黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

荒木雅博2000安打を報じた熊本日日新聞紙面に感動~県出身5人目の快挙

熊本の知人と再会した。熊本と言えばこのほど2000安打を達成した荒木雅博の出身地。その話から知人が飲みながら「熊本って2000安打が5人くらいいるんで、結構スゴいんスよ」と言ったからさあ大変。

5人って?

荒木雅博は達成ほやほや。

前田智徳もまあまあ新しめ。

やっぱり定番は川上哲治
遺言 (文春文庫)

遺言 (文春文庫)

ここで止まってしまった。

伊東勤は2000安打に届かなかったんだよなあ。

石井琢朗?と思ったが栃木で大外れ。

疾走!琢朗主義

疾走!琢朗主義

広瀬叔功は広島だしなあ。

すると知人がスマホで探して「江藤慎一」。渋すぎる。「確か日鉄でしたよね」と返すと「知らないっす」とちびまる子ちゃんばりに顔にタテ線が入っていた。

江藤慎一―

江藤慎一―"闘将"と呼ばれた男 (名球会comics (3))

じゃあ最後の一人は?

うなっても全然出てこない。2000安打達成者だから絶対超有名人なのに……

悶絶していたら知人があっさり「あ、秋山」。秋山幸二を忘れていたとは……!

秋山引退記念―Hawks2002完全版

秋山引退記念―Hawks2002完全版

そして2000安打マニアにはたまらない、荒木雅博2000安打を報じる地元紙、熊本日日新聞をゲット!!!

確かに1面の見出しに「県出身5人目」と書いてあった。

全部の新聞をチェックしていないがおそらく1面は達成の事実を伝える記事、いわゆる内政面に横顔の記事、そしてスポーツ面には荒木雅博のサイドストーリー、というのが定番だろう。

熊本日日新聞もそうなのだが地元紙である上に荒木雅博の出身地、菊陽町もまた被災地であるため社会面でも荒木雅博の生き方を紹介していて、これがぐっときた。

社会面の記事によれば荒木雅博の実家は瓦は落ちるわ電気も水も止まるわで大変だった。親戚も被災した。町の家々がブルーシートで覆われているのを見て心を痛めた荒木雅博は被災地の支援活動をしたという。

荒木雅博が2000安打を打っても町の復興が急激にスピードアップするわけでもない。ただし荒木雅博はバッティングに関して非力なことを自覚しながらも努力努力で一流打者の仲間入りを果たした。この姿そのものが菊陽町への応援歌になっているはずだ。

こういう手厚い報道は地元紙の真骨頂。次の2000安打達成者が誰になるか分からないが、その時はまた地元紙がどんな紙面を作っているか見てみたい。

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中居正広の連敗巨人応援カツサンドからの巨人軍再建論

SMAPに好感抱いてなかったけど、中居正広は別。野球が好きだからこそ舞い込む仕事を熱烈にこなす。ジャニーズの肩書きに寄っ掛かっていないところがいい。

そして。中居正広は歴史的連敗のジャイアンツを慮り激励のメッセージとカツサンド数十人分を送ったという。スポーツ報知記事で見た。

キツイ状況でも応援するのが本当のファン。だから、筆者は巨人ファンながらあの暗黒時代も今も変わらず阪神に声援を送る虎党は本当に偉いなあと思っている。そういう意味では巨人ファンは久々にしんどかっただろう。
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あまりに負けたらファンが減ってしまう、と巨人OBの柴田勲が懸念していたが違和感を持った。ただ負けたからといってファンをやめるのはうわべだけのファン。愛がない。

そこはやはりあきらめずに必死のパッチで声援を送るとか、カツサンドを送るのが本当のファンだ。声援とカツサンドの後押しがあってついに巨人は13連敗でトンネルを脱した。

ずるずる負け続けたら高橋由伸監督の責任問題に発展しないかとヒヤヒヤしていた。長嶋茂雄ファンが42年前にやきもきしたように、ヨシノブファンもまたヒヤヒヤしていた。

とかく日本人は責任を取らせるのが好きだから今の風潮だと高橋由伸監督の連敗謝罪会見なんてものがセッティングされかねない。イギリスのメイ首相も過半数割れだから日本だったら即辞任だ。

野球界の伝統的パターンでは成績不振→休養→監督代行→新監督だ。休養というのがいかにも日本的。アメリカならトランプ氏の決めぜりふばりに「クビだ!」だろうに。巨人は15連敗していたら高橋由伸監督休養もあり得たかな、と想像していたところだ。だから連敗が止まった意味はすごく大きい。

トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ (ちくま文庫)

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一つ懸念があるのは高橋由伸がクールすぎることだ。阪神金本知憲監督は苦労人の岡崎が活躍したら抱き合って喜んでいた。ボスには品格が求められるが起死回生の活躍にはド派手なリアクションをしてもらいたい。そういう鼓舞の仕方があっていい。本当の信頼関係があれば、部下は上司を喜ばせたくなるものだ。
覚悟のすすめ (角川oneテーマ21 A 87)

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長嶋茂雄は燃える男だから球団史上初の最下位から優勝というリベンジができた。高橋由伸は秘めたる闘志はあれどそれをどうエネルギーに変えるのか。みんながみんな燃える男の時代はとうに過ぎた。それでもあえて地獄の伊東キャンプ的な荒療治をするのか、やらずにビジネス的にまた補強を繰り返すのか。高橋由伸監督が選ぶ再建策は興味深い。
長嶋茂雄語録 (河出文庫)

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個人的にはクールな高橋由伸監督が猛特訓を課せばこれまたクールな坂本勇人ら主力が一気に熱血軍団になるのでは、と期待している。歴史的連敗がただの黒星の羅列で終わるのか、つぎはぎ的な補強を繰り返すぜい肉体質と決別する分岐点になるかは、高橋由伸の双肩にかかっている。
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補強依存体質は巨人のアイデンティティー~13連敗は起きるべくして起きた

巨人のワースト13連敗が騒がしい。確かにつっこむべき話題。だがそんなにギャーギャー言いなさんな、と、巨人ファンという出自を明かした上で書いてみる。

巨人の結果が出ないと補強の失敗が糾弾される。2017年も森福允彦、山口俊、陽岱鋼が槍玉に上がった。が、巨人のFA選手の失速はもはや伝統である。

補強するから育成がなってない、となる。一理あるがそもそも巨人は補強ぬを繰り返して覇権を握ってきた。大昔は南海のエース、別所毅彦をぶんどった。手続きは異なるが、南海の系譜を持つソフトバンクからは杉内俊哉がFA移籍。歴史は繰り返されるのだ。
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だから補強ばかりしているから育成が弱いという話ではない。今は「どちらもうまくいっていない」のだ。

逆に両方上手くいってるのはソフトバンク。2016年は早々にマジックが点灯しながら優勝を逃し「世紀のV逸」とまで言われた。だから柳田悠岐の負傷と共にV逸の要因であった打の助っ人の不足をデスパイネ獲得で解消した。上林誠知も売り出し中だ。投手陣は千賀滉大の成長を筆頭に、東浜巨ら生え抜きが頑張っている。今は首位ではないが、和田毅武田翔太もいないのだ。むしろよくやっている。
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もちろん巨人の若手も頑張ってはいるのだろうが、プロスポーツは結果がすべて。WBCでブレイクした小林誠司も巨人に戻ったらまただりつが低迷。正捕手として確固たる地位は築けずにいる。
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優勝に生え抜きの力が欠かせないのは2016年の広島優勝からも一目瞭然。巨人では原辰徳政権下の優勝がそれだった。だから高橋由伸監督も生え抜きを徹底的に鍛えるしかない。

実は黒柴スポーツ新聞ではこのところ、伊東キャンプ記事が読まれているようだ。なぜ今なのか疑問だがもしかしたらファンは最下位から奮起して頂上を目指したあの頃の青いジャイアンツを待ち望んでいるのか? 投げ込み、振り込み、走り込みをすることで生まれ変わるしかあるまい。茂林寺の猛練習、地獄の伊東キャンプに続く第三の猛特訓が必要だ。
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とにかく巨人の選手はまず一つ勝って連敗の話題を沈静化しないといけない。13連敗はしたがまだ負け越しは10だ。13連敗より借金の数に目を向けなければならない。

小さい数字ではないが借金10を一つずつ返すしかない。生え抜きが頑張ればオフの補強も小幅で済む(結局やるんかい!と言われそうだが)。頑張らなければまた場当たり的な補強をしてぜい肉体質は改善されないままだ。

84年の歴史の中で最弱の巨人かもしれないが、批判は勝つことでしか払拭できない。池に落ちた犬は叩けとばかりに巨人はバッシングされているが、巨人を本気で怒っていいのは負けても負けても声を枯らして応援し続けているファンだけ。面白がってはやし立てる声は無視して、一人一人の選手にはやるべきことをやってほしい。一塁ゴロを阿部慎之助が捕って、ピッチャーにトスしてもベースをきっちり踏めないとか、カバーが遅れるとか、そういうプレーをしているうちは勝てない。

忖度と業務命令は紙一重~三原脩監督の小芝居を知りつつ燃えた稲尾和久

忖度は2017年の流行語になると見た。忖度とパワハラは紙一重、という話をしたい。

稲尾和久の「神様、仏様、稲尾様 私の履歴書」から大好きなエピソードを引用する。

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

完投した稲尾和久が翌日、グラウンドで体をほぐしていた。名将・三原脩監督が「お疲れ。今日はあがりだな」と声をかける。つまり、ベンチには入らないでいいよ、と。

説明ばかりだとただ写しているような引用になるので以下、今風のセリフで。

「どこで試合見んの?」
「記者席とか」
「じゃあベンチでも変わんなくね?」
「そうっすね」

勘のいい人はこの辺でエンディングが予想されると思うがまあしばしお付き合いを。

試合が進むと三原脩監督はわざわざ稲尾和久の近くに来て、考えごとをして、難しい顔をする。デキる稲尾和久はうすうす三原脩監督の演技を怪しんでいる。

西鉄の旗色が悪くなると三原脩監督はブルペンとやり取りして「ダメか、困ったな」なんて聞こえよがしにしゃべりだす。ハイハイハイ、とうなずくあなたも毎日お仕事お疲れさまです!

魔術師〈上〉―三原脩と西鉄ライオンズ (小学館文庫)

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デキる部下の稲尾和久は「ボク行きましょうか?」とキャッチボールをやり出す。ただし前の日完投しているから肩はバッキバキ。でもだんだんほぐれてきて川崎徳次コーチから声が掛かる。「行っちゃってくれる?」
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お客さんから「待ってました」と声援が飛ぶと稲尾和久のハートは「油紙のように燃え出した」という。

そう、稲尾和久はうまく三原脩監督に操縦された。それは手なずけられたという意味ではなく、気持ちはそう遠くなかったという意味だ。稲尾和久の燃える気持ちを三原脩監督がうまく引き出した。そういう意味ではパワハラではない。

しかしもともとは休息日だから優しくはない。実際、「あがりでもピッチャーは敵を見て勉強した方がいいよね」的な打診を稲尾和久にしていた。これを稲尾和久はズバリ「これはもう業務命令だ」と書いているし、この項目のタイトルが「三原監督の業務命令」になっている。

そう、上司の「やれるか?」は「やれ」なのだ。「Can you?」ではなく「do!」というか。

ただし言われる人がエースと2軍選手ではまったく意味合いが違う。やれるか?とエースが聞かれた場合はガチでの相談。なんなら全権委任されるから続投も降板も自分で決められる。一方、2軍選手は「やれるか?」と聞かれてもまったく心配されていない。むしろやれよ的な。むしろなぜキミはやらないの的な。

結局上司と部下に信頼関係があれば忖度なのだが、単なる主従関係なら業務命令、その最悪バージョンがパワハラなのだ。稲尾和久の気持ちは「油紙のように燃え出した」のだからどのような関係かは分かるというものだ。

あなたは上司が三原脩監督ばりに小芝居を始めたらどうするだろうか? 稲尾和久のように忖度して「行きましょうか?」と先回りするか、業務命令とあきらめるか。別に忖度は悪い言葉ではない。筆者は上司というだけでへーこらするつもりは毛頭ない。むしろ意気に感じたら居残りでも早出でもできるタイプ。右肩上がりの成長が難しい世の中だからこそ、稲尾和久のように意気に感じて油紙が燃えるように働きたいものだ。
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柳田悠岐、飛距離15メートルのサヨナラ打~ヒットにABCはない

推定飛距離15メートル。それでもサヨナラヒットだ。柳田悠岐が魅せてくれた。

「ヒットにA、B、Cはない」

打球の感想を聞かれた柳田悠岐はそう説明してくれた。

そう、ヒットにAランクもBランクもCランクもないのだ。

社会人になると、ついつい体裁にこだわってしまいがち。しかし社会人だからこそ、大事なのは結果を残すことだ。

柳田悠岐が打席に入ったら「内野安打でも点が入る」と解説の秋山幸二が言っていたがその通りになった。確かにバットに当てさえしたら何かが起きる、かもしれない。とにかくつべこべ言わず打席に立たねば何も始まらない。

年を取ったら何かにつけてやらない言い訳をするのはなぜだろう。いい年して必死のパッチの姿を見られたくないからか。失敗した時のダメージが年々大きくなるからか。チャレンジしなくなるとどんどん腰が重くなる。
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ヒットにA、B、Cはない。柳田悠岐、名言だ。

それに引き換え巨人はどうしたことか。選手は必死にやっているのだろうがついに長嶋茂雄監督時代の1975年以来、42年ぶりの11連敗。ボテボテのゴロでも勝てる時は勝てるし、負ける時は負ける。もう開き直りしかないだろう。
野球は人生そのものだ

野球は人生そのものだ

まずは打席に立つ。そしてバットを振る。当たったらたとえファウルになりそうなボテボテのゴロでもとりあえず一塁に向かって猛ダッシュしてみる。あなたもまずはそうしてみませんか?

荒木雅博の「逆境からの2000安打」から学べること~下手な僕が打つことに意味がある

 2017年6月3日に、中日の荒木雅博が2000安打を達成した。プロ野球48人目。これまでの達成者の中でも苦労したグループに分類されるであろう荒木雅博の生き方は、フツーの人の励みになる要素が満載だ。

 

2000安打のうちホームランは33本だけ

 プロ野球選手ならそこそこ打てそうなホームランだが荒木雅博は通算33本しか打っていない。プロ入り時に前に打球が飛ばなかったらしいが、それを裏付ける数字だ。

 フツーは打球が飛ばない時点で挫折する。しかし右打ちを習得するなど小技を磨いたことが、逆に2000安打を近付けた。

 そう、フツーの人でもフツーの人なりにコツコツやればいいのだ。

スイッチヒッターに挑戦

 入団時の監督は星野仙一。「ものになる予感」はあったそうで、スイッチヒッターになることを助言したという。
 ただ、右でも打てないのに……という批評も受けた。
 確かにそうかもしれないが、フツーの人はそれでもやらねば一生フツーの人のまま確定。じたばたすることは意味がある

オープン戦の1打が転機

 やれることをやってみた荒木雅博もプロ6年目には右打ちに専念した。そしてあるオープン戦の日、右打席で放った1打で手応えをつかむ。
 2000安打達成後、思い出の1打を聞かれた荒木雅博は2000安打にカウントされないこの1打を挙げた。
 フツーの人はこういう不意に訪れる転機をものにしないといつまでも一皮むけない

代走と守りは自信があった

 荒木雅博は小さいころから運動神経が抜群だった。バッティングの非力さは自覚していたが代走と守備は自信があったそうだ。2000安打を達成するためにはまずたくさん試合に出ないと始まらない。
 フツーの人でも何かしら長所はある。仕事が遅いかもしれないが確実性はあるとか。コンスタントに結果は残せないがたまに爆発力を発揮するとか。リーダーシップはないけど調整能力があるとか。
 フツーの人は短所を直す以上に長所で勝負しないといけない。
 荒木雅博の俊足は生まれ持った能力だろうが、守備に関しては倒れるまでノックを浴びるなど猛特訓があった。
 そう、結果を残すためにはやるしかないのだ。

決められたことはやりきる

 アライバと称される鉄壁の二遊間を組んだ相方、井端弘和・現巨人内野守備走塁コーチによると、荒木雅博は「決められたことを最後までやるタイプ」だそうだ。
 継続は、続けるぞという意思なしにはできない。荒木雅博は2軍時代、山口県の駅で名古屋に向かう新幹線を待っていた時「逆方向の新幹線に乗ったら(実家のある)九州に帰れるのに」とすら思ったそうだ。
 別に自分の人生だから苦手なことから逃げまくってもいいと思う。ただし、事を成し遂げた人の本やら記事や番組を見る限り、苦難と反対方向の列車に乗り換えた人はいない。
守備の力 (光文社新書)

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いつも不安だらけ

 荒木雅博は22年もプロ生活を送りながら「不安だらけ」「自信を持ってやれたことがない」という。
 確かに自信はあった方がいい。だが不安だからこそ、やっておける準備はある
 うまくいかない前提から準備しておけば、ピンチの時もあたふたしない。
 だから不安を感じるということは、決して悪いばかりではない。
 もっとも、荒木雅博の言う不安は、準備を何もしないで毎回「不安です」というのとは次元が違うので、額面通りに受け取ってはいけない。

次の目標は400盗塁

 2000安打を達成したら荒木雅博が燃えつきてしまわないか不安になる。
 しかしもう1つ、400盗塁という目標があるそうだ。
 目標がある限り、人は頑張れる
 400盗塁は過去7人しか達成していない価値ある記録だ。
 かつてのライバル、赤星憲広が「足は衰えていない」と言っていたから残り24という数字も無謀ではない。
 ただし荒木雅博は「勝ちにつながる盗塁」がしたいそうだ。2017年の中日は低空飛行が続いているが、荒木雅博が400盗塁に近づくほど、チームは上向いているということ。チーム全体でこの金字塔を目指してほしい。
 

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デキる人はランナーを進めない~早慶戦で指摘された「防げた失点」

無駄な失点は防げる、という話をしたい。
 
5月28日の早慶戦、3回表の慶応の攻撃中だった。解説者の一人、應武篤良さん(元早稲田大学監督)が「深いですね」と早稲田大学の外野守備を指摘した。ノーアウト2、3塁。ワンヒットで2点入りかねない。
斎藤佑樹と歩んだ1406日

斎藤佑樹と歩んだ1406日

 

 「内野は前進守備です」。内外野で意思の疎通ができていないことを應武篤良さんは指摘した。確かに内野が「1点もやらないぞ」と前進守備を敷くのなら外野も前進して、3塁ランナーは無理でも2塁ランナーは返さない。それがチームワークだ。

 

バッターの慶応大学の清水翔はセンター前にタイムリーを放った。センターは前に出てきて捕球しバックホームするもセカンドランナーは刺せなかった。
 
それどころか打者走者に2塁を陥れられてしまった。すかさず應武篤良さんが「(深く守ってたのなら)セカンドに行かせちゃいけない」と苦言。そう、センターはセカンドランナーを刺さないならセカンドに返球することで、タイムリーを単打にしなければならない。
 
打者走者が2塁に行くと、もう一人の解説者の鬼嶋一司さん(元慶応大学監督)が「(慶応大学は)チャンスですよ」と色めき立った。棚からぼたもち的なチャンスをものにすることで、相手のダメージを増幅させることはできる。ボクシングで相手がバランスを崩した時にタイミングよくパンチを繰り出せば、一気にダウンを奪えるのと同じ理屈だ。
さすが鬼嶋一司さん。「流れ」を重視する解説はいつ聞いていても面白い。

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 結局このセカンドランナーは3塁に進み、犠牲フライでホームに帰ってきた。早稲田大学の内外野が意思の疎通を図って前進守備を敷いていたら、防げた失点だった。

 

この日の試合は早稲田大学がひっくり返し、目の前の胴上げは阻止した。だからこの三回の守備のミスは致命的とは言えないのかもしれない。だが前進守備でバッテリーがどこまで内野ゴロを打たせる配球をしたかも含め、レベルアップのために振り返ってほしいシーンだ。 
早稲田大学野球部 (B・Bムック)
 

 野球に限らず、周囲と意思の疎通を図らないと、こういうムダが生じる。

 
理想を言えば外野は内野に言われなくても守備陣形を整えたい。ここは1点もやりたくないから前進守備だろう、と。それが本当の意味での意思の疎通だ。
 
ピッチャーとキャッチャー。セカンドとショート。内野と外野。打者と走者。野球ではいろいろなコンビネーションが求められる。意思の疎通をはかっておけば、失点は防ぐことができ、得点はしやすくなる。

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 仕事も同じ。人がやることだからミスは防げない。だからこそ常に次善の策を考えるくせをつけたいもの。不利な時こそ、次の失点につながるランナー(ピンチ、不確定要素)を得点圏に進めさせてはいけない。仕事がうまくいかない人、あるいはうまくいかない時というのは常に得点圏にランナーを背負っているようなものだ。いつも焦ってばかり。そして手元が狂う。

 
そうならないためにも周囲と協力して、ランナーに進塁させない用心が必要だ。周りの「仕事ができる人」を見ていれば分かる。その人は決してランナーに無駄な進塁をさせない。そして円滑な人間関係を構築している。
 
失点しない生き方が一番いいが、何かにチャレンジする限りミスはつきもの。である
なら次なる失点を防ぐ守備陣形をとればいいだけだ。それは意識さえすればできる。
 
野球のよいところの一つは、相手から1点でも多く取りさえすれば勝つことだ。川崎徳次なんかホームランを8本も打たれながら完投勝利したのだ。完璧な人なんていない。ならば1点でも相手を上回るため、最善の策を取ろう。「防げる失点」は、ある。

奪三振率そろそろイニングあたりに変えないか?~藤川球児が日本最速1000奪三振で野茂英雄超え

2017年5月30日、藤川球児が日本最速の1000奪三振を記録した。771回と3分の2での到達。あの野茂英雄の871回より100イニングも速い。いかに藤川球児が飛び抜けているかが分かる。

 

 

だが一点、腑に落ちない。奪三振率の計算方法だ。ネットでサクッと検索しただけだが以下の算式らしい。

奪三振率=奪三振数×9÷投球回数

 

こういうものは簡単に直せないとは分かっている。だがこの「×9」というのは何とかならないものか。「×9」で分かるように、そもそも奪三振率とは「1試合あたりで何個三振がとれるか」という率なのだ。

 

確かに野茂英雄なら先発して完投というのがしっくりくる世代。藤川球児は先発した時期もあるが抑えとして一時代を築いた選手だ。だから9回を投げていくつ三振を奪えたかと言われてもイメージがわきにくい。

 

試しにNPBの歴代最高記録の「奪三振」リストを見てみた。

 1 金田正一4490

 2 米田哲也3388

 3 小山正明3159

 4 鈴木啓示3061

 5 江夏豊 2987

 6 梶本隆夫2945

 7 工藤公康2859

 8 稲尾和久2574

 9 三浦大輔2481

10 村田兆治2363

 

この猛者たちは確かに先発完投型である。だから「×9」したくなるのは分かる。1000奪三振到達のスピードと通算奪三振数は次元が違う話と承知はしているがまあたくさんとれる人はそれなりの速さなのだろう。このレジェンドの中に三浦大輔が入っているのはちょっと意外だったがコツコツやったことの証だろう。

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しかしプロ野球も進化をとげている。いまだに先発完投型投手を想定している沢村賞があったり、イニングを長く投げる先発がエライ風潮があるが、今日のプロ野球では中継ぎ、抑えの存在価値は増すばかりだ。いつ出番があるかもわからず、登板しなくてもブルペンで肩をつくることを考えれば決して軽んじられるポジションではない。

 

それに追撃を断ち切る意味でも三振を奪ってほしい時に奪える守護神は頼もしい限り。狙ってとるのだから奪三振一個あたりの価値は試合序盤よりもあると言っていい。

 

なので藤川球児プロ野球最速1000奪三振はもっと注目してもらいたいし、ストッパーの存在意義を高めるためにも奪三振率は「奪三振数÷投球回数」というシンプルな算式に変えたらどうだろうか。これなら1イニングあたりでの比較ができるから、先発だろうが抑えだろうが関係はない。

 

1000奪三振時点で比較すると藤川球児野茂英雄はこうなる。

藤川球児 1000÷771.6=1.296

野茂英雄 1000÷871  =1.148

 

藤川球児野茂英雄超えを「何とも思っていない。(野茂の方が)全然上ですよ」と謙虚に話していた(新聞記事より)という。偉ぶらない藤川球児、何とさわやかだろうか。1000奪三振目は藤川球児も一時在籍した高知ファイティングドッグス出身の角中勝也からだった、というのも面白かった。

 

ちなみにNPB在籍時に限られるが、歴代奪三振数トップ100のうち、奪三振数が投球回数を上回っているのは杉内俊哉野茂英雄の2人だけである。

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早慶戦1イニングで先発に代打を送った大久保秀昭監督~攻め時ならばカードを切るべし

東京六大学野球は5月28日、早稲田大学対慶応大学で早稲田大学が勝ち、立教大学が1999年秋以来18年ぶりの優勝を決めた。黒柴スポーツ新聞編集局長は法政命なのだがEテレ解説の鬼嶋一司さん(元慶応大学監督)ファンなのでテレビ中継を見ていた。

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この日も選手をくささないさわやかな鬼嶋節がさく裂。慶応大学キャッチャーの郡司がショートバウンドの投球を身を挺して捕るたび「その後の動作がいい。何気ない動作だが(ピッチャーに)安心感を呼ぶ」「マスク越しの笑顔がいい」「そうやってピッチャーとの信頼関係がつくられていく」と賛辞を惜しまなかった。

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 決して不必要に熱くならない「静」の鬼嶋一司さんに対し「動」なのが應武篤良さん(元早稲田大学監督)。気迫を出すプレーに心を動かされるタイプ。この日も「敵チーム」ながら、ピンチの局面でのファウルフライに向かってダイビングキャッチを試みた慶応大学の4番・岩見に対して「気持ちが表れてる。チームを鼓舞するファイティングポーズだ」と絶賛していた。

 

きょう扱うネタは慶応大学の2回の代打について。まだ2回なのに慶応大学の大久保秀昭監督は先発の菊地に代打を送ったのだった。鬼嶋一司さんは「思い切った作戦。攻めの姿勢だ」と評価していた。應武篤良さんは「5回を3点に抑えてこいというのであればもう少し投げさせただろう」と振り返っていた。慶応大学にしてみれば早慶戦早稲田大学に敗れた瞬間、優勝が消滅する。一戦必勝の姿勢が超早めの投手交代になった。應武篤良さんは同じ監督経験者なので「大久保監督の気持ちは痛いほど分かる」と言っていた。常に勝負せざるを得ない。それが伝統校を預かる監督なのだろう。

 鬼嶋一司さんもこの日の慶応の戦い方について「9回を戦おうとしてはだめ。そのイニングを戦う積み重ねが9回(になる戦い)でいい」と言っていたので大久保秀昭監督の作戦を否定はしなかった。が、当然早め早めの継投にならざるをえなくなったわけで、後半の投手交代がやや間延びしたようにも思えた。

 

結果的に慶応大学の高橋亮吾が早稲田大学の代打・福岡に逆転3点タイムリーを喫したのだが低めの変化球はよく沈んでおり「あれを打たれたのは仕方ない」と鬼嶋一司さんも應武篤良さんも言っていた。スコアは6-12と大差がついたが勝負は紙一重だった。なので大久保秀昭監督の超早めの先発降板は「あり」。アグレッシブな戦法はだいたいハイリスクなのだ。

神宮へ行こう

神宮へ行こう

 

 プロ野球ももっとこういうアグレッシブな采配が見たい。野村克也氏も最近言っていた。今のプロ野球には「采配の妙」というのがない、と。監督の手腕で勝つという試合が少ない、と。高校野球みたいに一球一球打者がベンチを見るのは好きじゃないが、きょうはこう勝つんだこう戦うんだという姿勢を指揮官であれば見せてほしいと思う。野村克也氏が言うには今は投手交代においても100球だとか6回まで7回までという「プランありき」になっているから「誰が指揮してもそう変わらない=つまらない」のだそうだ。

 

慶応大学は負けてしまい優勝も逃したが初回先頭バッターがいきなりヒットで出るとか先ほど書いた岩見のダイビングとかアグレッシブなプレーはあったので負けたことは残念がるとは思うがある程度は納得できるのではないか。やはり手元にカードがあるのであれば温存するよりここぞという時にスパッと切れる決断力と行動力がほしいものだ。なのできょうは大久保秀昭監督の大胆采配に出合えてちょっとうれしかった。

 

大久保秀昭監督はプロ野球近鉄に在籍していたし、社会人のJX-ENEOSでの指揮経験もあり日本一を3度勝ち取っている。一発勝負の厳しさを知っているからこその采配にも思えた。

 

あなたは手元にカードがあったら、できるだけ温存しておきたい派ですか? 出し惜しみせず切る派ですか?

 

これまで温存派だったが年々アグレッシブになってきた筆者。特に震災以降はいつでも死ぬ可能性があるならチャンスを逃したくないと考えるようになった。というわけで今度の旅行の時は旅行先からさらに遠方の知人に会うべく足を延ばす作戦を検討中だ。会いたい人には会える時にあっておかないと、「次」はいつになるか分からない。そうやって人は年を取っていく。

 

とっておきのカード、あなたもサクッと切ってみませんか?

宮里藍の電撃引退から考える引き際の美学~小林繁、掛布雅之、赤星憲広…阪神選手の引退は衝撃大⁉

プロゴルファーの宮里藍が電撃引退する。スポニチ記事に服部道子による宮里藍の評があり、興味深く読んだ。

いわく、宮里藍はほかの選手が飛距離を出しても、自分も飛ばさなきゃ、とはならない。持ち味であるショットの正確さやコースマネジメントで相手を上回り、結果的にプレッシャーをかけられるという。

素晴らしい。思わず反省した。黒柴スポーツ新聞編集局長はつい周りと自分を比べてしまう。劣っていたら追いつけ追い越せでやってきた。

それも悪くはなかろうが、「持ち味がある人ならば」それを伸ばすのは手だ。せっかくの武器を使わない手はない。

同じ日に野村萬斎の記事(女性セブン)も興味深く読んだ。6月3日公開の映画「花戦さ」にからむインタビュー。野村萬斎は戦国時代の華道の人、池坊専好を演じている。

野村萬斎いわく、人間という花は美しいものも毒があるものもある。それぞれ精一杯生きていたらそれでいい、という。

深い。毒がある植物や雑草なんて意味あるの?なんて思ってきた。が、存在価値は他者がどうこう言うものでもないというのは確かにその通り。逆に生物学的には存在価値ありありなのだろう。

一点だけ言いたいのは、毒がある人の存在価値。ないとは言わないが、その毒素によって迷惑する人は確実にいる。自分の毒素で自分自身の評価を下げる人もいる。何ともったいないことか。そういう毒草は刈り取られても文句は言えまい。

さて、野球界に目を転じれば近年、ドーム球場の恩恵か長く活躍する選手が多くなっている印象だ。250ホームランを記録した井口資仁もまだまだやれそう。言い換えれば、電撃引退するプロ野球選手が少なくなった。

電撃引退の選手がいたなという印象は阪神が強い。小林繁掛布雅之赤星憲広。ヒーローインタビューで前代未聞の引退表明をした新庄剛志阪神出身だった。

 

赤星憲広はけがのダメージがひどかったようだからやむを得ず、なのかもしれないが、電撃引退した人に共通するのは一時代を築いた名プレーヤーなり、職人気質がある人という点だ。

分析してみたが、きっと自分の「できるイメージ」と「実力」のギャップの差に我慢ができないのだ。イメージしたように打てない、投げられない、守れない。それができないならやめた方がましだ、と。

筆者はやれるならぼろぼろになるまでやる選手が好きだが、一方で「散り際の美学」を持った人にも引かれる。惜しまれつつやめるか、少ない可能性を最後まで求めるか。難しい選択だが、それだけに引退とはドラマチックだ。

最初宮里藍の引退を知った時ひょっとしたらおめでた?と思った。まだまだプレーできそうだから外的要因なのでは、と。しかしそうでないのなら例の名人気質がそうさせたのかな、と。思うようにプレーできないのならやめたほうがいい、と。

先に引退表明した浅田真央の場合は燃えつき感が見え隠れしていた印象だから宮里藍とは違うように思える。一体本人の口からどんな説明が聞けるだろうか。

アスリートの電撃引退はショッキングではあるけれど、ひとつの生き方として肯定してあげてほしいと全くの第三者ながら思っている。

 

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つながった三つの連続~則本昂大の6試合連続2けた奪三振と鳥谷敬の連続試合出場と藤井聡太四段のデビュー以来19連勝

則本昂大(前回「昴」と間違い、大変失礼しました)が2017年5月25日、野茂英雄に並ぶ6試合連続2けた奪三振を記録した。黒柴スポーツ新聞は6試合連続いけるぞと記事を書いていたが本当になるとうれしいものだ。というかフクザツな心境だ。パ・リーグではホークスを応援しているからだ。

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筆者は前日に顔面死球を受けた鳥谷敬の動向が気になりラジオで阪神ー巨人戦を聞いていた。スポーツナビ鳥谷敬の代打出場を確認して、連続試合出場が継続されたのを知ってほっとした。野球選手のフェイスガード姿は初めて見た。宮本恒靖を思い出した。鳥谷敬に強い出場意欲があったのだろうがまずは阪神が勝っていないと代打でも出にくかっただろう。負けていての代打起用ならいかにも記録更新目当ての出場に見えてしまうからだ。そういう意味での阪神の先制点は大きかった。

伝統の一戦も終盤になった時、則本昂大についてのリポートがあり、「あと2イニングで三つ三振を奪えば野茂英雄に並ぶ」とアナウンサーが途中経過を伝えた時、正直ビミョーだなと思った。6人で三つ、とは簡単ではない。

 

だがあらためて則本昂大の姿を思い知った。なんと残り2イニングのうち最初の8回にさっさと3者連続三振に打ち取ってしまった。

 これぞプロ。あと6人の中から三つ三振を取ればいいという考えでは実は成功への確率が低くなる。目の前のコイツを料理する。凌駕する。そんな気持ちの積み重ねが6試合連続2けた奪三振につながったとみた。

 そして21時からNHKニュースを見ていたら将棋の藤井聡太四段がまた勝ってデビュー以来土つかずの19連勝を飾ったと報じていた。 羽生善治をも倒しており実力は折り紙付き。まだ中学2年生というから末恐ろしい。ニュースでは「澄んだ目」で戦局を見ているという評があった。

 

藤井聡太四段に変な先入観がないことが強さの要因なら、今後も「業界はこういうもんだ」的な変なアカにまみれないでほし。いと思う。誰もがフレッシュマンであったはずなのに、純粋な心と入れ替えに経験と知識を手にするのであれば、それはちょっと悲しい。

 

藤井聡太四段は純粋に勝ちたいと思っているかもしれないが、鳥谷敬則本昂大も、記録継続は意識していたに違いない。やはり骨太の記録は意思がないと続かない。「怖さも痛さも全然ない」という鳥谷敬はえらいなあと思う。代打での出場はサードゴロだったが一塁まで全力疾走したら鼻も揺れてさぞ痛かっただろうに。

 

監督が衣笠祥雄鳥谷敬に次ぐ連続試合出場歴代3位の金本知憲というのも追い風だろう。出られるのなら出ろよと言ってくれるだろう。部下の気持ちが分かる上司の存在はありがたい。

覚悟のすすめ (角川oneテーマ21 A 87)

覚悟のすすめ (角川oneテーマ21 A 87)

 

 阪神で連続試合出場といえば三宅秀史にも触れておかねばならない。金本知憲に抜かれるまで882試合出場、700試合連続イニング出場の日本記録保持者。同僚の小山正明が試合前にキャッチボールをしていたボールが三宅秀史の目を直撃。大記録が思わぬ形で途絶えてしまい選手としての輝きも失せてしまった悲劇の人。そう、主人公が悪くなくても大記録はいつ途絶えてもおかしくないのだ。三宅秀史について興味がある方は「哀愁のサード 三宅秀史」をぜひご覧ください。

哀愁のサード三宅秀史

哀愁のサード三宅秀史

 

 そう考えると連続記録は本人の「努力」と継続への強い「意思」と、そして「運」があって成しとげられるんだなと実感する。順番としてはまずこれをやるんだという強い気持ちを持ち、それに見合う努力をして、あとは運に任せる。これが一番だ。則本昂大鳥谷敬藤井聡太四段。どこまで記録を伸ばせるか興味津々だし、途切れた時にどんなコメントを残すのかも今から気になっている。

記録にまつわる話はこちら

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がん闘病中の大島康徳にエールを~鉄拳くらうも反骨心で3打席連続ホームランを打った男

大島康徳(以下敬称略)が、がん闘病中だという。幼少時代から巨人ファンだが大島康徳のドラゴンズ時代のユニフォーム姿が大好きだ。

 大島康徳について調べようと、久々に新聞記者の大先輩、近藤唯之氏の本をあさってみた。「プロ野球 新サムライ列伝」に大島康徳が出てきた。以下、大島康徳に関する描写をこの本からざっくり引用する。興味がある人はぜひ実物をご覧ください。

プロ野球 新サムライ列伝 (PHP文庫)

プロ野球 新サムライ列伝 (PHP文庫)

 

 二軍の四番だった大島康徳が10試合で打点1と苦しんでいたが、本多逸郎監督が皮肉交じりに「どういうことか説明しろ」という。世の中にはどうしてこういう人がいるのだろう。頑固者の大島康徳はだまっていたら本多逸郎監督に鉄拳をくらった。

 

本多逸郎監督の怒りは収まらずなんと2週間も大島康徳のユニフォームを没収。この間大島康徳はパンツ1枚で素振りを続けたという(ほんとかな?とは思いますが)。このガッツが実り大島康徳は阪急戦で3打席連続ホームランをかっ飛ばした。

 

すると本多逸郎監督に名古屋の栄に連れていかれ「テーラー大倉」という洋服屋で背広を作ってもらった。この間ホームランをほめる言葉は一切なし。本多逸郎監督は理不尽なのか人情家なのかよく分からないがとりあえずいい人そうなのは分かった。

 

大島康徳は頑張りが認められ一軍への切符をつかむ。食堂で開かれた壮行会には新調した背広姿で臨んだという。近藤唯之氏はこの話がお好きらしい。全く同じ話を「プロ野球 トレード光と陰」でも書いている。

プロ野球トレード光と陰 (新潮文庫)

プロ野球トレード光と陰 (新潮文庫)

 

 この本にも書いてあるが大島康徳星野仙一監督の「チームの若返り」という構想のため日本ハムにトレードされる。この時のセリフを近藤唯之氏は激賞している。こんなセリフだ。

球団が本当に必要だと思ったら、トレードには出さないよ。だけど相手球団も本当に必要だと思わなければ、トレードしてくれとは言わないよ

 

その後大島康徳日本ハムで2000安打を達成。監督になったのも周知のとおりである。

大島康徳―負けちたまるか!反骨男 (名球会comics (5))

大島康徳―負けちたまるか!反骨男 (名球会comics (5))

 

 「昇竜の軌跡」によれば、そもそも大分の中津工から中日に入った時は投手。長打力が買われて野手転向。初出場の日に初安打、初ホームランを記録したものの三振が多く「三振王」とやゆされる始末。内野に転向後ブレイクするが1980年には交通事故にあう。その後32歳でホームラン王、中日と日本ハムで通算26年の長きにわたる現役人生だったがまさに山あり谷ありだった。

 だからこそ、今回のがん闘病もきっといい結果をもたらしてくれるのではないかと期待している。そんな気休めが言える話題ではないと分かっているが、あの3打席連続ホームランの原動力となった反骨心をいまこそ、がんにぶつけてほしい。

【追記】

大島康徳さんは2021年6月30日に亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。

 

ウィルチェアーラグビー池透暢選手5/24、27出演情報 25~28日はジャパンパラぜひ観戦を!

夢を見た。詳しいストーリーまでは覚えていないがウィルチェアーラグビー日本代表キャプテンとしてリオデジャネイロパラリンピック銅メダルを獲得した池透暢選手が出てきた。しばらくお会いしていないのだが、いつも刺激をもらっている素敵な人である。

マーダーボール (字幕版)
 

 そんなことがあったので「お元気ですか?」と久々にやりとり。なんとスクープ?だが2週間前のアメリカ遠征ではアメリカに3連勝すべて1点差のゲキアツな試合だったらしい。

 

その過程で情報をゲット。近々立て続けにメディアに登場するという。今回はその告知。

 

5月24日22:54~23:00  フジテレビ「PARA☆DO!~その先の自分(ヒーロー)へ~」

関東ローカルのようですが、チャンスがある方はぜひぜひご覧ください。

5月27日17:00~18:00 BS日テレ「ストロングポイント」

民放BS初のレギュラー障がい者スポーツ番組だそうです。時代は変わりましたね。

 

池透暢選手の「銅メダルお疲れさま会」の夜を思い出す。2次会も終わり、商店街のアーケードをみんなでふらふら歩いていたら「あ、池選手だ!」「銅メダルの!」「握手してください」的な触れ合いがあった。いいシーンに立ち会え、ぐっときた。その日についての記事はこちら(たくさんのシェアありがとうございました)。

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 パラ陸上選手にインタビューした時に聞いた。むかしは街を移動していても振り返られたもんだ、と。パラスポーツ選手とじっくりお付き合いをしてみればいずれよく分かる。車いすは選手の足でありボディというニュアンスがぴったり。自己表現の一部なのだ。といいつつ筆者自身もすぐそんな感覚になれたわけではなかったのだが。やはり最後は人と人との付き合いの中で信頼が生まれると思う。

 

東京パラまで実はちょっと間がある。選手にしてみたらそんなに時間はないのかもしれないが。一般人はそうはいかない。だからこそ東京パラまで興味関心を維持させる番組や記事は本当にありがたく貴重だ。

 

ちょうど5月25日から28日まで、「2017ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会」が千葉ポートアリーナで行われるという。もしかして池透暢選手が夢に出てきたのはこの告知だった???

 

ともかく、またとない機会。ちょっとでもチャンスがある方はぜひ会場で本物のウィルチェアーラグビーを「体感」してほしい。最初は「ガン!」「ガシャン」という音が鼓膜にこびりつくかもしれないがその音以上のものがハートに響くはずだ。

 

池選手やリオパラリンピックでの日本代表の激闘記事はこちら

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山崎康晃、無失点を続けて守護神復帰~信頼はこつこつ取り返すしかない

人事異動で言えば降格だった。DeNAの守護神・山崎康晃は4月、抑えが安定だった。そして中継ぎに配置転換させられていた。だが、5月20日の巨人戦で抑えに復帰した。なぜ復帰できたのか?

 ずばり、中継ぎとして16試合連続無失点だったからだ。

 

そう、失った信頼はこつこつ取り返すしかないのだ。

 

「やれます」「もう二度と失敗しません」

ミスしたあと、ありがちなセリフだ。が、何と弁解するより結果が大事。その点、山崎康晃の無失点記録は実に分かりやすい。同じミスを繰り返していないのだから。

 配置転換あるある

配置転換を打診された人は、3通りの行動がある。

1.新しい持ち場で頑張る

心機一転、新しいポジションでやってみる。力があったり、運が良ければそこで道が開ける。「新しい自分に出会える」可能性もある。

2.腐ってやる気を失う

一番やってはいけない。配置転換(注:左遷ではありません)させられた意味を分かっていない。自暴自棄になればさらにマイナス評価間違いなし。

3.前のポジションに戻ろうとする

そここそが自分の輝ける場所と分かっている人がとる行動。戻るためにレベルアップしようと努力する。

 

山崎康晃の抑え復帰を報じる新聞記事で面白いなと思ったのは次のくだり。「ルーティンを変えないとこだわってきた」。抑えに戻るために、あえて自分のリズムを変えなかったという。そう、山崎康晃は3番目の選択肢「戻る」を強く意識していたのだった。

 

ただし、「戻る」を選んだ場合でも、ただ単にその地位の「居心地がいい」から戻りたいという自己中心的な行動の場合はほめられたものではない。組織においてその人の居心地のよさなんて二の次。戦力になって、その人らしさその人ならではの能力を発揮しないとその人にとっても組織にとっても不幸でしかない。

 

山崎康晃の場合はキレのあるストレートが持ち味。沈むツーシームもある、と新聞記事に書いてあった。巨人を応援しているのになんだが、山崎康晃が自分の力ではい上がってきたのがうれしくてネタに選んでしまった。

 ラミレス監督の深いせりふ

そしてネタ元の新聞記事で面白いなと思った下りがもう一つ。ラミレス監督は山崎康晃にこう伝えたという。

「九回を任せる。今は臨時だが、シーズンの最後まで務められるかは君次第だ」

 

深い。ラミレス監督就任時、筆者はDeNAがやらかしたと思った。話題先行だと思ったのだ。しかしどうだろう。2016年は、中畑清も成し遂げられなかったクライマックスシリーズ進出を果たした。筒香嘉智をタイトルホルダーにし、抑えを任せた山崎康晃プロ野球史上初の「新人から2年連続30セーブ」をマークした。 操縦術はあるのかもしれない。

 ラミレス監督は人情家?

また、ラミレス監督は案外人情家かもしれない。そう思わされたのは三浦大輔引退試合の「続投指令」。最終登板で三浦大輔はめった打ちにあい、降板かな、と誰もが思っただろうが5回も6回も続投。もう交代かと思いきやそのままバッターボックスに立たせ、もう終わりかと思いきや7回もマウンドに送った。

 

この続投や最後のあからさまな雄平の三振は賛否両論あると思うがあれこそがプロ野球の引退興行である。そこに真剣勝負の要素を求めてはいけない。間違っても雄平だけは責めてはいけない。あの状況で上手に空振りするのはさぞ難しいことだろう。もちろんそういうわがままが許されるのは三浦大輔みたいなレジェンド、トップクラスの選手だけだ。

逆境での闘い方(だいわ文庫 D 341-1)

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 自覚を求める

人情を感じさせたラミレス監督ではあるが山崎康晃への「君次第」発言はドライな感じがする。ビジネスの世界ではよくありそう。ドライではあるが「任せたぞ」というよりも「自覚」を求めて言う言葉だ。山崎康晃のような伸び盛りの若者にはもってこいの言葉に思えた。

 

配置転換は意図せず「腐ってやる気を失う」状態に陥れるリスクもある話。今やみんながみんなガッツがあると思ったら大間違いのご時世だ。だからこそ山崎康晃のような若者が実力で前の地位を奪い返した姿に目が行ってしまった。やはり失った信頼はこつこつ取り返すしかないんだなと思った。それはプロ野球選手も一般人も同じ。山崎康晃の頑張る姿を見ると、何だかこっちまでやる気が起きてくる。

 

抑えとは過酷なポジション。リードを守って当たり前。失点して負けたらすべての責任を負わねばならない。それがたった1球の過ちだったとしても。だからこそ1球に魂を込める山崎康晃の救援から目が離せない。山崎康晃が守護神のポジションを守り通したらおのずとDeNAは2016年シーズン同等かそれ以上の成績を収めることだろう。

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村田諒太WBAミドル級王座奪取失敗に学ぶ~「うーんエンダム」は流行語大賞になるのか

日本中が吉本新喜劇ばりにズッコケたボクシング村田諒太WBA世界ミドル級王座決定戦判定。筆者もその一人だった。「歴史に残る敗戦」を見た思いだが、この敗戦の教訓を二つ考えてみた。 

101%のプライド

101%のプライド

 

 

 勝負は勝ち切らねばいけない

疑惑の判定は勝敗を分けた理由が添えられていないため、「手数の差が出たか」などと推測するほかない。ボクシング通を自任するビートたけしは「プロの視点から見るとプロらしくない試合なんだろうな」と言っていた。確かに村田諒太のパンチは一発の破壊力は抜群だがワンツーといったコンビネーションにはなっていなかった印象だ。

 

ヤフコメにもあったが、挑戦者の、しかも日本人挑戦者がチャンピオンベルトをまくためには、誰もが分かるKO勝ちしかない。特に今回の対戦相手、アッサン・エンダムは粘りが持ち味。ダウンしても数秒で回復する自信があるという。アッサン・エンダムを見ていてムカデのようだと思った。ムカデは多少火であぶっても胴体を切っても死なない。いずれ死ぬのだがしばらくはのたうちまわっている。

 

だからこそ、だ。別に手抜きをしたなどという意味ではないが、もっと畳みかけるべきだった。アッサン・エンダムはのたうちまわっている間に12ラウンドをしのいでしまった。日本人唯一のミドル級王者経験者、竹原慎二も試合は村田諒太の勝ちだったとしながらも、「やっぱりゴングが鳴るまで倒しにいかなきゃならんのですよ」(デイリースポーツ記事より)と言っていた。村田諒太のボクシングは、ギラギラしたプロボクシングの世界ではまだまだ美しくスマートすぎるのかもしれない。やはりタイトル戦など結果がすべての戦いでは、何が何でも勝つという姿勢が求められる。それはきっと、あなたも変わらない。

 

あきらめなければ何かが起こる、かもしれない

一方で、立ち位置を正反対にしてみたら何が見えるのか。日本中を敵に回しかねないがあえてアッサン・エンダム肯定論も展開してみる。アッサン・エンダムは4回に右ストレートでダウンを喫した。序盤、手数こそ上回っていたがそれは村田諒太が「攻めない」という作戦を実行していただけ。徐々に村田諒太の圧を受けじり貧になっていった。

 

現在TBS系列で放映中のドラマ「小さな巨人」の主人公・香坂真一郎(長谷川博己)が再々言っていたセリフを思い出す。「我々(所轄)には、足がある」。強敵である捜査一課長・小野田義信(香川照之)に追いつめられるなど難局のたびに口にするセリフだ。「オレには足がある」とばかりにアッサン・エンダムもあきらめずフットワークを徐々に復活させ、ジャブを繰り出し続けた。

 

お構いなしに村田諒太は右の大砲をアッサン・エンダムにぶち込んだ。そのたびにアッサン・エンダムはよろけるもロープを背負い、またはロープをつかみながら、あるいは白目をむきながら必死に耐えてなかなかダウンをしない。ぶちかまされながらも「効いてない、効いてない」と首を振る。アッサン・エンダムの判定勝ちは、ピンチ、劣勢の中でもやれることをやった結果、と言える。そう、あきらめなければ何かが起こる、かもしれないのだ。これも「小さな巨人」をほうふつさせる。

 

アッサン・エンダムはこの日の試合までに37戦35勝2敗(21KO)。泥臭さと経験という意味では確かに村田諒太を上回っていた。世の中にはアッサン・エンダムのようにしぶとい人がいっぱいいる。いい意味でのしぶとさは見習いたいのだが、村田諒太のような善人が馬鹿を見ることが多い世の中であることもまた事実なので、狡猾(ずるがしこい)という意味でのしぶとい人間にはならないよう気を付けたいものだ。

 

そのジャッジに覚悟はあるか

さて…。買収だ八百長だとジャッジについてはさんざんな言われようだ。確かに、アッサン・エンダムを優勢としたパナマのパディージャ氏は116-111、カナダのアール氏も115-112と、よくも差をつけてくれたものだ。

 

この日のフジテレビ中継には、「小さな巨人」の小野田義信・捜査一課長役の香川照之がゲスト出演していた。WBAヒルベルト・メンドサJr会長は「公正な採点が下すことができないスポーツに怒りと不満を覚える」(スポニチアネックス記事より)と異例の再戦要求をする始末。香川照之には小野田一課長の決めぜりふばりに「そのジャッジに覚悟はあるか!!!」とヒルベルト・メンドサJr会長になりかわって詰め寄ってもらいたかった。まさか、香坂役の長谷川博己のように「私の勘です!」なんて答え、だったりして。

「小さな巨人」公式BOOK ―PHOTOS&INTERVIEWS― (角川SSCムック)

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 気になる今後

敗戦後、村田諒太は「気持ちの整理が必要」と語る。今後は?と試合後すぐ聞かれるアスリートには気の毒なのだが、それはファンの関心や期待の裏返しでもある。多くのファンは村田諒太の再起を願っている。アッサン・エンダムと再戦してやり返してほしいと期待している。ただしミドル級はそうそうマッチメイクできない階級らしい。であるならなおさら村田諒太にはじっくり今後を考えてほしい。試合後一切言い訳をしない村田諒太人間性だけが救いだ、というヤフコメもあったが本当にその通り。今回の敗戦でまた多くのファンを得たのだから、そのファンを熱くさせる試合を楽しみにしたい。とにもかくにもすっきりしない負け方に、筆者の頭の中では「うーん、エンダム」というフレーズがぐるぐる回っている。


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