黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

こんな夜更けに嘉弥真かよ、と言わせたい防御率0.88の男

楽天岸孝之最優秀防御率のタイトルを取れそうだということで、登録を抹消された(岸の防御率は2.72。以下、数字は9月24日現在)。残り試合には登板しないという。そんな記事を読んで、がっかりした。


岸が自ら望んだのではなく、タイトルを取れるものなら取らせてやりたいという楽天首脳陣の親心なのだろう。筆者は岸が嫌いではない。むしろ、イケメンだし、ストレートも投球フォームも美しいとさえ思っている。だからこそこういうタイトルのつかみ方はどうなんだろうなと思ってしまった。


ゆえに、思う。
61登板で防御率0.88の嘉弥真新也にタイトルをあげたい……

BBM ソフトバンクホークス 嘉弥真 直筆サインカード 60枚限定

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分かっている。防御率はあくまでも長いイニングを投げた上で競うものだということを。嘉弥真は30.2回。岸は159回。岸は5倍以上投げている。だが、あえて言いたい。嘉弥真はいつもギリギリの局面で投げている。


ある意味岸は自分で試合をコントロールできる。試合そのものを支配すれば勝ち星を手にすることができる。だが嘉弥真は違う。だいたいが大変な時に呼ばれる。何とかして、と。そして打たれることもあるのだが何だかんだで抑え続けている。実に31試合連続無失点。2011年にファルケンボーグが樹立した記録に並んだ。

 

 

天王山で西武にまさかの3連敗を喫し、柳田悠岐は側頭部にボールが当たるわ、今宮健太は脚を傷めるわで、まさに泣きっ面に蜂。おまけに空気を読まない西武が天王山3連勝を含む10連勝でソフトバンクは相変わらず崖っぷちなのだが、ソフトバンクも辛勝続きながら7連勝。そこには嘉弥真、モイネロ、石川柊太、森唯斗ら救援陣の踏ん張りがあると声を大にして言いたい。

 

 
森唯斗はサファテ兄貴に続いて最多セーブが取れるかもしれない。これまた増井と争っているのだが、森も嘉弥真も優勝争いの中でのこの成績だから、数字以上に価値がある。やはりタイトルは優勝争いなりチームの成績があってこその産物というのが王道ではなかろうか。嘉弥真は岸の5分の1しか投げていないが、岸に負けないくらい輝いている。

 



プレーオフでも嘉弥真が重宝がられる展開になればソフトバンクに勝機はある。西武の獅子おどし打線は重量級だが柔よく剛を制すという言葉もある。最後の直接対決やクライマックスシリーズではぜひとも防御率0点台の力を誇示してほしい。

 

ちなみに今回の記事タイトルは「こんな夜更けにバナナかよ」に引っ掛けましたが分かっていただけたかどうか……

 

広島東洋カープ3連覇に合わせて読みたい「スカウト」

いよいよ広島が優勝目前である。球団史上初の3連覇。山本浩二衣笠祥雄をもってしてもなし得なかった3連覇。今年亡くなった衣笠が見届けられなかったのはいかにも残念だ。


そんなカープ優勝に合わせて読みたくなったのが後藤正治氏の名作「スカウト」。カープ黄金時代を陰で支えた木庭教氏を通してスカウト稼業を描いた名作である。

スカウト

スカウト



特に読みたくなったのが悲願の初優勝における胴上げ投手、金城基泰を軸に書かれた第四章「二人だけのパレード」。この章だけでもスカウトという仕事の苦労や醍醐味がひしひしと伝わってくる。
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それは木庭が思い出す地方球場の椅子の座り心地だったり、木庭に金城基泰を橋渡しした在日の元プロ野球選手だったりと、さまざまな要素による。エピソードの一つ一つが砂金のようで、積み重なるとより一層まばゆい光を放つかのごとく。
 

作中でも触れているがスカウトの成果はすぐに表れるばかりではない。特に古葉竹織監督時代の広島の場合は長いスパンでチーム力を上げていたから結果を出すまでに年月を要した。プロ野球は人気商売だから毎年毎年が勝負。目先の利益を重要視するのも間違いではないのだが広島はそうしない。発掘して、鍛えて、の伝統がある。



広島は1991年から25年も優勝から遠ざかったが主力に定着した田中広輔菊池涼介丸佳浩は皆、生え抜き。今年は野間峻祥、西川龍馬、安部友裕らも加わりさらに厚みを増した。これなら新井貴浩も安心して引退できよう。
撓まず 屈せず 挫折を力に変える方程式

撓まず 屈せず 挫折を力に変える方程式



「木庭は、この日、胴上げに加わった選手たちの顔を思い浮かべた。衣笠、山本浩二、三村、水谷、水沼、外木場、佐伯、池谷……。そして、地獄の淵から甦った金城……。どういうわけか、浮かぶのは、彼らが入団してきた当時の、学生服姿だったり、初々しい童顔の若者時代なのだった」(単行本152ページより)。第四章の締めくくりはタイトルにもなっている「二人だけのパレード」。ぜひ実際に「スカウト」を読み、じっくり味わってください。
優勝はスカウトにとっても特別な日。広島のスカウトたちも格別な思いで胴上げシーンを見届けるに違いない。


後藤正治氏の著作関連記事はこちら。
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ホークスだってNEVER END~川島慶三、炎のヒーローインタビュー

天王山で首位西武に3連敗。しかも第2戦前に柳田悠岐は側頭部にボールを受けて登録抹消。第3戦では今宮健太が脚を傷めて離脱。もはや瀕死の鷹である。



数字上ではシーズン1位はかなり厳しくなった。それでも今いる戦力でやるしかない。象徴的だったのは今宮離脱の直後。セカンド牧原大成がショートに入り、セカンドには一塁から明石健志、一塁にはセンターを守っていた中村晃、センターにはベンチから福田秀平を送り込んだ。まさに全員野球である。

舞台を幕張に移してのロッテ戦。ダメージを引きずらないためにも初戦はなんとしても勝ちたいところだが6回を終えて0-2のビハインド。ここからチャンスを作り代打に福田秀平。雨もいい加減強く雨天コールド必至の状況だったが、きれいに外野に打ち返し同点とした。

そして9回もチャンスを作り代打に川島慶三左キラーの実力を発揮し、いや、気持ちで外野に運び犠牲フライで勝ち越し。さらに牧原も気合いで外野に運び、ダイビングした岡大海のグラブをかすめるタイムリーとなった。これでホークスから見て4-2。

だがロッテも粘って9回一死1塁から角中勝也がフェンス直撃の大飛球。打った瞬間ホームランを覚悟したホークスファンは一旦地獄に突き落とされかけた。が、信じられないことが起きた。二塁付近のぬかるみを気にしたのかロッテ一塁走者の中村奨吾は二塁までしか走らず。爆走した角中は急ブレーキをかけて一塁に戻るも外野からの返球が転送され一塁手川島慶三によりタッチアウト。その隙に三塁を狙った中村奨吾は到達寸前にボールが届いてタッチアウト。この瞬間、ホークスファンはインディー・ジョーンズばりに泥臭く地獄から生還した。

ヒーローインタビューで川島慶三は顔が紅潮していた。「むちゃくちゃ悔しかったです。3連敗して。で、僕らは西武戦終わった後に、全部勝つ、全部勝つと、強い気持ちを持ってやっていきます。なので最後まで応援、ご声援よろしくお願いします! 締めました! あらぁとぅした!」。慶三さん最高。

この日も西武は日本ハムに勝ったのでもしソフトバンクが敗れていたらズルズルいくところだっただけに大きな1勝。1軍昇格した高田知季もすぐ結果を出したし、いい流れはできてきた。崖っぷちにいるのは間違いないが何とか獅子の背中は追いたいものだ。毎日試合中継で松崎しげる地平を駆ける獅子を見たを聞かされうんざりしていたが、今夜は川島慶三の気持ちのこもったヒーローインタビューが聞けてよかった。同じ時間帯にテレビでは安室奈美恵の引退記念特番がやっていたがホークスだってNEVER END!と叫びたくなる夜だった。

福浦和也2000安打の陰でロッテ44年シーズン1位なし

ロッテ一筋25年の福浦和也が2000安打目前である。断っておくが本稿は福浦個人を批判するものではない。福浦は十分カッコいい。批判したいのは球団である。そう、ロッテはシーズン1位をもう43年間逃し続けている(野球通たちには釈迦に説法だが2005年はシーズン2位からのリーグ制覇)。これは12球団ワースト。今年も西武がマジックを点灯させた。ロッテは果たして福浦の記録に浮かれていていいのか。

 

 ロッテは日本一になっているぞ、下剋上お家芸だぞというファンもいるだろう。本紙はクライマックスシリーズを否定しない。むしろ球界発展のために肯定的に見ている。それでもやはりシーズン1位には敬意を払うべきと考える。そして何十年も1位になれない球団経営をいかがなものかと思う。

 

 


福浦の大記録についてはメディアも一緒になって浮かれていて、低迷するロッテを今さら弾劾する記事も見当たらない。巨人など4年連続のV逸が球団ワーストタイだとデカデカと見出しになるのに。そこは腐っても巨人、ということなのか。

2000安打は打者の名誉だから黒柴スポーツ新聞でも数々取り上げてきた。2000安打達成の日の千葉日報だって読みたい。でもその前に言いたい。福浦の2000安打到達はロッテの選手層の薄さが追い風になっている。年齢のことは言いたくないが要は後輩たちが福浦を追い出せないでいる。


以前、荒木雅博が2000安打を達成する前に誰が到達しそうか調べて記事にした。2年4カ月前だ。その時の数字がこちら。

荒木雅博 1983本 残り17
阿部慎之助1949本 残り51  
福浦和也 1942本 残り58
内川聖一 1940本 残り60
鳥谷敬  1907本 残り93

そう、福浦以外はみな達成済みだ。福浦は安打数が以前ほどではなくなっていること、「それなりに」若手が成長していることから出場機会が減っていることから下手したら2000安打目前での引退も可能性としてはあった。

だが案の定、ロッテでは大切にされて何とか2000安打が達成されようとしている。もちろん福浦の努力の賜物だけれど、福浦に引導を渡せないチーム状況もどうかと思う。


ちなみにロッテの次にシーズン1位から遠ざかっているのはDeNA横浜ベイスターズ時代の1998年が最後だ。今年も優勝の可能性は消え20年連続が確定した。それでも1位を逃した期間はロッテの半分以下である。いかにロッテがぶっちぎりで結果を残していないかが分かる。

 

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広島とて1991年から25年ぶりのリーグ優勝を果たし、以後の3連覇が目前である。上昇気流のきっかけはクライマックスシリーズだった。ロッテがいきなりリーグ優勝するのは無理なのなら、まずはクライマックスシリーズの常連になることだ。DeNAがそうなりつつある(今年は混戦だしDeNAも苦戦中だが)。コアラのマーチのお面を配るのはファンを楽しませるサービスかもしれないが、1シーズンでも早くリーグ優勝をプレゼントするのが本当のファンサービスではなかろうか。

安室奈美恵引退ネタが飛び交った9月16日のプロ野球シーン

「平成の歌姫」安室奈美恵が引退した。それとプロ野球に何か関係あるのかと思われただろうが、二つ見つけた。

 

 

一つは新聞の見出し。ネタ元は黒柴スポーツ新聞の古くからの読者だ(いつもありがとうございます!)。まずは9月16日の朝日新聞ソフトバンクとの天王山3連戦に先勝した西武の記事がトップなのだが、千賀を粉砕するホームランを放った浅村の見出しは「浅村3ラン 大一番のHero」。阪神戦では好投した山中の見出しが「山中TRY MEトラ退治」。敗れた阪神は「Don't wanna cry」。オリックスの山岡は「復調のSEASON」。安室奈美恵の曲名を上手に取り入れている。

 

 

こういうのは毎日新聞も得意。浅村とのアベックホームラン(今どきアベックなんて言わない)を放った山川穂高の写真上にある見出しは「西武 the Chance」。はい、確かに優勝をグッと引き寄せました、おめでとうございます(筆者はホークスファン。ガックリ)。ほかにも「楽天 スィーと19安打」。田中将大の見出しは「好調 in the ballpark」。朝日とはまた違う「選曲」でお見事。まさか共同企画?

 

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ホークスファンとしては天王山第1戦で打ち込まれて凹みながら第2戦を見たのだが、あれ、先頭バッター秋山翔吾の登場曲が安室奈美恵秋山翔吾は安室のファンなのかなと思ったがそのままスルーしてしまった。が、後でスポニチ記事を見てビックリ。なんとほぼみんな安室奈美恵の曲で打席に入っていた。
1番・秋山=Chase the Chance
2番・源田=Get Myself Back
3番・浅村=NEVER END
4番・山川=Fight Together
5番・栗山は登場曲なし
6番・中村=a walk in the park
7番・森=Don’t wanna Cry
8番・メヒア=キューティーハニー
9番・金子侑=CAN YOU CELEBRATE?

 

Finally

Finally

 

 

スポニチ記事にあるようにメヒアのくだりは爆笑を誘う。なにゆえに倖田來未(※17日追記=メヒアはなぜか1日遅れの17日第1打席で「Hero」が流れる中、登場)。なお、先発今井も「普段Baby Don’t Cryを使用しているがこの日はFinallyを使った」と紹介されていた。あんだけ試合見てたのにただただ聞き流していた。言い訳だが、安室奈美恵の曲は耳に馴染みすぎていてスルーしたらしい。

 


見ていなかったがZOZOマリンでは福浦和也が「Hero」で登場してたタイムリーを放ったとか(サンスポ記事より)。そう、みんな安室奈美恵が好きなんだ。そして、思う。こういう盛り上がりに乗っかるってすごく大事。特に情報発信に携わるメディアは。
 

 
というわけでわが黒柴スポーツ新聞も何とか安室奈美恵ネタで書き上げました。黒柴スポーツ新聞も将来はみんなが知ってるメディアになります。いつの日か、I'll be there,I'll be there,I'll be there......

松坂世代続々引退を受けた松坂大輔の甲子園登板を新聞はどう報じたか

9月13日は松坂大輔の誕生日だった。甲子園を沸かせた若者もはや38歳。20年もの歳月が流れたが、なおプロ野球選手である。松坂大輔は38回目の誕生日に、生涯で最も輝きを放った場所、甲子園に戻り、白星を手にした。


松坂大輔にはその白星を見せたい人たちがいた。そう、松坂世代だ。この登板を前に村田修一が引退。後藤武敏杉内俊哉も引退を表明していた。もちろん引退という重大発表をする前に、彼らはやりとりをしたに違いない。その上で、松坂大輔にとっては甲子園での登板が戦友たちへのメッセージになったのだった。


5回1失点。先発投手としては最低限の仕事であり、長いイニングを悠々投げていた若き日の姿ではない。だが松坂大輔にとってはまだやれるとアピールすることに意味があった。おまえらはやめるがオレはまだやるぞ、と。実際松坂は「3人に対し、自分はもう少し頑張るよという決意表明の日にしたかった」(共同通信記事より)と述べた。9月13日の甲子園での登板は、ものすごく意味があった。
続ドキュメント 横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たち

続ドキュメント 横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たち


これを各新聞はどうとらえたか。黒柴スポーツ新聞はネットワークを駆使して9月14日付の新聞各紙を調べてみた。


まず、岩手日報
「松坂 聖地で白星 38歳誕生日飾る」
シンプルで力強い見出しだ。雨中で力投する松坂の写真と共に堂々スポーツ面のトップに鎮座している。そう、甲子園は松坂大輔にとって、まさに聖地である。多重露光による松坂大輔の投球フォーム写真を掲載しているのが衝撃的。新聞で多重露光といえば花火大会がポピュラーだがスポーツ面では初めて見た。力投ぶりをアピールしたかったのだろうか。
大谷翔平 挑戦

大谷翔平 挑戦


続いて熊本日日新聞
「松坂 "聖地"で輝く」「5回1失点 誕生日飾る 『世代』背負って」
こちらもスポーツ面のトップ。この「背負って」がナイス。同級生への思いが伝わってくる。岩手日報同様、聖地という言葉を使っている。写真は阪神の打者越しに投げる松坂。カラー写真である。
そして山陽新聞
「松坂誕生日 聖地で輝く」「ライバル引退決断 38歳 世代の旗手好投」
こちらも聖地が入る見出し。そして誕生日も使っている。熊日同様カラー写真だが、岩手日報よりアップの写真を使っていて力強い。もちろんトップ仕立てだ。
ちなみに岩手日報熊日、山陽は同じ共同通信の記事を使っている。どうだろう。同じ素材なのに見出しが少しずつ違うことがよくお分かりいただけるだろう。限られたスペースでいかに思いを伝えるか。しかも間違いなく。ネタを取ってくる外勤記者も偉いが言葉に魂を込める内勤記者(業界的には整理記者と言います)がいることをここでアピールしておきたい。


彼らはレイアウトも担当する。ナイターが終わってから日付けが変わるまで2時間あるかどうか。13日はセ・リーグだけだったが、パ・リーグがある日は6試合。1ページ作るのはてんやわんやだが鼻血が出るくらい楽しい。


全国紙も見てみよう。
朝日新聞(東京)。
「38歳 松坂は戦い続ける」「12年ぶり甲子園 バースデー勝利」
戦い続ける、のパンチが効いている。カッコいい。松坂の思いを代弁している。カラー写真の松坂は雄叫びをあげている。その横の見出しは「杉内、村田、後藤…自分はもう少し頑張る」。さすが朝日。内村航平ばりのドヤ顔着地をピタリと決めている。お見事。
あの夏 (上) 甲子園の魔物と神様

あの夏 (上) 甲子園の魔物と神様



続いて同じく朝日新聞(大阪)。
「松坂38歳 まだまだ熱投甲子園」「12年ぶり聖地 バースデー勝利」「盟友の杉内、村田、後藤が引退 奮起」。この熱投甲子園というのがユニーク。さりげなく、いや、堂々とグループ会社の番宣をしている。写真は東京版と同じく雄叫びをあげている場面だが大阪版の方がアップ。気迫を出したい意図を感じる。
完全保存版 高校野球100年

完全保存版 高校野球100年



毎日新聞は版は不明だが2種類確認できた。カラーのものは「20年前 伝説作った聖地」「松坂 甲子園の申し子」「38歳誕生日 6勝目」。他社が使い分けた聖地と甲子園を両方投入。伝説と申し子という抽象的な単語も二つ。若干のかぶり感は否めないが興奮は伝わってくる。他社が推してきた盟友のくだりはなく、代わりに6勝目を入れてきた。写真は今回確認した紙面で唯一、ファンに左腕を上げて応える松坂。笑顔である。


もう一つのモノクロ版は「12年ぶりマウンド 直球に力」「松坂 聖地の申し子」「38歳バースデー白星」。直球に力、が復活を印象付けている。写真は岩手日報と同じもののようにみえる。



こんな盛り上がりの一方、首位の広島をトップにした新聞や、リーグ2位のヤクルトをトップにした新聞もある。どれを大きくするか、その価値判断は十人十色であることは百も承知。それでもなお、松坂松坂松坂でいってほしかった。
1999年の松坂大輔 歴史を刻んだ男たち

1999年の松坂大輔 歴史を刻んだ男たち



松坂は誰が見てもピークを過ぎている。日米170勝なのだから、きれいな終わり方をしてほしくもある。しかし松坂は踏ん張っている。いまプロ野球ファンは、松坂の若き日には想像できなかった、泥臭い松坂大輔を見ているのだ。そこへ来て相次ぐ松坂世代の引退。松坂がどう過ごしていくのか、興味が尽きない。

というわけで、久しぶりに松坂グッズを漁ってみた。レッドソックス時代にネットオークションで落とした物だ。値段的には下がったかもしれないが、自分の中では価値が上昇している。頑張れ、松坂!
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新井貴浩もいいけど後藤武敏の引退試合に引かれる理由~あの男は登板するのか

DeNA後藤武敏が2018年シーズンでの引退を表明した。彼もまた松坂世代である。

松坂世代どころか、横浜高校時代の同級生。松坂大輔小池正晃小山良男と共に1998年の夏の甲子園を制した。明徳義塾に逆転勝ちし、PL学園と死闘を繰り広げたあの夏のことだ。

横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今 (朝日文庫)

横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今 (朝日文庫)

あれから20年。後藤武敏はまだプロ野球選手でいる。戦ったPL学園の平石に至っては楽天の監督代行になっている。そんな年齢だ(平石がそういう器という説もあるが)。今年は村田修一も引退したし、松坂世代はだいぶ現役選手が減ってきた。


DeNAファンでも西武ファンでもない。強いていえば高校野球好き。だからこそ思う。「後藤武敏の最後の対戦相手は松坂大輔であれ」と。
続ドキュメント 横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たち

続ドキュメント 横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たち


それは無理な話ではない。後藤武敏引退試合は9月22日の中日戦。中日には松坂大輔が、いる。

引退試合の最終打席。その対戦相手は切腹の時の介錯人である(後藤武敏は何も責任を問われるようなことをしていないが)。思い残すこともないよう、スパッと選手生命を断つ。それが友人なら諦めもつこう。

現に後藤自身も「最後はマツに」と思っているという。そして松坂大輔自身も登板したい意思を示している(スポーツ報知記事より)。記事にあるように、情が深そうな森繁和監督のことだから可能性は十分ある。

参謀 (講談社文庫)

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そう、引退試合はエンターテイメントなのだ。


後藤はチームの一員として小池正晃引退試合に参加した経験がある。その試合で奇跡は起きた。そのシーズン、1本もホームランを打っていなかった小池正晃はまさかのホームラン2発。後藤は小池が打席に立った時点で泣いていた。もう、もらい泣きしちゃう。詳しくは下の過去記事を読んでいただきたいが、他人のために泣ける人は最高だ。

tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com


友の引退試合で泣く男は自分の引退試合でどうなってしまうのだろう。だいたい予想はつくが、演出を想像してみた。


まず、試合冒頭に後藤が打席に立つパターン。これだと試合にさほど影響はない。世の中には、セレモニーを真剣勝負の試合中にせんでよろしいというケチ臭い人もいるが、1回の裏ならまだ許されると思う。後藤は第1打席で終了。松坂大輔は先発して行けるとこまで投げれば問題ない。投手と打者の違いはあるが、山本昌引退登板がこのパターンだった。

山本昌という生き方

山本昌という生き方

だが、盛り上がるのは試合後半の登場。8回くらいの山場で代打後藤武敏登場。ならばと満を持して松坂大輔がリリーフ登板。1打席限りの真剣勝負である。後藤がヒットなりホームランを打てばめでたしめでたしなのだが、松坂大輔のことだから三振を狙いにいくに決まっている。後藤はまっすぐ1本に絞りホームランを狙ってみてほしい。小池正晃に続いて奇跡は起きる、かもしれない。

そんな夢を見られるのも、実は松坂大輔が退路を絶って中日入りしたからこそでもある。松坂はいつまでも松坂世代のシンボルであり、太陽であった。横浜高校-中日の小山良男明徳義塾-ロッテの寺本四郎。PL-横浜の田中一徳。PL-大阪近鉄などの大西宏明。PL-立教-日テレの上重聡(あっ、この人は違う?)。すでに球界を去った松坂世代にとっても、松坂大輔はきっと心のよりどころに違いない。きっと後藤武敏にとっても………。

松坂世代 (河出文庫)

松坂世代 (河出文庫)

幸か不幸か中日もDeNAも優勝争いはしていない。ゆえに誰はばかることなくセレモニーをやったらいいと思う。ベイスターズ戦だし、Abema TVあたりで生中継してくれないかなあと切望する。そう、22日は横浜スタジアム終戦なんだ。横浜高校で育った二人が最後の最後にどんなドラマを見せてくれるか。期待せずにはいられない。

野球×新聞×インターネットって面白い! 熊本日日新聞がnoteで「火の国球児」紹介

今回は熊本日日新聞(熊日)の「野球×新聞×インターネット」という楽しい取り組みを紹介する。新聞とインターネットは対立関係にあるかのごとき描かれ方もされるが、決してそんなことはない。むしろ組み合わせ方次第では物事を深く、立体的に伝えられる。それを再認識させられた。


熊本は「打撃の神様川上哲治(熊本工)を筆頭にプロ野球選手を輩出してきた。現在、プロ野球を楽しんでいる人ならば秋山幸二(八代)と伊東勤(熊本工)は十分ストライクゾーンだろう。この夏、熊日金足農業フィーバーの陰で独自の戦いを進めていた。過去の紙面と今をリンクさせたアーカイブ系の取り組みだ。
note.mu 
秋山と伊東が藤崎台で激突! 1980年、夏の高校野球県大会決勝「八代ー熊本工」 二転三転の大接戦に観客は熱狂 「夏の甲子園100回記念 紙面を彩った火の国球児たち」。これがその第1弾。夏の甲子園100回目にちなみ、思い出の選手や歴代ベストナインを選ぶなどさまざまな企画が新聞ごとにあったが、熊日の取り組みのポイントは過去の紙面を上手に生かしていることだ。
 

いわゆるオールドメディアが新興メディアに勝る要素の一つは過去記事並びに写真、そして紙面だ。地方紙ならば100年単位の歴史を誇る。例えば九州の球団・ソフトバンクホークスは源流の南海ホークスまでさかのぼれば80年の歴史があるが、まるまる収まってしまう。

卒業

卒業

要はこの蓄積した記事、写真、紙面をいかに活用するかなのだが、熊日夏の甲子園100回という節目に、熊本大会決勝で死闘を繰り広げた秋山幸二伊東勤にフォーカス。過去のコンテンツをネット上で再構成し、名勝負を今の世代に届けた。

詳しくは実物をご覧いただきたいが、とにかく、過去の紙面のパンチが効いている。見出しの力強さは紙面ならでは。過去記事をテキストスタイルでネットにアップするだけなら、この懐かしさ、タイムスリップ感は出ない。まさに紙面の成せるワザである。 
 
当時のモノクロ写真も味がある。伊東も秋山も面影はある(当たり前だが)。秋山は西武の主力打者のイメージが強いが、高校時代はピッチャーだったと恥ずかしながら知った。そして、よく考えてみたら熊本県大会で死闘を繰り広げた二人が西武の黄金時代を築いたのだ。人生はどう展開するか分からない。

こんなアーカイブス記事、テレビ局と連携して動画も付いていたらなお立体的で深みが出るに違いない。ラジオ局にも参加してもらって実況中継を聞けるようにしても面白い。とまあ楽しみ方はいろいろ。今年は西武がペナントレースを引っ張っているし、球団史を彩った伊東、秋山の高校時代をあらためて振り返ってはいかがだろう。ちなみにこの記事、1本200円。筆者はケータイのキャリア決済で支払った。気軽に買えるのも、いま風だ。
 
 
何より、過去のコンテンツを工夫して輝かせようという制作者の意思が素晴らしい。きちんと秋山に再度インタビューも行っており、過去と今をうまくつないでいる。読者が増えないと嘆いていてばかりいても始まらない。同じ新聞人として刺激を受けた。
 

もちろん、業界人ならずとも野球ファンなら十分楽しめるネタ。「川上哲治編」「野田浩司編」もあるので興味のある方はぜひ購読されたい。
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台風に警戒しながらのホームラン記念日~JAMES LAST BAND - VIBRATIONS - 2018

9月3日は何の日だったか? 答えはホームラン記念日。1977年に王貞治が756号を放ち、ハンク・アーロンの世界記録を超えたことにちなむ。

それをトイレに貼ってあるカレンダーの豆知識で予習済だった筆者は9月3日の通勤中に聴いたカーラジオの曲に爆笑した。

「Vibration」。これで分かれば野球通。そう、プロ野球ニュースの「今日のホームラン」BGMである。気になるあなたは今すぐYouTubeで検索を。

Spring Fling

Spring Fling

(いまは手に入らないそうなので、どうしてもという方はこちらで)
プロ野球ニュース 今日のホームラン VIBRATIONS  ORIGINAL COVER

プロ野球ニュース 今日のホームラン VIBRATIONS  ORIGINAL COVER

恐らく、いや、確信犯だこの選曲は。ちなみに聴いていたラジオ番組はNHK-AMの「マイあさラジオ」。選曲者の術中にまんまとはまった。

というわけで、きょうはこれまでに執筆したホームランにちなむ記事を、vibrationに乗せてお届け(各自脳内でこの曲を流してください)。それでは、台風に警戒しながら、お楽しみください。
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ライバルとの距離感をはかる~アジア大会100メートル銅メダルの山縣亮太がつかんだもの

結果を出すことは大事。しかし、結果が出なかった中でも手応えがあればしめたものだ。アジア大会陸上100メートルで銅メダルを獲得した山縣亮太の走りを見ながらそう思った。

山縣亮太100メートル9秒台への挑戦 (学研スポーツブックス)

山縣亮太100メートル9秒台への挑戦 (学研スポーツブックス)

 

 銅メダルでも立派なのだが山縣は金メダルを狙っていた。それは高望みでも何でもなく、実際決勝では優勝した中国の蘇炳添に中盤まで食らいついていた。蘇炳添は9秒92の大会新。山縣は2位と同タイムの10秒00ながら、着順が3位となった。

 

レース後のインタビューが山縣の素直な心境を物語っていた。「9秒91の選手は先にいるかと思ったが、案外近くにいた」

 

 その選手とは9秒91が自己ベストの蘇炳添。山縣亮太は10秒00が自己ベストだからお互い力を出しきったら勝てない。そして、100メートル競技における、しかも競技者におけるこの100分の9秒差は埋めがたいものなのだろう。だが、今回は敗れたとはいえ、はっきりと背中が見えたに違いない。

 

レベルアップの過程で目標が定まることの意味は大きい。このくらい力を発揮したら到達できるんだと感触をつかめたら、そこを目指すのみだ。言うは易し、行うは難しだが、もはや、やみくもに頑張れという話ではなくなっている。

 

目標にしていたものが実は手が届きそうな感覚になれるのは、紛れもなく成長している証拠。かなわない、追い付けるわけがないと思っていた存在が、あれ、そんなに遠くないなという距離にいる。その時は思いきって手を伸ばしてみたいものだ。ライバルの襟元に指先がかするかもしれない。そうしたらまた自信が生まれる。金メダルは逃したが、山縣亮太はひょっとしたらメダルに負けないくらい価値のある自信を手に入れたのかもしれない。

 

陸上競技マガジン 2018年 07 月号 [雑誌]

陸上競技マガジン 2018年 07 月号 [雑誌]

 

 

ライバルなり目標との距離感で自分の今のレベルや成長具合を確かめる。山縣亮太の言葉から、あらためてその大切さを認識した。山縣亮太の健闘に、桐生祥秀ケンブリッジ飛鳥も多田修平も刺激を受けたに違いない。2020年東京オリンピック100メートル。日本勢の活躍にますます期待したい。

東京パラリンピックでメダル、もいいけれど~障害者スポーツ振興は何のため?

障害者雇用の水増し、聞いてあきれる。意図的なものではないと言うが結局「何のために」が理解されていない。障害者の雇用、もっと言えば働く権利を守ろうという趣旨ではないのか。さらに言えば、一人一人が能力を生かして働ける社会をつくるための施策ではなかったのか?

しかも省や県など旗振り役である行政が水増し(結果的にというケースも含めて)している。結局、数合わせでしかないんじゃないの?と言いたくもなる。

もちろん、障害がある人に何でもおまかせできない面はある。車いすに座りながら高い棚の物を取るのは無理だし、毎日必ずやらねばならない作業のチームだと、不規則にしんどくなる障害の人の欠勤は吸収しづらい。その人が戦力なんだから当たり前だ。

だから、その人のできる範囲で、が大前提。その上で各事業所に一人の戦力として雇用されるのが理想だ。現実を分かってないねと言われるかもしれないが、理想は追っていかないと。

筆者は記者時代から車いすバスケットボールウィルチェアーラグビーの選手と親交があるが、正直なところ、最初は遠慮があった。例えばより重度の障害の人たちがやるツインバスケットボールの取材では、体験してみなよと言われて車いすからゴールを狙った時、わざと入らないように加減した。本当に失礼な話なのだが、その時、相当の遠慮があったのは確かだ。もっとも、学生時代からバスケは苦手だから手加減の必要もなかったのだが。

パラリンピックの楽しみ方: ルールから知られざる歴史まで

パラリンピックの楽しみ方: ルールから知られざる歴史まで

じゃあ今はどうなのかと言うと、長くお付き合いできている選手とは人間対人間という関係が出来上がっている。だからこちらの愚痴を聞いてもらったり、相談に乗ってもらうこともある。彼らの態度や振る舞いが障害を感じさせないのかもしれないが、こちらは障害を感じていない。

きっかけがあったのかと言うと、取り立ててあるわけじゃない。ありきたりだが一緒に過ごす機会を重ねたり、お互いをさらけ出したりしただけだ。自然体でやってきたからこそ、何か今回の障害者雇用に関する問題は頭に来る。数合わせしてりゃいいのかよ、と(珍しく乱暴な言葉遣いをしてしまいますが)。

2020年に東京でオリンピックがあり、パラリンピックもある。それに向けてパラスポーツへの助成があって、世に出る選手がいる。いい流れだし、邪魔する意図はないのだが、パラでメダルを取る(取れるようサポートする)だけで終わってほしくない。それって、今回の障害者の雇用水増しみたいに帳尻合わせにならないかと危惧している。メダルを取るのが目的じゃない。メダルは素晴らしい成果なのだがその先にある、一人一人が輝ける社会を作るプロセスの一つがパラスポーツ選手の活躍だと思っている。筆者が彼らを応援する理由はその辺りのことと、選手のキャラクターが好きなことの両方である。
壁を越える:車いすのラガーマン パラリンピックへの挑戦

壁を越える:車いすのラガーマン パラリンピックへの挑戦

先日NHKで、1964年の東京パラリンピック開催に尽力した中村裕氏を描いたドラマ「太陽を愛したひと」がやっていた。「失ったものを数えるな。残っているものを最大限に生かせ」。中村裕氏がイギリスで出合った、後の指針となる言葉だ。
太陽の仲間たちよ (KCデラックス 週刊少年マガジン)

太陽の仲間たちよ (KCデラックス 週刊少年マガジン)

「失ったものを数えるな。残っているものを最大限に生かせ」。これって、みんなに当てはまる言葉だよなとつくづく思う。さまざまな理由で不遇の時代を生きる人にも当てはまる。単純に年齢を重ねて、若い頃のようにはいかないなと実感中の人にも。若い頃のようにはいかなくとも知識や経験や人脈はあるわけで。あとはそれをどう生かすかで差がついていく。

「失ったものを数えるな。残っているものを最大限に生かせ」

あらためて、胸に響く。皆さんも、やれることをやれるだけ、やってみませんか?

甲子園Heroes表紙が大阪桐蔭ではないことへの違和感

「甲子園 Heroes」(朝日新聞出版)が8月25日、復刊された。5年ぶりという。表紙は吉田輝星。秋田の金足農業を決勝まで導いた立役者である。が、ここは優勝チームである大阪桐蔭ナインが収まるべきではなかろうか。

金足農業のひたむきな野球が人々のハートをわしづかみにしたのは分かる。3回戦で強豪横浜を倒した逆転スリーラン。近江を土俵際でうっちゃったサヨナラツーランスクイズ。そして地方大会からマウンドを守ってきた吉田輝星が打ち込まれ決勝で敗れた悲劇。公立の、しかも農業高校の躍進に注目するなと言う方が無理だ。このブログだって金足農業のことを書いている時はめちゃくちゃ楽しい。しかし、高校野球ファンたちがわあわあ騒ぐのと、主催者である朝日新聞がルーツの朝日新聞出版がフォーカスするのとは訳が違う。
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何より出版物は、形として残る物。記念すべき100回大会の表紙が、高野連会長をして「高校野球のお手本」と言わしめた全員野球の金足農業というのは、勝利至上主義ではないという意味ではいいのかもしれない。しかし、単純に思う。優勝した大阪桐蔭ナインはどう思うかな、と。単に巡り合わせの問題かもしれない。決勝で打ち負かした相手が日大三だったり、愛媛は済美だったら、こんなにはなっていない。そう、大阪桐蔭は運が悪かったのだ。ちなみに表紙に優勝校以外が採用された例はないのか、J-CASTニュースが調べてくれている。このHeroesシリーズでは史上初、前身のアサヒグラフでは1981年の工藤公康(準決勝敗退の名古屋電気=現在の愛工大名電)、1982年の荒木大輔(準々決勝敗退の早稲田実業)がいたという。
荒木大輔のいた1980年の甲子園

荒木大輔のいた1980年の甲子園

旬の人間を取り上げるのはメディアの基本の「き」。そして編集者によって価値判断に差があるのも分かる。しかし、敗者に光を当てるならば勝者にも敬意を払うのが礼儀ではなかろうか。

雑誌の表紙の見出しは上に「金足農 秋田勢103年ぶり決勝進出」。雄叫びを上げる吉田輝星のカッコいい写真があり、彼のグローブの下に「大阪桐蔭 史上初2度目の春夏連覇」となっている。やっぱりこの表紙、偉業とちぐはぐな感が否めない。

応援するなら弱い方。その意味で今大会、大阪桐蔭を応援することはなかった。このブログで大阪桐蔭のことを書いたことはあるが、それは去年の「一塁事件」とその後についてだ。
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強者だから、弱者だから、ではなくそこに何を見出だすかが腕の見せ所。速報では太刀打ちできない分、視点や感性、分析力や表現力を磨いていこうと思う。

無謀だが真面目な連投防止策を考えてみた~金足農業・吉田輝星をリスペクトしつつ

終わった。100回目の甲子園が。秋田県民の有給消化日が。そして東北の人々が見た、深紅の大優勝旗白河の関を越える夢が。
 
秋田が誇る「雑草軍団」金足農業が、史上初の2度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭に挑み、壮絶に散った。逆転スリーランに、意表を突くツーランスクイズ。大黒柱のエース吉田輝星だけじゃない、まさに全員野球で全国の高校野球ファンを楽しませてくれた。みんな、ありがとう、と言ってくれるに違いない。

しかし、多くの人は思っているはずだ。最高のコンディションの吉田輝星を、最強の大阪桐蔭打線にぶつけてみたかったな、と。
 
もちろん、体調管理やリスク管理も含めてのトーナメント戦である。もはや継投は甲子園を勝ち抜く上での常識かもしれない。 
実際、1994年の佐賀商業の峯謙介以来、6試合を投げきった優勝投手は出ていない。それでも準決勝までの吉田輝星の力投を見ると、ついに壁が破られるのかと期待したのだが…… 
結局、吉田輝星は5回を投げ被安打12の11失点。甲子園初戦から4試合連続で2けた奪三振だったが、決勝は四つにとどまった。
 
大阪桐蔭打線が見事に吉田輝星をとらえたのは紛れもない事実だが、吉田に疲労の2文字をダブらせない人はいないだろう。そこが「どうにかならないのか」と思う理由だ。 
選手を守る方法として提案されるのが球数制限。よくプロで目安にされるのが100球だがそれだと大概完投できない。つまりピッチャーが複数必要になる。そこがまず問題。才能ある選手が集まりやすい強豪はいいが、公立校は逸材が入って来るのを待つばかりだ。
 
2番手投手がいなければエースが投げ続けるほかない。今でも公立高校が勝ち進むのは厳しいのに、球数制限をしたらさらに道のりは険しい。ちなみに吉田輝星は最も少なかった準決勝の日大三戦ですら134球。130球なら今と変わらないから、せめてMAX120球と制限した場合、吉田は1試合も完投できなかったことになる。金足農業は粘り強く戦ってきたわけだが、背景に吉田の好投あってこそ。やはりエース頼みの学校は球数制限が導入されると不利が予想される。
BRASS BEST J-POP甲子園

BRASS BEST J-POP甲子園

 
次に、発想を変えて、試合自体を短くする手。これは解説者の里崎智也が日刊スポーツ記事で言っていてなるほどなと思った(ちなみに球数制限の下りも参考にさせてもらっている)のだが、やはり野球は9回で争ってほしいよなと思う。過去の記録との比較も何かとやりにくくなりそうなので、試合そのものをあまりいじってほしくない。 
そこで提案なのだが、すぐできそうなのが休養日の追加。欲を言えば決勝前に2日。最低でも1日挟んでもらいたい。球児は若いから1日でもだいぶ回復すると思うが、決勝まで残れるのはたった2チームなのだから、じっくり体調を整えてもらいたいと思う。高校野球ファンはひたすらネット検索やSNSで時間をつぶしたり想像力をふくらましたりできるから2日くらいなら我慢できる(はず)。 
もうひとつは補強選手制度の導入。都市対抗野球で適用されているのだが、高校野球にアレンジして言えば、同じ都道府県の大会で敗れた学校の選手を借りる。都市対抗だと3人までOKらしいが、高校野球は教育的であるべしなどと必要以上に言う人もいるので遠慮して2人まででいかがだろうか。エースの負担を軽くするため、投手を2人でもいい。バランスを取って投手と打者1人ずつでもいい。2人くらいなら母体の学校のカラーは変わらないのではないか。 
例えば今大会派手な打ち合いを演じた高知商業は県大会で明徳義塾を撃破したわけだが、そこからエース市川と四番谷合をレンタルする。投手は北代から市川に継投できるし、打線はここぞの時に谷合を代打に送ることもできる(事情が許せばスタメンでもOK)。実際、北代は高知大会から全試合投げきったわけだが、市川と併用したら負担は減っていた。また、敗れた済美戦はあと一本が出ていたら結果は違っていた。結果が出たかは分からないが相手の中矢監督からしたらとっておきの代打に谷合が出てきたらすごく嫌がったと思う(明徳の後輩でもあるし)。 
補強選手にもメリットはある。何せ甲子園に出られるのだ。県大会で負けた悔しさは何とか消化できるだろう。さらにはプロ入りを目論む選手なら最大のアピールチャンスになる。ライバル校の戦力になることさえ我慢できれば損にはならない。 
とまあ、選手の負担軽減が少しずつしか進まないことに業を煮やしての、真面目な提案なのだが「明徳と高知商業が一緒にやるなんてありえん!」と一蹴されそうな気配が……同じことは各県で起きること必至。八戸学院光星青森山田早稲田実業日大三……。ライバルゆえに無理な提案ではあるが、このくらい大胆なことをしない限り、公立高校が優勝するのは難しいように思うのだがいかがだろうか(公立にこだわるなら公立同士で選手を融通する手もある)。あの剛腕・吉田輝星をして、最後の最後に「もう投げられない」と言わせた事実を、大会関係者やわれわれ高校野球ファンは重く受け止めねばならない。

甲子園で農業高校が優勝したことはある?~金足農業34年ぶりベスト4に秋田沸騰

秋田の金足農業高校が第100回夏の甲子園で旋風を巻き起こしている。ドラフト1位候補のエース吉田輝星が軸なのは確かだが、3回戦で劇的な逆転ホームランの高橋、準々決勝でツーランスクイズを決めた斎藤&2塁走者の菊地彪吾など、日替わりヒーローが出てきて見ている人を楽しませてくれている。

金足農業夏の甲子園ベスト4はあのPL学園と好勝負を演じた1984年以来、34年ぶりの快挙。そのPL学園で一時代を築いた桑田真澄が、金足農業日大三の準決勝前にレジェンド始球式を行うのも不思議な縁だ。34年前は桑田真澄のホームランで金足農業は敗れたが、今回はレジェンドからパワーをもらってほしい。
完本 桑田真澄 (文春文庫)

完本 桑田真澄 (文春文庫)

当時のPL学園は今で言えば大阪桐蔭。抜群のセンスや能力の選手が集うタレント集団だ。対する金足農業は雑草軍団を自認。これは今も変わらないらしい。農業高校だけに雑草というのも誉め言葉には見えない?が、雑草軍団が決勝でタレント集団の大阪桐蔭と相まみえるともなれば、判官贔屓高校野球ファンはこぞって金足農業を応援するに違いない。そのためにはまず金足農業は準決勝で名門の日大三に勝たねばならないのだが。そして大阪桐蔭を先に書いてしまったが大阪桐蔭とて実力校の済美にまず勝たねばならない。大阪桐蔭には大阪桐蔭の思いがある。みんな大阪桐蔭で甲子園を目指してきた。同じ私立の済美日大三の選手にも当てはまるだろう。こうした強豪と、金足農業のような公立校がぶつかり合うのも高校野球、甲子園の醍醐味だ。まさに100回大会にふさわしい。そこでふと疑問が。過去99回で「農業高校」が優勝したことはあったのか? スポーツ紙のサイトで歴代優勝校を眺めてみたら……答えは、農、いや、NO。中京商業や広島商業松山商業など「商業」はいっぱいあるが農業高校はゼロ。「工業」ならば三池工業があまりにも有名。果たして金足農業は農業高校初の甲子園制覇ができるだろうか?ちなみに戦前1931年に台湾の嘉義農林(かぎのうりん)が準優勝を果たしている(優勝は中京商業)。台湾というのが時代背景を感じさせるが、嘉義農林の活躍については映画化(さらには漫画化、小説化)もされているのでそちらで勉強しようと思う。興味のある方はぜひ。
KANO ―カノ―: 1931 海の向こうの甲子園

KANO ―カノ―: 1931 海の向こうの甲子園

KANO 1931海の向こうの甲子園

KANO 1931海の向こうの甲子園

奇しくも嘉義農林関係者はこの第100回大会開会式にユニフォーム姿で参加していた。胸には「KANO」の文字。金足農業のユニフォーム「KANANO」とはデザインこそ違うものの、通じるものはある。嘉義農林がつかめなかった栄冠に果たして金足農業は手が届くだろうか。秋田県民ならずとも目が離せない。

8月20日追記 金足農業は準決勝で日大三を破り決勝に進出しました。おめでとうございます!

甲子園でガッツポーズは悪なのか~創志学園・西投手に球審が「指導」

岡山が生んだ「燃える男」星野仙一ならどう評価するだろうか。創志学園(岡山)の西純矢投手に対し、必要以上のガッツポーズをしないよう球審から指導が行われた。舞台は夏の甲子園。気持ちが高ぶるのも無理はないのだが…

岡山県高校野球本2018

岡山県高校野球本2018

 

高野連事務局長によれば大会本部からの注意ではないという(8月15日スポニチ記事より)。審判が見るに見かねて、といったところだろう。映像で見てみたが確かになかなかのもの。体を反らせながらの「チョレイ!」でおなじみの卓球・張本智和をほうふつさせる。

そもそも野球は礼儀にうるさいスポーツ。高校野球ならなおさらだ。試合前は整列して一礼。グラウンドの入退時も帽子を取って一礼。勝ったチームは負けたチームより先に引き揚げるが、その際も破ったチームの最前列にいる監督に一人一人一礼してから出ていく。必要以上に礼儀を求めるのはどうかと思うが、これらからは勝利史上主義は感じられない。あるのは野球ができることへの感謝なり、相手校への敬意といったところだろう。

創志学園の西純矢が相手をリスペクトしていない、とは言わないが、割合としては自分を鼓舞する要素が非常に多いように見える。スポニチ記事によれば長沢監督いわく、ガッツポーズは西の自己表現であり、弱いからこそ取る態度という。

同じ高校野球で活躍した田中将大は現役屈指のガッツポーズ実践者だ。日本シリーズでは派手に吠え、当時巨人のロペスと険悪なムードに。沢村賞選考委員からは少年の模範であれと、マウンド上の態度に注文がついたこともある。

田中将大の場合はエンジンがかかってきたなというのが見ていて分かる。勝負所でギアを上げる。そこで仕留めて雄叫びを上げる。それでも相手に対してやっているようには見えない。

そう、ガッツポーズにもやりようがあるのだ。クールに見える大谷翔平だってここぞの場面では声が出ていた。菊池雄星みたいにうつむきながらパチーン!とグラブをはたいて自己完結する手もある。

自分がやりたいからやる、というのはいかにも未熟。自分さえよければいいのかとも思ってしまう。自分のペースでしか話せない。自分のペースでしか動かない。話を聞かない。そんな方々は社会に一定いて、迷惑この上ない。そういう人にはなりたくないものだ。

創志学園には申し訳ないが、2年生である西純矢の精神的成長を期待する意味でも、この下関国際に喫した逆転負けには大きな意味があったと思う。伸びのあるストレートは一級品。クールに試合運びができるようになれば鬼に金棒だ。

一つ残念だったのは球審からの指導を西は「強い口調」と受け止め、リズムが狂ったと感じていることだ。そもそも原因を作ったのは西だから自業自得にも思うし、敗因をそこに置いてほしくもないのだが。熱くなりがちな選手には特に、的確に指導するためにもイニング間に監督も交えて一緒に「しっかりやろう」と諭すことはできなかっただろうか。今回は非常にレアケースだろうが効果的な指導を求めたい。

また、ガッツポーズ自体は悪くないので必要以上にナーバスにならないでほしい。確かに西純矢が言うように「出てしまう」ものなのだろう。学校によっては一律禁止の所もあるようだがそれも何だか味気ない。相手をリスペクトしつつガッツポーズすることはできるし、そういう人の方が素敵と思う。お互いに力を出しきり、高め合って、これからも熱い試合を見せてほしい。


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