロ野球レジェンドの現在を「コラボ」させた夢の企画「紙面を彩った火の国球児たち」をご覧になったことはあるだろうか。今回、第4弾の前田智徳編をnoteで購入(200円)。期待通りの面白さだった。



そもそも前田智徳だから面白くないはずがない。なんて書いたら熊本日日新聞の編集者さんのハードルを上げてしまうようだが、過去の「秋山幸二伊東勤」「野田浩司」「川上哲治」同様、超有名な地元のスターを扱うのは編集者冥利に尽きると同時に相当のプレッシャーがあると想像する。

この「火の国球児たち」はネットで販売されているため、地元熊本県民だけが見るわけではない。ゆえに前田智徳の高校時代を知らない人たちは「あの前田の原点はここなんだ」と知ることになる。
最後のサムライ・前田智徳

最後のサムライ・前田智徳


と同時に前田智徳のことは熊本県民ならみんな知っているわけで、その記憶を丁寧に掘り起こすことで、「ああ、やっぱり前田智徳はすごいよね」と納得させられているように思う。

前田智徳 天才の証明

前田智徳 天才の証明



そのツールとして効果的なのが、当時の紙面だ。以前「火の国球児たち」を紹介した記事でも書いたが、この「紙面」は新聞社の財産だ。いかに最近のネットメディアが元気でも、この資産はない。資産の有効活用という意味では、この熊日の意欲的な取り組みをすべての地元紙関係者に注目してもらいたいし、一般読者にも純粋に当時の紙面を楽しんでもらいたい。
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とにかく前田智徳は勝負強く、ポイントになる試合ではホームランを打つなど結果を出していた。だから前田智徳を振り返るならば、熊本大会決勝を報じる紙面など「大きな紙面」が採用されるのは当然だ。



だが今回の前田の記事で面白かったのはベタ記事にも注目したことだ。ベタ記事とは簡単に言えば小さな扱いの記事。見出しが1段分の小さな記事だ。見出しは「編集者が伝えたい声の大きさ」をイメージしてほしい。そんな意味からして、前田智徳を描いたあのベタ記事は勝ち負けを報じる紙面だけならカットされてもおかしくはない。しかしあえて当時の熊日記者は前田のベタ記事を書いた。そこには前田智徳イズムが凝縮されていた。それを今回の「復刻企画」編集者は丁寧に拾ったわけだ。

今回の前田智徳編はそのベタ記事のエピソードを含む、10個の伝説を一つ一つ紹介している。これを読めば前田智徳のすごさがよく分かり、また、なぜすごいのかも分かるはずだ。
広島アスリートマガジン2013年11月号【前田智徳引退記念号】

広島アスリートマガジン2013年11月号【前田智徳引退記念号】

また、単純に「熊工」の古風なユニフォームの前田智徳がカッコよすぎる。カープのユニフォームもいい加減かっこいいのだが、球児の頃から前田は風格がある。「火の国球児たち」はかつての写真を通じて、レジェンドの若き日の姿を知れるのが魅力の一つだ。

最後に出てきた、前田智徳がなぜ練習を大事にするかがグッと来た。やはりなぜやるかがポイント。ただ練習すればいいというものではない。目的が大切だ。それを理解すると、前田智徳が練習の虫であることが納得できる。

過去にあらがう

過去にあらがう

それにしてもよくもまああれほどストイックになれるものだ。一途な面はまさにイメージ通りだった。前田智徳に詳しい人も、そうでない人も、これを機にぜひ「火の国球児たち」前田智徳編を読んでもらいたい。あくまでも個人の感想だが、野球バカなら200円で十分元が取れる。この企画ではぜひ私の好きな荒木雅博編も楽しみにしている。地元に数々のレジェンドがいる熊本県民が本当にうらやましい限りである。

うまくいかない時は自分らしさを思い出そう~ソフトバンク田中正義、勝負のシーズン

田中正義の記事を見て、涙が出そうになった。東スポの記事の見出しは「ソフトB・田中 家賃5万円からの逆襲『裏切ったものを取り返す』」。田中正義にとって、2019年が勝負の年ということがひしひしと伝わってくる。



田中正義は2016年のドラフトで5球団が競合した逸材だ。だが、まだプロ野球で勝ち星が付いたことがない。確実に、彼が思い描いていたプロ野球選手の生活は送れないでいる。
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寮を出たのはどんな意図だったのか。家賃は5万円だという。私も社会人になりたての頃はそのくらいの水準の所に住んでいた。家は休息を取れたら十分だと田中正義は言っていた。選り好みをするのは1軍に定着してからでいいんだ、と。

田中正義は潔いなと思う半面、あまり自分を追い込みすぎないでほしいなとも思う。ただでさえタレント集団のソフトバンク投手陣にあって、プロ未勝利のピッチャーがアピールしていくのは生易しいことではない。強いチームに入るということは、埋没するリスクもあるのだ。

だが、田中正義の歩みを見ていると、思うように投げられなかったから結果が付いてこなかった面がある。だから無理をしてまた以前のようになってしまったら元も子もないじゃないかと心配になるわけだ。

見出しにある「裏切ったもの」とは、入団時に背負っていた周囲からの期待だろうか。そのプレッシャーは当事者にしか分からない。ドラフト上位者には億から何千万円単位で契約金が支払われるわけで、責任感も感じるのだろう。

でも、背水の陣だからこそ、いきいきと投げられていた時の感覚を取り戻してほしい。田中正義にしてみたら、もうそんなことは言っていられないのかもしれないが、もう一度、自分らしさを取り戻してほしいなと願うばかりだ。

5球団競合なんて、だてじゃない。田中正義のストレートを見た人は皆、惚れ惚れしたに違いない。田中正義が競合の結果、ソフトバンクが交渉権を獲得した時は小躍りしたい気持ちになった。プロ野球選手はけががつきものだけれども、素晴らしい才能を発揮しきれずに終わるのは悲劇でしかない。

思えば2018年に中継ぎで大ブレイクした加治屋蓮も背水の陣だった。同じくドラフト1位の松本裕樹もプロ3勝にとどまっており、サイドスロー転向にチャレンジしている。ホークスの2年連続日本一の裏側で、もがいて奮闘する若者たちがいる。
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思うようにいかなかった時こそ、原点に立ち返りたい。自分の売りは何なのか。自分は何がしたかったのか。私はあの惚れ惚れするような田中正義のストレートを見たい。筑後で活躍するのも悪くないけれど、やっぱり超満員のヤフオクドームで躍動する田中正義が見たい。そのマウンドに田中正義が立っている時はきっと、自分らしさを発揮できている時だから。

上げられるレベルは全部上げておく~ソフトバンク森唯斗の貪欲な向上心

レベルアップを図るときは、どのあたりを意識するだろうか。苦手な分野をつぶすのか、得意な分野を伸ばすのか。考え方は人それぞれだ。が、ソフトバンク森唯斗の言葉にうならされた。「全部のレベルを上げないと勝てない」。そう言ったのだ(スポニチ記事より)。



森唯斗は2018年、66試合登板で37セーブ。故障で離脱した守護神サファテの穴をしっかり埋め、ソフトバンクホークスの2年連続日本一に貢献した。

だからトップレベルにいるのは間違いないのだが、すべてのレベルを上げようとしている。この貪欲さは見習いたい。

具体的には何と何と何をレベルアップしたいのだろうか。制球力、球速、球威、メンタル、スタミナ。配球もあるかもしれない。そう考えたら、プロ野球のピッチャーはいろいろなことがトップレベルでないと勤まらなそうだ。

私はレベルアップしたい場合は特にこの分野で頑張りたいなと、一つ、もしくは二つくらいに絞り込む。多くを望んでもすべて納得いく結果になるとは限らない。そう考えるからだ。

だが、森唯斗は「全部のレベルを上げないと勝てない」と思っている。足りない自覚があるのだろうが、変に自分の限界を設定しないと見た。

森唯斗には実績がある。プロ入り後5年連続で50試合以上登板。5シーズンを終え、299試合となかなかのペースだ。岩嵜翔のように1年頑張って結果を残しても、体に負荷がかかり、翌年戦力になれない人もいる。森唯斗は体が丈夫なのか、ケアがうまくいっているのかもしれない。

と同時に1年1年を大事にしているのではないだろうか。森唯斗の自主トレは日刊スポーツでも取り上げられていたのだが、こう言っていたのだ。
「去年は去年」

物事がうまくいったらちょっとは余韻に浸りたいし、結果が出た人ならば余韻に浸っても文句は言われない。だが森唯斗からはまったく隙が感じられない。それほどソフトバンクのピッチングスタッフが充実している、ということかもしれない。

いくつもレベルアップを図ろうとした結果、いくつかはレベルアップしていた、ということもありうる。果たして森唯斗はすべてレベルアップすることができるのだろうか。サファテら他の投手の起用法で森唯斗のポジションが決まる可能性もあるが、「全部のレベルを上げないと勝てない」という言葉からは、サファテがいても守護神を譲るつもりはないとの意気込みを感じた。

打撃面でもっと話題がほしいが、ソフトバンクの投手陣は意識の高い人がそろっている。チーム内で切磋琢磨して、ぜひ投手王国を築いてもらいたい。森唯斗のポジションにも注目することにしよう。

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裏表なく丁寧に生きる~マリアーノ・リベラ史上初の満票で米野球殿堂入り

マリアーノ・リベラアメリカの野球殿堂入りするという。史上初の得票率100%。これには、しびれた。


マリアーノ・リベラの実績は652セーブ。ぶっちぎりの大記録だ。652登板ではない。セーブがつく場面で死ぬほどきっちり結果を出してきた。

だから得票率が高いのは不思議ではない。それでも100%はすごい。まさに完璧な評価だ。
こんな人はいないと思っていた。それが、いた。一人くらい、マリアーノ・リベラには殿堂入りさせなくていいやという人はいなかったのか?

100%の高評価の理由は何だろうか。圧倒的な実績。それは間違いないがやはり人柄も込みじゃないと無理ではないか。そう思っていたらズバリ的中。元チームメイトのデレク・ジーターがリベラの人柄を紹介していたのだが、裏表がない、常に冷静、淡々と仕事をした、寡黙で思慮深い、そして熱心……まさに完璧だ。
JETER 素顔のThe Captain

JETER 素顔のThe Captain



この事実がすごくうれしい。私が尊敬する人に重なるのだ。その人にかつて「好きな選手は?」と尋ねたことがある。その人は少し考えてこう答えた。
マリアーノ・リベラ
はっきり言って、出来すぎだ。だが作り話ではない。その人は年上だろうが年下だろうが、誰に対しても丁寧な物言いをする。ジーターはリベラがファンに気持ちを込めてサインをするとも紹介していた。やはり同系統なのだ。
私が尊敬する人は失敗もするから、リベラみたいにうまくばかりはいかないのだが、その人がリベラに好感を持ったのが今、とてもよく分かる。
今さらリベラのようにはいかないのだが、せめて近付きたいなとは思う。100%の評価は無理でも丁寧に生きることは、心がけ次第でできる。
MLB - Mariano Rivera Record Breaking Save 4x6 Dirt Plaque: 602nd Career Save

MLB - Mariano Rivera Record Breaking Save 4x6 Dirt Plaque: 602nd Career Save



リベラは自伝を書いていた。書評を見たらすごく面白そうだ。ちらっと見たが、なんと、ドラフト外で入団? あのマリアーノ・リベラが? これだけでも興味津々。漁師時代もあったらしい。気になる……読みたい……
クローザー マリアノ・リベラ自伝

クローザー マリアノ・リベラ自伝


というわけでマリアーノ・リベラ自伝の書評はまたいずれ。まずはリベラを見習って、なるべく裏表なく歩みを進めよう。

他チーム選手との自主トレはマイナス?~ライバルの存在は上手に生かそう

他チームの選手と一緒に自主トレを行うことに、金田正一江本孟紀が意義を唱えていた。呉越同舟はありえないよと。NEWSポストセブン記事で読んだ。



言わんとすることは分からないでもない。記事中にスポーツ紙記者の言葉として出てくるが、巨人のエース菅野智之阪神に移籍した西勇輝が同じ施設で練習したという。確かに巨人と阪神は特にライバルだから、そこの主力が連携しているように見えると、対決ムードの盛り上がりに欠けるかもしれない。

いつしかオリンピックにプロ選手が行き出したり、WBCなど国際大会に日本代表が出ていると、昔より他チーム選手との交流は格段に増える。ライバルという認識が薄まるのはやむを得まい。

ただ、他チームの選手と一緒にトレーニングすることは悪いことばかりでもない。こんな準備をしているんだ、こんな工夫をしているんだとさまざまな発見があり、お互いにレベルアップがはかれる。
金田正一が言うように体作りも競争だから、手の内を明かして不利になる可能性は確かにある。だが、追い付かれる時点でその工夫はそれまでだったのだ。追い付かれたらさらに引き離す。引き離されたらまた追い付く。それが切磋琢磨するということだ。
曲がりなりにもプロ選手なのだから、一緒に自主トレしたとしても試合になれば本能的に相手を上回ろうとするだろう。逆に言えばそれができなければプロ野球選手失格だし、金田正一が言うように嘆かわしいだけだ。
さよならギッチョ やったるで! 20年

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頭ごなしに呉越同舟だ、情けないなというのも古くさい。それでは筒香嘉智に「頭の中がアップデートされていない」とバッサリ斬られることだろう。
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西本聖江川卓に対して激しいライバル意識を燃やしたように、ライバルは自分を奮い立たせる存在である。そういう意味では、ソフトバンクの次期エース候補の千賀や東浜が合同トレーニングをするのは、前の時代では考えられないのかもしれない。それぞれで開幕投手を狙えばいいのに、と。


でも、一流同士だから分かり合える部分はある。お互いレベルアップした上で、さらに争う。そう考えれば同じチームや、他チームのライバルと一緒にトレーニングをするのはありだと考えるがいかがだろうか?

馴れ合いではなく、レベルアップの手段。ライバルの存在は上手に生かしたいものだ。


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